ハコガク野球大会 (長編10頁)★オススメ
新開がオレに耳打ちする。
「嫌だよオレ。靖友の裸踊りみんなに見られんの」
「だったら寝てねーでしっかり練習しろや」
「おめさんの裸のポールダンスだってまだ見せてもらってねぇのに」
バキイッ!!
オレは新開を殴り飛ばした。
ん?
こんなシーンが前にもあったような?
「キャッチボールはもうヤメだァ!バッティングやんぞ!」
監督じゃなかったと知ってすっかりやる気を無くした東堂に代わり、結局オレが仕切る羽目に。
マウンドに黒田を立たせる。
東堂は不貞腐れながらマスクをかぶる。
黒田が不敵な笑みを浮かべ、なにやら語り出した。
「ふふふ……。総務省の調べでは、黒田という名の伝説のピッチャーがいたそうですよ。黒田といえば伝説。伝説といえば黒「オメーのことじゃねーから安心しろ!」
まずは4番バッター銅橋の実力を見ておくか。
「銅橋ィ!打ってみろ」
「任せて下さいよ荒北先輩。軽く場外ですわ」
銅橋はバットを3本持ってブンブン振り回す。
パワー的には充分だ。
「黒田ァ、ストレートだ」
黒田がストレートを投げる。
ブン!
豪快な空振り。
「……黒田ァ、もういっちょストレート」
ブン!
「……カーブ頼むわ」
ブン!
「バッターアウ「うるせェ東堂!わかりきったこと言うな!」
オレは気を落ち着かせながら銅橋に近寄る。
「銅橋……。ピッチャーが足を上げたら“チャー”。足を着けたら“シュー”。その流れで“メーン”でバットを振れ」
「任せて下さい荒北先輩!」
元気だけはいいみてェだな。
「よーし、黒田ァ投げろ」
「チャー、シュー、メーン!」
カキーーン!
「よっしゃア!レフトぉ!行ったぞー!葦木場ー!」
「オーライオーライ!」
ボトッ。
「あ」
……。
「今の、ホームランですか?荒北先輩!」
銅橋が興奮して聞いてくる。
「……いや、せいぜい2塁打だ。しかも葦木場が捕っていたらアウトだ」
「えー」
「まァ、今の感覚を忘れンな。何度も繰り返して覚えろ」
「はい!」
「……次!真波ィ!」
「はーい!」
満面の笑みでバッターボックスに入る。
「黒田ァ、チェンジアップだ」
「……はい?」
「チェンジアップぅ」
「……なんスかソレ」
……。
落ち着け……落ち着けオレ。
「好きな球ァ投げろ!」
「はい!」
コツン。
「わーい、当たったー!」
「待て真波ィ!」
「え?」
1塁へ走り出そうとする真波を止める。
「今のァバントだろーがァ!」
「バント、ダメですか?」
「オメー打順わかってんのかァ!1番だぞ!バントってのァ塁に人がいる時にやんだヨ!」
「だってイチロー「100!万!年!早えーンだよ!」
「ぐえーっ!」
真波の首を締めているオレをみんなが止めに来た。
もう嫌だァ!
野球なんか嫌いだァ!
だけど裸踊りも嫌だァ!
オレは泣けてきた。
もう夜だ。
明日はいよいよ大会だ。
たいして何も出来ず、貴重な練習日は終わってしまった。
オレのストレスはMAX振り切っている。
「新開ィ!早く抱けェ!」
「ま、待ってくれよ。オレもう疲れて……」
「ちっ。情けねーなァ。じゃあオレが上に乗るわ」
「マジで?うわぁ、それ興奮するなぁ」
「……ヨッ、と」
「ああ、靖友、大胆……。最高」
──4時間後──
「まだまだァ!」
「や、靖友……もう眠らせて……お願い……」