キミを探して (短編2頁)
「あァ?」
「!!」
振り向いたその男は……。
「新開!?」
「靖……友?」
本人?
え?
ホントに?
靖友?
「新開じゃねーか!なにやってんだオメーこんなとこで。久しぶりだなァ!」
「……いや、おめさんこそ、なにやって……」
本人だ!
靖友だ!
これは夢か?
ついにオレ、幻覚が……。
心臓がバクバク言って今にも倒れそうだ、オレ。
「さっきまでそこの居酒屋で洋南の飲み会でさァ。二次会抜けて出てきたトコぉ。なんかみんなベロベロに酔っ払ってっからさァ。面倒見んのたりーから逃げてきたァ。ギャハハ」
靖友だ。
靖友だ。
靖友靖友靖友……。
「なにさっきオメー“ねぇキミ”って。キャッチセールスかっつーの。ギャハハ」
酔ってるんだな靖友。
ずいぶん陽気だ。
これならなんとか誤魔化せそうだ。
「いや、道聞こうと……まさかおめさんとは思わなかったんだ」
「ハァ?オレとは思わなかったァ?何年一緒にいたんだヨ!後ろ姿ですぐ判んだろーがバァカ!」
“バァカ”……。
これだ……。
本物の“バァカ”だ……。
これだよ。
これが聞きたかったんだ……。
「……!オイ、新開!」
「え……?」
「どした?なんで泣いてんだオメー」
気が付いたら、大量の涙が頬を流れていた。
まるで滝のように。
「だ、大丈夫かヨ。なんかあったのか?」
「靖友……」
靖友はあたふたして、とりあえずオレを路地へ押し込んだ。
オレは靖友を抱き締めた。
そして、泣いた。
大泣きした。
号泣した。
靖友の温もり。
靖友の感触。
靖友の匂い。
靖友の声。
靖友の笑顔。
靖友はオレの髪を優しく撫でてくれる。
「ったくよォ。アイツラの面倒見たくなくて抜け出して来たっつーのに、まさかオメーの面倒見ることになるとはなァ」
相変わらず口は悪いけど、靖友は優しい。
優しいんだ、ホントに。
いつだって……。
「新開……。会いたかったぜ」
「え……」
「大学行ってから全然連絡ねーし、もうオレなんかいらねーのかヨって不貞腐れてたんだけどよ。今日たまたまかもしんねーけど、オメーがなんか辛い時にぶつかっちまったみてーで。こんなオレでもまだオメーの役に立つんだったらよ、ずっと傍にいてやっから。干からびるまで泣き倒しな」
「……靖友……」
オレは踏み止まることが出来たのかもしれない。
今日、靖友に会えなかったら、もう戻って来れなくなってたところだったかもしれない。
「もっと、オレを頼ってくれヨ……」
靖友……。
ありがとう靖友。
今は涙が止まらなくて何も喋れないけど、泣き止んだら、いっぱい話したいことがあるんだ……。
いっぱいいっぱいあるんだ……。
おめさん聞いてくれるかい?
きっと一晩じゃあ終わらねぇが。
会いたかったって言ってくれた……。
傍にいてやるって言ってくれた……。
もっと頼ってくれって……。
いいのかい?
ホントに。
オレ、この後おめさんにいっぱい我が儘言っちまうぜ。
靖友……。
優しい靖友……。
そうやってオレをずっと掴まえててくれよな……。
おしまい