小さなキューピッド (長編10頁)





元旦。

 

正月休みを実家で過ごしている新開は、家族で初詣に来ていた。

 

 

大混雑の中参拝を済ませ、おみくじを引く。

 

中吉。

内容もそれぞれ無難なことしか書いていない。

 

「はぁ~」

溜め息をつく。

 

 

「その溜め息は、恋愛運?」

 

悠人がおみくじを覗き込んで言った。

 

ギクッとする新開。

 

 

「なになに?“知人に間に入ってもらうと良いでしょう”?へ~。確かに無難で無責任でビミョーだね」

 

悠人は新開からおみくじを引ったくって読み上げた。

 

「こら。返せ」

「恋のお相手は、ファンクラブの娘?」

 

悠人は新開の顔を見上げて尋ねる。

 

「……違うよ」

 

新開は目を逸らして答える。

 

 

「へぇ!片想いなんだ!隼人くんが!」

「うるさいな。放っといてくれ」

 

新開はふてくされる。

 

 

「オレ、隼人くんの好きなタイプ、知ってるよ」

「え?」

 

「ツンデレ」

「!!」

 

悠人はニッコリ笑って言う。

新開は驚いた。

 

 

「一見冷たそうで温かい。無関心なようで思慮深く、突き放すようで引っ張ってくれ、悪ぶってるけど正義感。素直じゃないけど面倒見がいい。手に入りそうでスルッと逃げていく」

「わ、わかるのか悠人!」

 

新開は思わず悠人の肩を掴んで叫ぶ。

 

 

「オレだってねぇ、中学では隼人くんに負けず劣らずモテモテなんだよ。こんなの基本だよ」

 

ドヤ顔の悠人。

 

 

「悠人!そうか!オマエだったのか!」

「は?なにが?」

 

新開は興奮して鼻息が荒くなっている。

 

「おみくじの“知人に間に入ってもらう”っての!」

「あれってオレのこと?」

 

悠人はキョトンとしている。

 

 

「一度会ってくれないか!キューピッドになってくれ!」

「マジで?」

 

 

急激な展開にたじろぐ悠人だったが、大好きな兄の幸せのためだ。

ここは一肌脱ごうと、引き受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだァ?このちっこいのァ」

 

 

翌日、待ち合わせ場所に現れたのは目付きの悪い元ヤンだった。

 

 

 

「お……男……???」

 

 

悠人の頭の中はパニックを起こしていた。










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