小さなキューピッド (長編10頁)





3人はクレープ屋に入った。

 

テラス席に座る。

外は寒いが、エアカーテンで区切られ日差しが暖かい。

 

荒北は粉砂糖だけのプレーン。

新開はチョコバナナ。

悠人はイチゴやら桃やらミカンやらバームクーヘンやらごちゃごちゃ乗っていて食べにくそうだ。

 

 

「靖友、ひと口食うか?それじゃシンプル過ぎだろ」

 

新開が食べ掛けを差し出す。

 

荒北は新開をチラッと見て、

 

「いらねーよ。オレぁこれでいい」

 

と言って手を伸ばし、新開の口元に付いていたクリームをサッと親指で拭ってペロリと舐めた。

 

「!」

 

新開は驚いて真っ赤になっている。

荒北は平然として、何事も無かったかのように自分のクレープを食べている。

 

 

その様子を見て悠人は思った。

 

 

靖友くんは、時折こうやって隼人くんに思わせ振りな態度をとる……。

だから隼人くんはその度にドギマギしちゃうんだ。

 

靖友くんは、どういうつもりなんだろう。

靖友くんも隼人くんのことを好きなんだろうか。

それとも、からかって弄んでいるんだろうか。

それとも、全くの無意識の天然なんだろうか。

 

その辺をハッキリさせてあげるのが、キューピッドであるオレの役目だよな……。

 

 

第一印象は最悪だったが、悠人は今日一日荒北と接してみて彼をすっかり気に入ってしまっていた。

だから、このまま兄と恋人関係になってくれたら嬉しい、と思っている。

なんとか、荒北の気持ちを確かめなければ……。

 

 

 

「オレも悠人みてぇな弟、欲しいなァ」

 

荒北が溜め息をつく。

 

「靖友んとこは妹だもんな」

「そうなんだよ。弟だったらこうやって一緒に楽しく遊びに行けるのによォ。いいよなァ新開は。兄弟揃ってチャリ乗れてよォ。羨ましいなァ畜生」

 

荒北はテーブルに身を乗り出し、新開に向かって言った。

 

「なァ新開。悠人オレにくれよ」

 

新開は飛び上がって驚く。

 

「なっ!ダメだよ!いくら靖友の頼みでも、悠人だけはやれないよ!」

 

焦って全否定する新開。

 

 

二人のやり取りを見ていて、悠人が口を開いた。

 

 

「二人が結婚すれば、自動的にオレは靖友くんの弟だよ」

 

「!」

「!」

 

 

「ゆ、悠人……!」

 

赤面する新開。

 

荒北は悠人の発言にキョトンとしていたが、やがてニカッと笑って新開に言った。

 

「そりゃナイスアイデアだ。なぁ新開。そうすっかァ」

 

「お……オレ……」

 

新開は真っ赤になってあたふたし出す。

 

 

「オレちょっとトイレ!」

 

食べ掛けのクレープを紙ナフキンの上に置き、新開は席を立ってバタバタと行ってしまった。

 

 

 

ガタッ!

 

今しかない、と悠人は思い、立ち上がって荒北を指差して言った。

 

「靖友くん!」

「んあ?」

 

 

「靖友くんは、隼人くんにLOVE!……答はyesですか?」

 

「え……?」

 

 

荒北は驚いて悠人を凝視した。











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