macross


熱烈なキスは体を溶かした。
幾度も口付けられ、自分もそれに応じる。お互い呪文のように『愛してる』をリピートしながら。
結っていた髪を解かれて、あの時よりは大きくなったベッドに二人してなだれ込む。感じる体の重さが嬉しくて涙が出た。

ミハエルが生きて帰ってきた。

宇宙空間で、生身で放り出されたと思っていた彼は、船体の内部に引っかかっていたという。気絶していたためか、低酸素の状況でも何とか脳に障害は起きなかった。腹の傷は、偶然見つけた新統合軍のパイロットが病院に連れて行ってくれたおかげで、何とか早急に手当てができた。本人の強靭な遺伝子が死ぬことにストップをかけたのだった。
長距離フォールドを終えて、グレイス・オコナーと・・・ギャラクシーの戦いを経てミハエルの体は完治した。それからリハビリを一年続けて、今日SMSに復帰した。
 俺は新統合軍に入っていたが、それも昨日辞表を提出して、惜しまれながらやはりこのSMSに復隊した。
オズマ隊長は呆れながら「このひよっこが!鍛えなおしてやる!」と頭を掴み、ボビー大尉は「これでみんな元通りかしらね?ギリアムが居ないのが寂しいけれど・・・でも、ブレラちゃんも入隊したし、賑やかになるわねぇ。」と笑った。

 先ほどまで復帰・復隊・歓迎会という何とも微妙な飲み会を娘々でしていた。
 そこにはシェリルの顔もランカの顔もあって、二人の曲のカラオケが流され、陽気に隊員が歌っていたのを、会の間ずっと機嫌が良かったシェリルがマイクを奪い『あたしの歌を聴けー!』と騒ぎ出したのでミハエルと一緒に逃げ出してきた。
 娘々を出る時に隊長が『お前らなんぞ二人一部屋で十分だ』とSMSの宿舎のカギを投げて寄越したので、『酔いましたから帰ります』と隊長に頭を下げて、ミハエルと共に帰路についたのだった。

会うのは一年ぶりだった。

前に見たときは、ミハエルはベッドの上で、やっと口を開けるくらいだった。それからは会いに行っても『リハビリがあるから』と言われ、小隊を預かる自分もそう休暇が取れなかったし、六カ月にわたるバジュラの母性探索とかいうとんでもない任務まで渡されて、帰ってきたのがほんの一週間前だったのである。へとへとになって帰って来て、ミハエルから通信が入ったときは驚いた。内容にも驚いた。

『今すぐに統合軍を辞めて、俺と一緒にSMSに戻ってほしい』

真摯な表情で言われ、頷いてしまった。
辞表が受理されるまで時間がかかると言われたが、待ちます、とだけ答えて、事後処理と引き継ぎをこの一週間してきた。

触れる指先が温かい。
SMSの宿舎に帰る間中、俺もミハエルも口を開かなかった。でも繋いだ手だけはとても、温かかった。

******


ロビーを通って、宿舎に辿り着き、キーを開けて、そしてシャワーでも浴びようかと後ろを向いた瞬間に抱き締められた。
驚いて目を見開くと、今度はキスの雨。
でもこの行為が懐かしくて、愛おしくてそれを甘受した。
求められて、そんなに大きくない部屋だが、以前二人で住んでいたあの二段ベッドではない程度の広さの、そのベッドの上に縺れるように転がる。衣服の下に滑り込んだ手は、先ほど触れていた手と同じだとは思えないほど、ひんやりとしていた。

「・・・・ミハエル」

名前を呼ぶと、ミハエルは「愛してる」と口にした。それに返しながら、相手の服を脱がす。とにかくミハエルに触れていたかった。






大きな楔が何度も下腹部を行き来する。彼から伝う汗がポタリ、と肌に落ちて滑った。
無意識に足を広げて相手を深く誘いながら、腰を揺する。
腕を彼の首に回して頬にキスを落とすと、律動が深くなった。頭を掴む手は大きくて安心する。撫でられて、微笑むと胎内の彼がぐん、と大きくなった。

「ハァッ、つ、アルト」

耳元で吐息を吐きだされてどうにかなりそうで、彼の肌を辿った。
大きく抉られた腹は完治しているが、やはり傷跡は残っている。指でその傷跡を辿っていると、その手首を掴まれ、深く口付けられた。律動は深く、重くなっている。付いていけなくてくぐもった嬌声を上げる俺に、ミハエルは視線を合わせて緩やかに微笑んだ。

「中に、出していい?」

そんなことを聞かれるのは初めてだった。
マナーに長けたこの男はいつも生でやるなんてことをしなかったからだ。頷くと、途端に腰の動きが早くなった。
ズンズンと侵入する楔が、内壁をかき回すのを感覚で知る。その内壁は彼を包み込もうと躍起になっていた。

「ごめん、姫。とまんない。」

この男に本気で抱かれることもなかった。いつもセーブしていて、余裕の態度を崩さなかった。
爆発しそうなときに時間をずらして何人もの女の子とするのだと聞いた時は、驚いたものだ。

ク、という彼の息を確認した瞬間、中で彼が爆ぜた。ドクドクドク、と注がれる彼の原液にくらくらと目眩がした。気づけば自分も爆ぜていた。
ドクドクと液を出し切っても萎えないソレに恍惚を覚える。後ろにひっくり返されていつかのように再び貫かれ、耳元で『姫、もう一回』という声が聞こえた。
それに頷いて、『でもこれは嫌だ』とミハエルを振り向いたら、抱きあげられてシーツの波に押し倒された。
ぐるり、と回された体はミハエルの体を食んだまま再び先ほどの体制に戻った。
見つめる視線が合って、そのまま深く口づけた。




壊れても、いいから。



存在を刻み込んで。その、魂ごと。



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