東堂式恋愛術 (中編8頁)
「よう。恋愛の神様」
荒北はジュースやスナック菓子を山のように抱え、東堂の部屋のドアを足で蹴り開けた。
「どうしたのだ荒北。ハッ。まさか……!」
驚く東堂。
「そのまさかだ」
荒北はニヤリと笑って、抱えていた物をベッドの上にバラ巻く。
「成功したのか!!」
椅子から飛び上がる東堂。
「あァ。大成功だ。お礼に今月の日替り定食毎日奢ってやんよ」
「なんと……!あれが成功するとは!」
「あ?」
「いや、なんでもない」
東堂は慌てて口を噤む。
「やっぱ、最後の“突き放す”ってのが効いたなァ。オメー、天才だわマジで」
「そ、そうか。フハハ。あ、あんなのは朝飯前だからな」
「またなんかあったら頼むぜ。山神様」
「お、おう。いつでも頼るがいい」
荒北は手を振って部屋を出て行った。
「靖友。尽八となに話してたの?オレとも遊んでくれよ」
「っせ。付きまとうんじゃねーよ」
「傍にいたいんだよ。おめさんに気に入られるように努力するからさ。なぁ靖友。部屋に行ってもいい?」
「来んな」
「嫌だ。行く」
「勝手にしろ」
廊下から新開と荒北の会話が聞こえてくる。
「はて……隼人が急に荒北の下僕のようになったのはなぜだ。荒北のヤツ、何か弱味でも握ったのか」
東堂は荒北にもらったジュースとスナック菓子を開ける。
「そうか……。成功したか。ならばオレも試してみなければな」
ボリボリとスナック菓子を食べながら、天を仰ぐ。
「……相手は誰にするかな……フフフ」
おしまい