新春企画 『貴方と共にあるということ』



「なぁ、知っているかヒイロ。世界というのは危うい均衡の中に立っていて、でもその奇跡的に保たれているバランスを壊すこと無く今日まで歩んできたということを。」

長い三つ編みを風にたなびかせて、黒い服を着た少年は朗らかに笑いながらこちらを向いた。

「だからこそ尊いのだということを、僕らはずっと前から知っているはずなんです。」

金髪の少年は、何かに祈るように空を見上げた。じきに赤らんでくるだろう、その漆黒の空を。

「だが、大切なものが目の前にあるのに、気づけないのは人間の性だ。俺たちだってそうだろう?」

前髪が長い少年は、確認するかのように問いかけて、そして目を伏せた。地面には、黒い黒い豊かな土が広がっていた。彼らは果てのない地面の上に立っている。

「下らん、迷えば犠牲が生じる。それは悪だ。俺達は正しい。そうであらなくてはならない。」

黒髪を一つに束ねた少年は、真っ直ぐに前を見据えた。その瞳に映っているのは、滑らかに円を描く地平線である。
ヒイロ、と呼ばれた少年は、その全てを体で感じ取りながら、閉じていた目をゆっくりと開いた。見据えるのは、目の前に居る“自分が帰る場所”である。

「俺は、人間は感情のままに生きるのが人間だと思っている。」

それは人間として正しい、あるべき姿だ。とヒイロは目の前に居る四人に言った。
三つ編みの少年―――デュオは笑いながら「まったくお前らしい回答だよ、ほんと。」と言い、金髪の少年、カトルは呆れたように溜息を吐いた。前髪の長い少年、トロワは腹を抱えて笑っている。黒髪を一つに束ねた少年、五飛は「貴様本当に考えているのか!?」と怒りだした。

「だが、この上なく正しい。」

ひとしきり笑い終わったトロワはそう他の四人にそう投げかけた。
「まー・・・ヒイロの考えることだしな。でも面白そうだし着いて行くぜ、俺は。」
デュオがそう言うと、カトルは再び溜息を吐いた。
「波乱万丈間違いなしな気もするんですが。それもいいでしょう。」
「俺もその意見には賛成だが、一度自分に試練を課すのも興だろう。」
五飛がそう言うと、ヒイロは再び四人を見た。
「俺にも、異論はない。」

「ならとっとと始めるかー。」
「何もないところですがね。」
「それだけやりがいがありそうだ。」
「お前たち、後から愚痴は言うなよ。」
「「「それはない」」」
「ならいい。」




『何も無い処から始める』




これからの人生、俺たちの自由だ。


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