新開の悩み事 (短編2頁)
昼休み。
穏やかな風とポカポカとした陽気が心地好い。
窓際の席で新開は独り頬杖をつき校庭を眺めていた。
その視線の先にはサッカー、のようなものを同級生と3人でプレイしている荒北の姿。
ギャハハと笑いながら元気いっぱいにボールを蹴っている。
そんなことして怪我でもしたらどうするんだ、なんていつもなら止めに入るところだが、今日はそれよりもただ、ただ荒北の姿を目で追うばかりであった。
「はぁ……」
溜め息が漏れる。
「どうした隼人。元気ないではないか」
そこに現れたのは老舗旅館の息子。
「さっきから何を見ているのだ……ん?荒北の奴、サッカーなんぞやりおって何を考えているのだ!」
「はぁ……」
思わず窓から身を乗り出した東堂だったが、再び溜め息をつく新開に向き直る。
「悩み事か?俺に話してみるがいい」
副部長でもある東堂は、結構面倒見がいい。
が、やりっぱな癖があるのも難点だ。
「おめさんに話してもなぁ……」
新開は東堂にチラリとも目を向けず、荒北の走り回る姿を眺めている。
「何を言う。俺が今まで数々の難問を解決してきたことを知らんのか。だいたい、そんな調子では練習に支障が出るではないか。さあ、話してみろ」
ドヤ顔をした東堂は窓に背を向け、腕を組んだ。
新開は仕方なく、めんどくさそうに東堂をチラッと見る。
「ん……じゃあ言うけど」
「うむ」
「俺……」
「うむ」
「靖友が好きなんだ」
ガシャン!!
東堂は自分の後頭部を思い切り窓に叩きつけた。
二重窓は派手な音を立てて揺れたが幸い割れず、東堂の頭も怪我は無かった。
「む……むぅ」
東堂は一瞬頭がクラッとしたが、新開が全く気にせず話を続けるので気を取り直すことに集中した。
「最初はさ、単に性欲だけだったんだ。靖友見てるとこう、ムラムラするって言うか」
「ぐ……」
東堂は再び窓に後頭部が倒れかかったが、かろうじて堪える。
「で、さすがに我慢出来なくなったから抱いたんだ。おととい」
ガシャン!!
「尽八さっきから何やってんだよ危ねぇな」
「な、なんのこれしき……」
「こっち座れよ。でさ、」
「お、おう……」
新開は東堂に空いている前の席の椅子を勧め座らせた。
そして話を続ける。
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