ハコガクデート (中編6頁)





劇場内に入り、大体ド真ん中辺りに新開と荒北は座った。

 

後輩達3人は、そこから1列空けて後ろに並んで座る。

 

 

泉「結構すいてるな。人気無いんだな、この映画」

黒「週末でこの入りか。こりゃ内容も期待出来ないな」

真「おかげで席を広々と使えますね。ジュースもお菓子も隣に置こうっと」

 

 

 

映画が始まり、暫くすると、荒北は顔を上げて動かない。

後ろで後輩達がヒソヒソと話し始める。

 

 

真「荒北さん、あれどう見ても寝てますよね」

黒「荒北さんが恋愛映画なんか観るワケないんだよ」

泉「選択ミスだな。新開さんでも失敗することあるんだ。メモっておこう」

 

真「やっぱり『真・キングギドラ』の方が良かったってことですね。オレもあっちが観たかったな」

黒「オレなら好きな相手の観たがってる映画を優先させるね」

泉「初デートは恋愛映画というテンプレも、男女ならともかく、男同士のカップルには当てはまらないってことだな。メモメモ」

 

 

その時、新開に動きがあった。

「!」

「!」

「!」

 

 

真「あっ!ああっ!キ、キスしてますよ!」

黒「し、新開さん!アンタ何を!」

泉「アブーッ!これは想定外!」

 

新開の思いがけない行動に、ぶったまげる後輩達。

 

 

真「け、結構永い!これはかなり本格的なキスじゃないですか?」

黒「外道っ!寝込みを襲うなんて外道の極み!新開さん!アンタ最低だよ!」

泉「そうか!新開さんの狙いは最初からこれだったんだ!計画通りなんだよ!さすがです新開さん!」

 

真「いいなー!いいなー!オレもキスしたい!荒北さんとキスしたいー!」

黒「ここからじゃ頭付近しか見えねぇけど、あの調子じゃあ下の方で何やってるかわかったモンじゃねぇ!荒北さん!目を覚まして下さい!荒北さんっっ!」

泉「さすが箱根の直線鬼!狙った獲物は必ず仕留める!その獲物が野獣ならば眠らせて襲うのも必然っ!そう、これは必然っ!」

 

「お客様、他の方のご迷惑になりますので退席願います」

「!」

「!」

「!」

 

箱学組の5人は映画館から追い出された。

 

 

 

 

 

新「まったく……オマエ達がうるさくするからオレ達まで追い出されたじゃないか」

 

新開が不満そうに後輩達を睨み付ける。

 

黒「ア、アンタはワイセツ行為してたから追い出されたんじゃないスか!」

 

新開に掴みかかろうとする黒田を泉田が慌てて止める。

 

 

 

荒「悪りィ、新開。オレ眠ってたみてェで映画の内容全く覚えてねェわ」

 

荒北は目をこすり、あくびをしながら言う。

 

新「いいんだよ靖友。オレも全く映画なんか観てなかったからさ」

 

新開はニコニコして満足気だ。

 

 

 

 

小「あ、箱学の皆さーん」

 

小野田と今泉が声を掛けてくる。

 

荒「よゥ小野田チャン。どうだったァ?映画は」

小「とっても感動的でしたー!そちらはいかがでした?」

荒「全く覚えてねェ」

小「は?」

 

 

真「坂道くん達これからどうするの?」

小「いやぁ、特に決めてないんだ。ブラブラするだけかなぁ」

真「だったらオレ達と一緒に行く?」

小「ええ?いいのかい?」

真「うん。大勢の方が楽しいしね!」

小「じゃあ、お言葉に甘えて御一緒させてもらおうかな」

 

 

箱学組に総北組が合流することになった。

 

 

今「小野田。オマエって友達いないとか言ってるくせにすげぇコミュ力高いよな」

小「憧れの箱学の皆さんと御一緒出来るなんて、僕感激だな~」

今「まぁ、箱学の強さの秘密がこれでわかるかもしれないからな。オレも楽しみだ」

 

 

総勢7人で、新荒の初デートは再開された。













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