ハコガクデート (中編6頁)
一行はメルヘンなパフェ専門店に着いた。
小「ああ、ここ知ってますよ。美味しいって有名なんですよね~」
黒「詳しいな、山王」
小「でも、客層が女性ばかりだから入ったこと無いです。うわ~楽しみだな~」
店員「いらっしゃいませ。何名様で?」
泉「7人です」
店員「7……」
大人数用の席は無かったので、一行は新荒の2人とその他5人に別れて座った。
小「僕ら、目立ってますね」
黒「さすがに男性客は俺達だけか」
泉「だが、よく見ろ」
泉田に言われて後輩達5人は周りの女性客を観察した。
泉「みんな、新開さんと荒北さんの2人に見とれている。誰もこっちなんか見ちゃいない」
小「さすが~。お二人はカッコイイですもんね~。」
黒「くそっ。お似合いだってとこを新開さんはオレ達に見せ付けるためにこの店へ……」
新「靖友。ほら、あ~ん」
新開がバナナアイスをスプーンに乗せて荒北に差し出す。
荒「後輩達が全員ガン見してンじゃねーか」
荒北は躊躇する。
新「アイツラは後学のために来てるんだから、デートの見本を示してやるのがオレ達先輩の役目さ」
荒「そーゆーモン?」
新「そーゆーモン」
新開に言いくるめられて、荒北は差し出されたスプーンに噛み付く。
後輩達「「おお~」」
女性客達「「きゃあ~」」
後輩達だけでなく、二人を注目していた周りの女性客達まで興奮している。
今「ちょっと待ってくれ。あの二人、まるで恋人同士に見えるが一体何をやってるんだ?」
今泉が質問する。
真「デートなんだよ、あの二人は。オレそう説明したよね?」
今「はぁ?あれ冗談じゃなかったのか?」
小「そうなの?うわ~!腐女子の妄想は本当だったんだ!感激だな~!」
今「はっ。そういえば以前巻島さんに聞いたことがある。“箱学は優勝するためにはケッコンも辞さないっショ”って。その時は意味がわからなかったが……」
小「部内で恋を育むのが箱学の強さの秘密だったのか~。すごいや!さすが箱学だ」
今「こんな方法、オレ達には絶対無理だ……」
今泉は総北と箱学の差に愕然とする。
真「そんなことないよ。総北だって実践してる人いるじゃん」
今「な、なにっ?誰だ?まさか、想像したくないが田所さん……?」
真「巻島さんだよ。うちの東堂さんとしょっちゅう峠でデートしてるよ」
小「峠で?あっ!僕遭遇したことある!あれ、デートだったんだ!あちゃ~!知らなかった。僕、お邪魔だったのか~」
今「いやいやいや、違うだろ。あの二人は単に勝負してるだけだろ?」
真「あの二人にとって勝負は疑似セックスなんだよ」
小「どっひゃー!そうだったのか!すごい!」
今「小野田!なに納得してんだオマエ!さっきから順応し過ぎだぞ!理解出来るのかこんなこと!」
今泉の脳ミソはパンク寸前だ。
小「ぼ、僕は同人世界に免疫というかソースというか、知識として抵抗がないから……」
今「なんだ同人って」
小「わかりやすく言うと創作とか妄想のことでね、例えばカップリングではあの新開さんと荒北さんなんかは代表的な人気なんだよ。だから僕もすんなり納得したんだ」
小野田が解説を始める。
真「東堂さんと巻島さんもだよね!」
小「そう!そうなんだ。箱学は人気だよね。一番人気はやっぱり荒北さんで、そりゃあもう色んな相手と左右入り乱れて……」
今「……」
今泉にはなんの話をしているのかさっぱりわからない。
小「あ、総北もちゃんと需要はあるんだよ!最近のトレンドは手嶋さんかな。そうそう!今泉くんだって鳴……ハッ!」
今「……オレがなんだって?」
小「なっ!ななななんでもないよ!ぼ、僕喋り過ぎちゃったみたいだ!忘れて!」
小野田は慌てて誤魔化す。
黒「おい1年生!いつまでダベってんだ。そろそろ行くぞ」
黒田が声を掛けにきて、一行は店を出た。
新「さて、キミ達。ここからは大人の時間だ。悪いけどもう帰ってくれるかな」
「「!!」」
新開はラブホテルの前で後輩達にそう言った。