下着泥棒 (中編4頁)





終わりは唐突にやってきた。

 

 

 

「靖友。今まで負担かけてごめん。もう大丈夫だから」

「……えっ」

 

校庭の飼育小屋近くで荒北は新開に呼び止められて、そう切り出された。

 

 

 

「解決したよ。もう靖友にパンツねだったりしないから安心してくれ」

「解決って……」

 

 

荒北は頭がグラングランになった。

 

 

どういうことだよ。

あんなにオレのパンツに執着してたくせに。

オレのパンツの虜だったじゃねーか。

オレのパンツ無しじゃ生きられねェ勢いだったじゃねーか。

 

 

 

荒北はカッとなって新開の胸ぐらを掴んだ。

 

「テメェ!誰のパンツに乗り換えやがったァ!!」

「や、靖友、苦し……」

 

「嗅いだのか!ソイツのパンツを!なんて節操のねェ野郎なんだテメーは!オレとのことは遊びだったのかヨ!」

「ち、違……」

 

荒北は新開を突き飛ばした。

 

「消えろ!顔も見たくねェ!変態野郎!」

「靖友!違う!ウサ吉だ!」

 

新開は起き上がりながら必死で弁解する。

 

 

「……ウサ吉ィ?」

 

荒北は意味がわからない。

 

 

「ウサ吉の匂いに似てたんだよ、靖友のパンツが。あの安らぐ匂いはウサ吉だったって気付いたんだ。だからこれからはウサ吉の寝床にタオル敷いて、それを使うから。それでさ、靖友とは改めて……」

 

荒北はそれを聞いてワナワナと震え出す。

 

 

 

「オレのパンツはケモノの匂いだってのかァ!!」

 

 

 

荒北は新開をぶん殴った。

 

パンチが新開の顎にクリーンヒットし、新開はノックアウトされ気絶した。

 

 

 

「キャー!新開くんがー!」

 

付近の女子達が集まってくる。

 

「新開くんになにすんのよ!」

「荒北のバカ!人でなし!」

 

女子達はよってたかって荒北を罵倒する。

 

 

「あーそうだヨ!オレぁ人でなしだァ!ケモノだよ!野獣だよ!」

 

荒北は背中に女子達の罵声を浴びながら立ち去って行った。

 

 

 

 

「……畜生!」

 

涙が出てきた。

 

 

荒北の初恋は、自分のパンツに負け、ウサ吉にまで負け、これ以上無いほどの玉砕ぶりで失恋に終わった。

 

 

しかし、新開がさっき改めて交際を申し込もうとしていたことを荒北はまだ知らない──。

 






 

おしまい






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