東堂式恋愛術 (中編8頁)





その晩……。

 

夢にさっき見たサイトの少年達が出てきた。

 

 

金髪巻き毛の少年が、栗毛の少年に、あんなことやこんなことやそんなことまでしている。

 

栗毛の少年は、気持ち良さそうに喘いでいる。

 

 

その栗毛の少年の顔が、いつの間にか靖友の顔に変わっていて……。

 

 

 

 

ガバッ!

 

飛び起きたら朝だった。

 

 

下着に違和感を覚えて……ああっ!

高校生にもなって何やってんだオレは!!

 

 

 

 

 

靖友!

靖友のせいだ!

 

オレの心をかき乱しやがって!

オレの人生を壊す気か!

オレになんか恨みでもあんのか!

 

オレは混乱して腹を立てている。

自分の中の理解出来ない苛立ちを、靖友にぶつけようとしている。

自分でも何だかよくわからないが、とにかく靖友になんか一言文句でも言ってやらないと気が済まない。

 

 

オレは朝練中の部室にズンズンと向かった。

 

 

 

チャリ置場で靖友と尽八を見付けた。

 

尽八がワハハと高笑いしている。

楽しそうだ。

くそっ。

オレの気も知らないで。

 

 

靖友が気付いてこっちを見た。

 

……ぐっ。

 

 

オレはまた固まってしまった。

 

 

靖友と見合ったまま静止。

靖友はジッとオレを見ている。

 

決して自分から目を逸らさない気だ。

さすが元ヤン。

 

靖友は右手を目元に持って行き……

 

 

 

アッカンベーをした。

 

 

 

!!ズッキュウゥゥン!!

 

ぐはあぁっっっ!!

 

 

オレは……オレは、心臓を手で押さえ……もんどり打って地面に倒れた。

 

 

 

ハァ……ハァ……。

 

心臓を鷲掴みされるとか、ハートを射抜かれるとかってのは、こういうことを言うのか……。

 

ドキドキが止まらない。

 

オレは一体どうしちまったんだ。

オレの身に一体何が起こってるんだ。

誰か教えてくれよ……。

 

 

 

「朝っぱらから立ち眩みか?隼人」

 

尽八がオレを見下ろして手を差し伸べる。

 

「靖友は……?」

 

その手に掴まり身を起こしながら聞くと、

 

「荒北ならもう走りに行ってしまったぞ」

 

と言われた。

早っ。

 

 

「フフ……」

 

?……尽八が思い出し笑いをする。

 

「なに?」

 

オレが聞くと、尽八はニヤニヤして言った。

 

「いや……荒北はホントに可愛いヤツだなぁと思ってな。フフフ」

 

なにぃ!?

 

な、なんだ可愛いって!

どういう意味だ!

尽八がそんなこと言うなんて!

ま、まさか尽八も靖友のことを……?

いや、そんなことあるわけない!

てか、なんだ今オレ、尽八「も」って!

あああ!

もーー!!

 

オレは頭を抱えて首を横にブンブン振りながら走り去った。

 

 

「こらー隼人ー!朝練サボリは重罪だぞー!」

 

 

 

 

 

 

ガラッ。

 

「福ちゃん!」

 

靖友がうちのクラスへ入って来た。

 

「数学の教科書貸してェ」

「今日は数学か。荒北、オマエもう少し……」

「靖友!」

 

オレはたまらず口を挟んだ。

 

 

「教科書ならオレが貸してやる!」

「え?」

 

靖友はビックリしている。

 

 

「……いや、オメーの教科書ってなんかたくさん落書きしてあって汚ねぇから福ちゃんに……」

 

「いいから!これからは寿一じゃなくて全部オレに言え!オレが何でも貸してやるから!」

 

 

オレは……尽八だけじゃなく、寿一に対してまで嫉妬を……?

これは、嫉妬なのか……?

 

 

「わ、わかったヨ……」

 

靖友はオレの数学の教科書を持って教室を出て行った。

 

 

 

「新開」

 

ギクッ。

寿一に気付かれただろうか。

 

 

寿一は親指をグッと立ててこう言った。

 

「荒北の忘れ癖を直させるために、汚い教科書を貸す。ナイスアイデアだ!」

 

「……そんなつもりじゃないよ。てか、オレの教科書ってそんなに汚いの?」











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