新春企画 『貴方と共にあるということ』




鮮烈な強い光が丸い地球の断面から広がっていくのを俺は窓ガラス越しに見つめる。また、365日の始まりである。
「今年は、戦局が落ち着いてくれればいいんですが。」
後ろで熱いコーヒーを飲みながら、古泉一樹幕僚総長がそう零した。
「・・・本当は、地球にとっても宇宙にとっても、俺たちは不要な存在なのかも知れない。」
「コーディネイターが、ですか?」
「いや、人類そのものが。」
光に包まれていく地球を見ると、ずっとこうだったのだろうな、と漠然とそう思う。コーヒーを作業机に置いた古泉はそのまま立ちあがった。
「いいえ、人類は確かに愚かな存在かも知れません。失うまで気づかない。そんな種族だと。ですが、宇宙においても、地球においても、無くていいものなど微塵も存在しないのです。僕たちは、限りない奇跡の中から生まれてきて、そして何処かへ還る。それが無駄であるなどと決めつけるのも、また人でしかない。宇宙も、あの星も、何者をも拒んではいないのです。」
「それが自分たちに滅びを招いてもか?」
「彼らは、宇宙も星も、自分の運命を全うする事しか考えていません。僕たちがいることさえ、通過点の一つに過ぎないのです。」
「そんなもんか。」
「ええ、そんなもんです。さてここで問題です。」
「ん?」
後ろを振り向くと、すぐ目の前まで古泉の軍服が迫っていた。あと少しで密着する距離である。
「僕の今年の抱負は何でしょう?」
「・・・抱負、とな。」
「ええ、普段からこのようにやってみたいと心に思っている・考え、計画です。あ、新明解国語辞典から引用です。」
「あー・・・俺としては、来年こそはARKの奴らを叩きたいので、そのためにはZIONの黒の作戦参謀殿と親しくなりたい・・・というところだが、お前の抱負・・・?」
「そうです。僕の今年の抱負です。」
「・・・。あー、会長に嫌味を返す・・・?」
「・・・。はずれです。本当に解らないんですか・・・?」
「知らん。」
古泉は大きく溜息を吐くと、俺の腰をギュッと抱きしめた。
「今年こそは・・・貴方が承諾してくれればですが、貴方との間に可愛い女の子が見たいなぁと思いまして。」
ボッと顔を赤らめた俺に、古泉は緩やかに口角を上げた。
「ダメでしょうか・・・?」
「そッ、それは・・・戦局次第だ!馬鹿!」
密着した体の熱を感じながら再び窓に目をやると、丸く碧い星を光が包んで行くのが見えた。


『すぐ隣に在る温度』


そうだな、考えて、おく。

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