ハコガク野球大会 (長編10頁)★オススメ
野球大会当日。
ついにこの日が来ちまった。
オレ達は午前中の第2試合だ。
とりあえず、他の部の第1試合を新開と二人で見学する。
「ラグビー部VS剣道部か。剣道部はいつも竹刀振り回してる分、強いんじゃないか?」
「関係ねーよ。むしろいつも屋内な分、分が悪りィ」
「あっ!バッターがいきなり3塁に走り出した!」
「……ホントにどこの部も野球を知らねェんだな。これなら心配しなくても大丈夫かなァ……」
「よぉ。ツンデレにバキュン」
「!」
「!」
ちょっと気が緩んだとこに、サッカー部主将がやって来た。
オレ達は身構える。
「見学とは余裕だなチャリ部も。そんなことで勝てるのか?」
「っせ。オメーの汚ねェ裸踊り見せられるこっちの身にもなれや」
オレがそう言うと、ヤツはオレを舐め回すように見てこう言った。
「オレは個人的にツンデレちゃんの裸踊りに興味あるんだよな~」
ビュン!
瞬間、オレの顔の前を何かが横切る。
グシャッ!
……ズズン!
……気付いたら、ヤツが倒れて気絶していた。
これ……新開が……?
「靖友。絶対勝つぞ!」
「お……おゥ……」
……新開を怒らせたら怖えェってことを知った。
いよいよ試合開始。
オレ達が先攻だ。
「オラぁ!行くぜチャリ部ゥ!」
「「おー!」」
声がバラバラだ……。
気合い入ってンのは一部だけだしなァ。
サッカー部のピッチャーはさっきの主将か。
鼻に絆創膏が貼ってある。
「真波。打ったらとにかく走れ。バントは2周目まで我慢しろ」
「はーい!」
カキーン!
ファーストゴロ。
サクッと1アウトだ。
「ちぇーっ」
……オレの打順か。
バッターボックスに立つなんて何年ぶりだろう。
「待ってたぜ。ツンデレちゃん」
サッカー部主将が声をかけてくる。
「どうしたァ、その絆創膏。似合ってンぜ」
オレがからかうと、ヤツは舌舐めずりしながら言った。
「必ず裸踊りさせてやるからな。校庭が恥ずかしかったら、オレの部屋でもいいぜ」
「悪りィな。オレぁ面食いなんだ」
カキーン!!
「うおっ!!」
ヤツは顔の真ん前で打球をキャッチした。
威嚇のライナーだ。
「オレのピッチャー返し、よく捕れたなァ。誉めてやんよ。言ったろ?脳天狙うってェ」
「……この野郎」
これで2アウト。
次は福ちゃんだ。
福ちゃんなら普通に打てンだろ。
「福富!“俺は強い”ってんなら、これを打ってみろ!」
「ム!」
福ちゃんは咄嗟に身体を回転させ、背中に投球を受けた。
「デッドボール!1塁!」
「福ちゃん!!」
「大丈夫だ、荒北」
福ちゃんは手を挙げて制止したが、オレが止まるワケねーだろ!
「てンめぇぇ!!よくも福ちゃんに危険球をォ!!」
オレはベンチを飛び出した。
「アブッ!確か乱闘の時はベンチ全員加勢しないといけないって(注:メジャーリーグルール)」
「本当か塔一郎!行くぞ!みんな!」
「「うおーーっ!!」」
試合は1回表から大乱闘となった──。