ハコガク野球大会 (長編10頁)★オススメ





「自転車部はヒーローインタビューの準備をして下さい」

 

ヒーローインタビューなんかあんのかヨ……。

無駄に本格的だなァ。

 

 

 

「荒北、行ってこい」

「福ちゃん?いや、ヒーローは真波だろ?」

 

「何を言っている。ヒーローは荒北、オマエだ」

「……え?」

 

 

「そうだよ靖友。練習の時から一番貢献してきたのはおめさんじゃないか。お立ち台に登るのはおめさんだよ」

「新開……」

 

「貴様がいなかったらオレ達はこんなに点数を取れていない。もっと早い段階でコールド負けしていただろう」

「東堂……」

 

 

「荒北さーん!野球って楽しいですねー!」

「荒北先輩のおかげでいい試合出来ました!」

「荒北さん!カッコ良かったっス!」

「今度みんなで野球観戦行きましょうよ!」

「うおっ、いいなそれ!」

 

「オメーら……」

 

 

 

 

「荒北」

 

福ちゃんがオレの肩に手を置く。

 

 

「もう野球から逃げる必要はない。オマエは見事に立ち直った筈だ。素晴らしいチームメイトのおかげでな」

 

 

 

 

……あァ。

その通りだ福ちゃん……。

 

 

オレには……こんなに素晴らしいチームメイトがついてンだ……。

 

 

 

 

「なァ、福ちゃん」

「ム?」

 

「オレ達……ビッグマウス軍団なんかじゃ、ねェよな?」

 

 

 

「ああ、そうとも荒北。オレ達は、王者だ!!」

 

 

 

それ聞いて安心したよ福ちゃん……。

 

 

 

 

 

オレはお立ち台の上に乗った。

 

「ヒーローインタビューです。接戦の死闘を勝利した自転車部のヒーロー、荒北選手!!」

 

 

ワーワーワー!

 

 

「後程新聞部の取材にも応じて頂きますが、とりあえず今ここで一言、感想をお願い致します!」

 

 

オレは放送部からマイクを奪い取り、自転車部の面々に向かって叫んだ。

 

 

 

 

「チャリ部ゥ!オメーら最高だァ!愛してンぜェェ!!」

 

 

 

 

ワーワーワーワー!!

 

 

観客の歓声は、いつまでも鳴り止まなかった──。

 

 

 

 

 

試合に負けたサッカー部は、約束通り主将が一人で校庭で裸踊りをした。

 

しかし、女子生徒達から罵倒され、更に投石の集中放火を浴び、救急車で運ばれる騒ぎとなった……。

 

 

 

 

 

 

長い1日が終わり、オレはやっと部屋で新開と寛いでいる。

 

 

「意外と、というよりかなり楽しかったよ、野球」

「あァ。ゲーム性が秀逸だからなァ」

 

「今度、一緒に野球観戦デートしような」

「オメーと野球観戦する日が来るとァな……」

 

「靖友のピッチャー姿、凄くカッコ良かった」

「ハッ。オメーのホームランもなァ」

 

 

 

新開が背中からのしかかって囁く。

 

 

「靖友……オレは野球に感謝してるよ。だって、そのおかげでおめさんとめぐり逢えたんだから……」

「……そうだな。ハコガクに来てなかったら、絶対オメーと出逢えてねェな」

 

 

「なぁ、靖友。“一度愛したら生涯添い遂げる ”って言ってくれたよな。あれって……」

「……スゥ……」

 

 

 

「……あれっ?寝ちまった?ちょ、確か今夜は大サービスしてくれるって約束……」

 

 

 

「……ま、仕方ないか。お疲れさん、靖友。……オレも生涯添い遂げるよ。靖友、愛してる」

 

 

 

 

「おやすみ靖友。……いい夢を」


 











おしまい




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