ハコガク野球大会 (長編10頁)★オススメ





苦労して大量点入れたンだが、守備がダメダメなせいで点を入れても入れても追い付かれる展開。

 

気が付いたらもう最終回だ。

 

 

7回裏(最終回:サッカー部の攻撃)
自転車部 35
サッカー部33
0アウト
満塁

 

 

バスケかよって点数だろ。

しかも大ピンチだ。

ここまで来てノーアウト満塁だぜェ。

 

 

乱打戦のせいで時間がかかり、もうとっくに昼休みも潰れてる。

全校生徒が面白がって観戦に集まって来てる状態だ。

観る分にはそりゃア楽しいだろうが、プレイしてるこっちはヘトヘトなんだヨ!

 

 

 

「ゼェゼェ……」

 

黒田も限界だ。

たかが学校行事でこんなに投げさせられる羽目になるとは思ってなかっただろう。

球威も落ちてコントロールも乱れ、フォアボールを連発している。

そのせいで球数も増え、悪循環だ。

 

 

まだ2点差ある。

落ち着いて逃げきれば勝ちだ。

しかしノーアウト満塁。

同点なんかにされちゃア延長……。

更にサヨナラなんて……いや、そんなことにはならねェ。

ならねェ筈だ。

……多分。

 

 

 

「ゼェゼェ……オレは……伝説の男……伝説の黒田……」

 

黒田が握りを変えた?

あれは……!

 

 

 

「よせ黒田ァ!!」

 

 

 

黒田の投げたのは渾身のフォークだった。

しかしサインが出てるわけでもない勝手な行動だ。

当然東堂は捕れず、ホームプレートで頭上高くバウンドした。

 

 

「暴投!自転車部、暴投です!」

 

いつの間にか放送部がテント張って実況してやがる。

畜生!

見世物にしやがって!

 

 

 

ランナーが一人帰って来てしまった。

 

 

 

7回裏(最終回:サッカー部の攻撃)
自転車部 35
サッカー部34
0アウト
ランナー2塁3塁

 

 

ついに1点差。

尚もノーアウトだ。

 

観客は完全に「サッカー部行け行け」コール。

「チャリ部頑張れ」コールは全く聞こえない。

 

 

 

黒田は真っ青になって項垂れている。

今のがトドメだった。

これ以上はもう無理だ。

 

 

 

「タイム!タイムだァ!!」

 

オレは声を張り上げた。

 

 

 

 

マウンドに全員を集める。

 

「どうする荒北」

「何かいい手はあるか」

 

みんながオレに助言を求める。

 

 

 

オレは……黒田の肩に手を置いて言った。

 

「よく頑張った黒田ァ。交替だ」

「えっ?誰とっスか?」

 

 

「オレだ」

 

 

「ええっ?だって荒北さん、ピッチャーだけはやらないって」

「荒北、貴様投げれるのか?」

 

 

みんな驚いている。

オレは、今まで明かさなかった過去を話すことにした……。

 

 

 

 

「オレぁ……中学時代、野球部のエースだった」

「「ええっ!」」



「貴様、経験者だったのか!なぜそれを早く言わんのだ!」

 

「だが……肘を壊して、野球は辞めたんだァ。箱学に来たのァ、野球部が無かったからだ」

 

 

ざわざわ……。

みんな顔を見合わせている。

 

 

「靖友……おめさん、それで……」

 

 

 

「荒北!」

 

福ちゃんがオレの両肩を掴む。

 

 

「投げる決心をしたんだな?」

「あ、あァ。どこまでやれっかわかんねェけど……」

 

「オマエは一度決めたらやり抜く男だ。オレは確信している。新開もジンクスを打ち破った。オマエにも出来る筈だ!」

「福ちゃん……」

 

「そうだよ靖友。おめさんにもやれるさ。だっておめさんがゴミをゴミ箱に放って外してんの見たことねぇし」

「新開……そういう次元の話じゃねェんだよバァカ」

 

「というか、最早貴様しか頼れんのだ!投げてもらわねば困るぞ!」

「……あァ、そうだな、東堂」

 

 

 

 

 

「ピッチャー交替!荒北!」

「自転車部、ピッチャー交替です!今までセンターにいた荒北選手です!」

 

観客がざわつく。

 

「このままサッカー部の勢いで行きそうでしたが、流れを変えることが出来るでしょうか自転車部!」

 

 

 

 

オレの肘……。

オレの腕……。

オレの肩……。

 

あれから本格的に投げてねェ。

もう当時のようには投げられねェ。

 

うちのチームは守備がダメだ。

だから、ストライクを取るしかねェ。

三者三振だ。

アウト3つ。

この1点差を、守るんだ──。













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