小さなキューピッド (長編10頁)
「yesですか?」
悠人はもう一度聞いた。
荒北は暫く呆気に取られていたが、やがて真面目な表情になってこう言った。
「……yesだ」
yes!
言質取ったぞ!
悠人はガッツポーズをした。
しかし確認すべきことはまだある。
悠人は次の質問に移った。
「隼人くんの好きなところは、チャリの才能ですか?それともイケメンなところですか?」
「えェ?……そうだなァ」
荒北は首の後ろを掻きながら答える。
「チャリの才能は確かにスゲーと思うが、イケメンなとこは……女がキャーキャーうるせぇから不満点だなァ。オレぁそんなトコよりも……」
少しずつ思い出すように荒北は語り出す。
「アイツの……なんつーか、結構だらしないトコとか、意外とマヌケなトコとか、呆れる程食い散らかすトコとか、腹立つ程天然なトコとか……」
えらい言われ様だが、悠人は黙って聞いている。
「ド変態かと思うぐらいウサ吉の匂いが好きなトコとか……まァ、そういうトコがなんか知らねーけど、オレぁ愛しくてたまんねーっつーか」
yes!yes!
……合格だ!
靖友くんは、解ってる!
隼人くんの萌えポイントをちゃんと解ってるんだ!
悠人は興奮してきた。
次が最後の質問だ。
荒北はなんと答えるだろうか。
「靖友くんは、なぜ隼人くんのことを“隼人”と呼ばないんですか?」
「!!」
荒北はその質問にビクッと反応した。
みるみる荒北の顔が紅潮していく。
悠人はその変化をしっかりチェックしている。
荒北は明らかに激しく動揺してこう叫んだ。
「どっ……どーでもイイだろーがそんなことォ!べっ、別に照れ臭せェとかそーゆーわけじゃねーんだからな!!」
yes!yes!yes!!
デレだ!
靖友くんのデレが初めて発動した!
完璧だ!!
悠人は大満足だった。
そこへ新開が戻ってきて、話は終わった。
荒北は悠人に目配せして、“新開には黙ってろよ”という仕草をした。
悠人は応えなかった。