ハコガク野球大会 (長編10頁)★オススメ
「なぁ靖友。おめさん結局、野球好きなの?嫌いなの?」
消灯後のオレのベッド。
新開がオレの背中にキスしながら問いかける。
「……さァな」
「中学の時、運動部だったんだろ?なにやってたの?」
「……さァな」
「恋人のオレにも教えてくれねぇの?」
「……」
オレは今日のことで苛立っていた。
箱学に来てチャリに打ち込んで野球のことは忘れかけていたのに。
単なる学校行事とはいえ、再び野球をプレイすることになろうとは……。
「っせ。いいから早く抱けよ」
「え?おめさんからそんなこと言うなんて珍しい」
「思いっきり激しく頼むわ」
「ヒュウ。煽るねぇ。オレ張り切っちゃうよ」
──4時間後──
「もっとォ!なにやってんだ、もっとだァ!」
「ゼェゼェ……。勘弁してくれ靖友……死ぬ。マジ死ぬ」
翌日。
大会は明日だ。
練習日は実質1日しかねェ。
1日で素人共に何が出来るってんだ。
「荒北よ。そう苛々するな。適当に組んでキャッチボールしていれば様になるのだろう?」
仕切っている東堂がドヤ顔で言う。
オレはキャッチボールしている部員達を指差して指摘する。
「距離が近過ぎる。塁と塁の間、何mあると思ってんだ。オメーらちゃんとノーバウンドで投げれるんだろうな」
「監督はオレなのだ。オレのやり方に口出ししないでもらおうか」
バカチューシャが口を尖らせる。
「ハァ?いつテメーが監督になったんだヨ」
「……なぬ?キャッチャーとは監督のことではないのか?」
「キャッチャーが監督兼務してんのァ、プロ野球でもごく一部の球団だけだバァカ!」
「なんと!ではオレは監督権限も無いのにあんなごついマスクでこの美貌を隠さねばならないというのか!」
「知るか!もゥ死ね!」
勝つつもり全くねェらしいな、うちの部は。
まァ、勝てるワケねーか。
ホント、チャリ以外ダメダメな奴らばっか。
ふと見ると、新開がベンチで寝そべっている。
「新開ィ!サボってんじゃねーぞ!」
「ゆうべ激し過ぎて腰「一生寝てろ!」
「対戦相手が決まったぞ」
福ちゃんがくじ引きから帰ってきた。
「サッカー部だ」
「ハン。あのチャラい奴らか」
サッカー部がどんだけ野球に詳しいか知らねェ。
うちと同レベルぐらいならいいが……。
「よぉ。ビッグマウス軍団」
そこへサッカー部の主将が何人か連れてやって来た。
「明日は宜しくな」
ニヤニヤしている。
「誰がビッグマウス軍団だってェ?」
オレはサッカー部主将にメンチを切る。
「おおっと。オレが言ったワケじゃないぜ。ネットで噂になってんだ(注:ホントです)。“王者とか俺は強いとか言ってるわりに全然勝てない”ってな」
「ム?」
「ンだと?ゴラ」
サッカー部主将は更に続ける。
「荒北。お前のことは“全方位型ツンデレ”だとよ」
「全……それ悪口なのか?」
「さぁな。それから、そこのカチューシャ」
「なんだ?」
東堂がこっちへ寄ってくる。
「お前のことは“カチューシャが本体”だとよ」
「ぬおっ!な、なぜそれを!」
ホントなのかよ……。
「それから、そこで寝てるイケメン」
「オレ?」
新開が起き上がる。
「お前のことは“バキュンポーズすると必ず自分が敗北する”」
「ぎゃああああ!気にしてることをぉぉぉ!」
うわァ、言っちまった。
「それから……」
「オイ!もうやめろ!明日はオレ達チャリ部がぜってーオメーらに勝ってやんよ!」
サッカー部主将はニヤリと笑った。
「またビッグマウスか。ペダル漕いでるだけのお前らに野球が出来るかよ」
「っせ!打球も投球もオメーらの脳天狙ってやんぜェ。得意だろォ?頭で球受けんのォ」
バチバチと火花が散る。
「負けた方は校庭で裸踊りだな」
「上等だァ!受けて立つぜェ!」
サッカー部は笑いながら去って行った。
「……というワケだァ!オメーらァ!明日はぜってー勝つかんなァ!!」
オレは部員達に檄を飛ばした。
「冗談ではないぞ荒北。貴様勝手に挑発に乗りおって。勝てるわけなかろう」
「勝つンだよ!練習すんぞゴラ!」
「裸踊りは貴様一人でやるがいい」
「ンなっ!オイ!」