GUNDAM

『幸せのレシピ』

マリーメイアの反乱から早9年。デュオとの逃亡劇を始めて早8年。ひたすら逃げ続ける奴を仕留めようとロープ片手に世界中、否。銀河中を駆け巡った日々を終えて、つい昨日。ついに奴の尻尾、もとい、三つ編みを捕まえることに成功した。



朝の陽ざしが部屋に落ちる。
それに目を伏せて、布団の中に潜り込む。この8年間はまるで怒涛のようだった。奴は何の仕事をしていたのか、宇宙と地球を行ったり来たりしていて、まるで連絡は取れない上に、何故か通信が出来たとしても通信機をいじくり倒したのか、ハッキングしたのか、住所の特定ができなかった。
最早宇宙コロニーの代表と言っても差支えないだろうカトルの追跡をもってしても掴めない連絡手段に何度煮え湯を飲まされたか知れない。
それをしつこく(自分で言うのもなんだが。)追い回した日々。そしてあっさり交わされた日々。思い出しただけでも、奴の能力を甘く見ていた初期の自分を殴り飛ばしたい。あの頃ほどゼロシステムが欲しかった時はなかった。
眉間に知らずに皺が寄る。とにかく、そんな逃亡劇も昨日で幕を閉じたのだ、と近くにあるはずのぬくもりを探そうとシーツの上を指でたどる。直ぐに見つけられるはずの体温は、しかし冷えた感触を自分に与えた。

・・・しまった!

逃げられたか!
起き上がると、案の定繋ぎとめておいたはずの手錠(カトルから涙ながらに渡されたもの)の鍵が外されており、寝巻がベッドの上に畳まれて置いてあった。
急いでベッドから抜け出し、適当に服を着た後、階段を駆け下りる。
玄関に向かおうとした俺に、後ろから声がかかった。

「おや?ヒイロ、今日は出勤か?」
「・・・。」
「おはよ。」
「・・・おはよう。」
「はは-ん、寝ぼけてんな?顔はちゃんと洗えよ?時間があるなら飯食ってけ。つっても、お前が揃えてあったのだけどな。」
にゃはは、と笑うデュオに目が点になる。
「デュオ。」
「なーに?」
「逃げなかったのか?」
俺が問うと、デュオは頬を少し紅くして、「だってよ。」と下を向いた。
「だって?」
「だって昨日言ったし。俺、もう逃げねえって。」
確かに、もう逃げないから離して、と聞いた気がする。もちろん離しはしなかったわけなのだが。
「・・・すまない、寝ぼけていた。明日までは休暇だ。」
「そ?じゃ、飯食おう、飯!俺腹減っちゃったよ!」

キッチンへ向かうデュオの背中を見ながら、平和になったものだ、と感心する。
椅子に座って、デュオが出す料理を見つめ、微笑む。



二人での食事がこんなに美味いとは思いもしなかった。



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