小さなキューピッド (長編10頁)





遊び疲れてお腹がすいたので、3人は中華料理屋へ入った。

 

荒北は五目広東麺に餃子。

新開兄弟はチャーシュー麺、餃子、天津飯、麻婆豆腐、回鍋肉、酢豚、海老チリ、etc.……。

 

「まるで円卓だなァ。オマエラと飯食うとオレが少食に見えるわ」

「靖友、遠慮なくつまんでくれな」

「いや、いい……」

「さっきのパワーバー、残り4本しかないから大事に食べなくちゃ」

「マジかよ……」

 

荒北はゲッソリしている。

 

 

食事しながら次の予定を円卓会議する。

 

「次はどこ行く?」

「あ、オレ行きたいとこある!」

 

悠人が発言する。

 

「年末にオープンしたばかりの、大型スポーツ用品店!」

「おっ。いいじゃナァイ」

「ここから電車で2駅乗るけど」

「構わねぇよ。福袋、冷やかしに行こうぜ」

「冷やかすだけかよ、靖友」

「福袋なんて素人が買うもんだぜ。なぁ、悠人」

「うん!」

 

 

すっかり仲良しになった悠人と荒北を見て、新開は嬉しかった。

今日は悠人にキューピッド役を頼んでいたが、もうそんなことはどうでも良かった。

3人で過ごしているこの時間がすごく幸せだ。

またこの3人で遊べる時が来るのだろうか、来てほしい。

そう願っていた。

 

 

 

 

 

 

電車はギュウギュウに混んでいた。

 

「さすが三が日だな」

「みんな正月ぐらい家で過ごせヨまったくゥ!」

「潰れるうう~」

 

満員電車を滅多に経験することのない悠人は目を回していた。

息苦しくて上を向いて呼吸する。

足元もバランスを取るのが難しい。

だけど、たった2駅の辛抱だ。

頑張ろう。

 

 

 

……さわっ。

「!?」

 

 

悠人は尻部分に違和感を覚えた。

 

 

何かが触れている。

 

誰かの手が当たっているようだ。

しかし、なにか不自然。

 

 

……ぐにゅっ。

「!!」

 

 

明らかに尻を揉まれた。

 

痴漢だ!










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