小さなキューピッド (長編10頁)





クレープ屋を出た3人は、新開が欲しい本があると言うので正面にある大きな本屋へ向かった。

 

その本屋の入口に置いてあるクレーンゲーム機に、荒北はクレープを食べている時から目を付けていた。

 

 

「悠人。おさらいだ」

 

荒北は悠人をクレーンゲーム機の前へ連れて行く。

 

100円玉を1枚投入し、悠人の背中をポンと叩いて指示する。

 

「あの3番の箱を獲れ。オマエなら出来る筈だ」

「わかった!」

 

悠人は奮起して慎重にクレーンを操作する。

 

……しかし箱はアームの力が弱く、少ししか動かなかった。

 

 

「う~」

 

悠人はガッカリする。

荒北はもう100円投入する。

 

「応用問題だ。アームが弱ければ、どうしたらいい?」

「え?えーっと。……そうか!」

 

 

悠人は一度大きく深呼吸し、再びクレーンを操作する。

箱の端っこをアームで上から押さえつけ、箱は見事バランスを崩し、落ちた。

 

 

ガコンゴロン。

 

 

「やったー!」

「正解だ悠人」

「凄いもんだな全く」

 

 

悠人は早速箱を開けた。

中から出てきたのは……。

 

「これは……」

 

 

 

スズメ蜂のキーホルダーだった。

 

 

 

悠人は高揚して荒北に叫ぶ。

 

「ありがとう!ありがとう靖友くん!オレ、大事にするよ!」

 

悠人は今日やっとまともに荒北に礼を言うことが出来た。

 

 

「オメーが自分で勝ち獲ったんだゼ。自分を誉めてやれ」

 

荒北は悠人の肩に手をやる。

新開は微笑んでいる。

 

 

 

「靖友くん!オレも!お礼にオレの一番大事なものをあげるよ!」

 

「一番大事なものォ?」

 

 

悠人は新開の背中をドンと押して、荒北に体当たりさせた。

 

「わっ!」

 

バランスを崩して新開は荒北に抱き付く。

荒北も思わず新開を受け止める。

 

 

 

「隼人くんをあげる!」

 

「!」

「!」












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