ハコガク野球大会 (長編10頁)★オススメ
7回裏(最終回:サッカー部の攻撃)
自転車部 35
サッカー部34
0アウト
ランナー2塁3塁
試合再開。
行くぜェ!
ヒュン!
パシーン!
「ットライーク!」
「今のは?……球が見えませんでした!荒北投手!」
大袈裟だバァカ。
せいぜい130kmだよ。
「ットライク、ツー!」
「速い!荒北投手!おい誰かスピードガン持って来い!え?無い?」
野球部がねェのにスピードガンなんかあるわけねェだろ。
「ットライーク、バッターアウーッ!」
「見逃し三振です!一度もバットを振らせてもらえませんでした!荒北投手、3球でワンナウト取りました!自転車部の窮地を救えるのでしょうか!」
ワーワー!
観客の応援が自転車部に向いてきた。
へッ。
勝手なもんだぜ観てるだけの奴らってのァ。
さァ、あと2人!
ヒュン!
パシーン!
スカッ!
「ットライーッ!」
「速い速い!サッカー部、完全に振り遅れています!」
スカッ!
「ットライッ、ツー!」
「かすりもしません!」
スカッ!
「ットライーッ、ッターアウーッ!」
ワーワーワー!!
「3球空振り三振!お聞き下さいこの歓声!荒北投手、6球で2人抑えました!」
140kmいったかもしンねェな……。
さァ、あと1人だ。
次のバッターは……。
「そこまでだ。ツンデレちゃん」
コイツかよ……。
「オレが勝ったらバキュンから乗り替えてもらうぜ。バキュンより悦ばせてやるよ」
「勝手にどんどん条件増やしてんじゃねーよボケナス。こう見えてオレぁ古風でね。一度愛したら生涯添い遂げンだよ!」
「靖友……」
「サッカー部主将、なにやらセクハラめいたことを言っておりますが意味がよくわかりません!さあ自転車部!勝利まであとアウト1つ!」
スカッ!
「ットライーク!」
「荒北投手!どんどん速くなります!これは150kmいってるのではないでしょうか!なぜ野球部の無い箱根学園にこのような逸材が!」
っせーよ。
150kmも出てねーっつーの。
出てたら大騒ぎだっつーの。
スカッ!
「ットライッ、ツー!」
「自転車部、勝利目前です!お聞き下さい!観客の手拍子を!」
リズム狂うから手拍子やめろォ!
「ツンデレちゃんよ、速い球だって見慣れんだぜ。サッカー選手の動体視力なめんなよ。ヤマ張ってマグレもあるしな。チュッ」
投げキッスしてきやがった。
いちいち気持ち悪りィ野郎だ。
「汚ねェんだよ!このビョーキ持ちがァ!」
「カップ、メーン!」
カキーン!!
なにっ!?
「サッカー部主将、打ちましたー!大きーい!グングン伸びます!」
まさか……!
「ライナー性のホームランコースです!お聞き下さい!観客の歓声と悲鳴を!」
まさか。
ここまで来て……。
サヨナラ負け……?
オレの今までの人生が走馬灯のように頭を巡る。
やっぱり……オレには野球は無理だった……。
野球なんかに手ェ出すんじゃなかった……。
学校行事の草野球だからってなめていた……。
これが、現実だ。
また、あのトラウマの日々を体験するのか。
オレはいったい何を夢見て──。