小さなキューピッド・オマケ (短編1頁)
パタン。
悠人にメールを送り、新開は携帯を閉じた。
「なんて書いたんだ?」
荒北が尋ねる。
「ん?『今夜は泊まっていくから』って」
「ふーん……ええっ!?」
荒北は仰天するが、新開は恋人繋ぎをしたまま手を離さない。
「今夜は帰さないよ、靖友」
「ちょ、いや、でもオレ、こ、心の準備が……」
「心の準備なんて、最中でも出来るだろ」
「最中って、なんのデスカ……」
「そりゃセッ「言うな!頼むからァ!」
荒北は慌てて遮る。
「じゃ、必要な物揃えに行こうぜ」
「必要なモノ……」
新開は荒北の手を引いて元気良く薬局に入って行く。
鼻唄を歌いながらカゴにコンドームとベビーローションと替えの下着をポイポイ入れる新開。
「いやあァァ」
荒北は泣けてきた。
薬局を出ると、今度はゲーセンに入っていく。
「ゲーセン?」
新開はクレーンゲームコーナーに荒北を連れて行き、目当てのモノをキョロキョロ探している。
「なに探してんだァ?」
不思議がる荒北。
新開はパッと顔を輝かせ、荒北の手を引っ張る。
「ハイ、靖友。これ獲って」
新開は100円玉を入れる。
「何が欲しいんだよ……ゲッ!!」
連れて来られたクレーンゲームの景品は……手錠だった。
「なっ、ななな何に使う気だァこれェ!!」
「いいから早く獲ってよ」
荒北は完全に動揺している。
アームが見事にスカッと空を切る。
「手が震えてるじゃないか。なにやってんだよ靖友。ホラもう一度」
更に100円玉を投入する新開。
「たっ……助けてくれェェ!悠人ォォォ!!」
荒北の悲鳴は、悠人には届かなかった ──。
おしまい
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