GUNDAM
『どうぞお好きにしてください。(それだけが私の存在価値なのです)』
熱い塊が体の中に入ってきて、ティエリアは息を殊更ゆっくりを吐き出した。目の前の男の肩に手をかけ、「もっと」と強請り、首元に唇を当てると、抱いている男は咽だけでクッと笑って見せた。律動が早くなる。
小さな声を漏らしながら縋ってくるティエリアに、ロックオンは一旦律動を止め、自分の体の下にあるなだらかな腹を撫でた。焦らされたティエリアは体を熱くさせながら自分で誘うように動く。ロックオンはそれに苦笑した。
「―――・・・あなたは、何故そんなに」
余裕があるのか。言いかけたティエリアの言葉は、ロックオンの柔らかい舌に絡め取られ、熱い口腔の中に消えていった。ロックオンは情熱的にティエリアに口付けると、ティエリアの紅の瞳を覗き込んだ。再び、腹を撫でる。
「ティエリア。」
ゆっくりとした、その手のひらの感触にさえ堕ちていきそうなティエリアは、ロックオンの名を呼ぶ声で意識を浮上させる。
「―――・・・かなり、深いところまで入ってる。解るか?俺の全部、だ。」
強く打ち付けられてティエリアは仰け反る。―――あつい。ティエリアはそうだ、とも思った。
今この瞬間、ロックオン・ストラトス・・・ニール・ディランディという人間を余すことなく受け入れているのは自分なのだ、と。
耳元で洩れるロックオンの息にさえ感じて、ティエリアは彼を求めるために体を揺すった。―――・・・もっと求めて、壊して欲しい。自分と言う輪郭が形を失うまで。ロックオンの腕の中でぐちゃぐちゃになって、とけて、全部全部ロックオンのものになってしまえばいい。全部、全部あげるから、
嘆願にも等しいティエリアの求めをロックオンは甘受した。
底が抜けるような、堕ちていく感覚が体中に広がって、気持ちがいい。
ずくずくと打ち付ける彼の男性器に染め上げられる。
苦しげな顔をして律動を繰り返すロックオンの顔に、ティエリアは揺さぶられながら指を這わした。ロックオンはそれに気付くと、その手を取って手の甲に口付けを落とす。
「あなたの、」
「うん。」
律動は止めずに、ロックオンはティエリアの声に返した。ティエリアの白い体にぽたぽた、とロックオンの汗が飛び散る。
限界は直ぐそこだった。
ティエリアは微笑みながら汗が滴るロックオンの前髪をかきあげた。
「―――・・・あなたの、その瞳がすき、だ。」
驚きのあまりロックオンは腰の動きを忘れて固まる。しかし、二度頭を左右に振ると、ティエリアの額に自分の額を呆れたように笑った後、くっつけた。どくん、と脈打つロックオン自身にティエリアは顔を赤らめる。
「お前、それは反則だ。」
唇で唇を塞いで、律動を更に早めるロックオンについていきながら、ティエリアはゆるやかに瞳を閉じた。
熱い塊に体中を支配されながら、「このまま死んでもかまわない」とすら思う。きっととても幸せな最期が迎えられる。
彼とのセックスは甘やかで。甘すぎてティエリアにはもの足りない節があった。
限界が直ぐ隣にあるのに、焦らされるのは好きではない。
もっとぐちゃぐちゃにされたい。前後左右が無くなるあの感覚が愛しい。
ティエリアは目の前の男の髪に手を伸ばす。くるん、と巻いているそれをいじりながらロックオンの耳元に唇を寄せる。
「 」
動きが止まったロックオンの顔を覗き込むと、彼は垂れた前髪を右手でグッとかきあげた。
そのまま檻に囲まれるように伸びた腕に、ティエリアは小さく喘ぎながら男の首に腕をまわす。見上げたロックオンの顔は、獰猛さを孕んでティエリアを見た。
目元を赤くさせて、ティエリアが懇願の声を上げると、中に深く入っていたものが更に質量を増してそれにティエリアは宇宙空間に居るような感覚を味わう。
これだ、と認識できたのはそれが最後で、それからはよく解らなくなるくらいティエリアはぐちゃぐちゃにされた。
気付いたときにはシーツは海のようにくしゃくしゃで、ロックオンが咽で小さく呻りながら最初の絶頂に達していた。
END
BLOGから。
*****
【2期の#8を見て思いついたギャグ小説。】
きらきらーという効果音が似つかわしい目をしてスメラギ・李・ノリエガは真っ赤なドレスをぴらぴらぴらと揺らした。
目を合わせたくなくて、その横を向くと今度はミレイナがキラキラしたコスメを持ち、ニコニコしながら首を傾げる。
直視したくなくて更に横に視線を逸らすと、無表情の刹那がピンヒールと網タイツ(しかもガーター仕様)をぷーらぷらと揺らした。
人事だと思って!
ティエリアは内心泣きたくなった。自分で言い出したこととは言え、こんな目に遭うことになろうとは・・・・!
あぁロックオン、私は、私はあんなあられもない姿を貴方以外の人間に晒すことになりそうです。肌は貴方以外には触れさせたくなかったのですが。こんな私でも許してくれますか・・・?あは、あは、あははははははははは・・・ははっ・・・は・・・
万死に値する!
悲劇のヒロインよろしく床に崩れ落ちたティエリアの腕を気の毒そうにアレルヤがガッチリと掴む。
ティエリアは途端に大声をあげた。
「離せ!アレルヤ・ハプティズム!くそ、お前他人事だと思って・・・私はあんなものは着ない、着るならお前が着ろ!ああ問題ない、なぜなら貴様の方が胸があるのだからな!」
「何を言ってるのか解らないよティエリア!」
「観念しろ。」
刹那の言葉に泣きたくなる。何故何故何故。もっと普通の服とかだってあるはずだ。なんであんな露出をしなくてはならない。絶対他のだってあるはずだ、とティエリアはノリエガをキッとにらみつけた。
ノリエガは一瞬ニッと笑って、部屋に置いてあった全員の集合写真を指差す。
「ティエリア、きっとロックオンだって見たいって言うわよ。」
その言葉に周囲は心の中で「上手い」と思った。
ティエリアはその言葉にピクリと反応して、自分の胸に手を当てた。ガーターと網タイツ、ピンヒールを持っていた刹那は、ティエリアの行動を「あ、可愛い」と内心思った。
ティエリア・アーデは床と相談を始める。
そういえば、彼の前で女の子の格好をあまりしたことは無い。あると言えば、どこぞの学校のセーラー服とやらを着たきりだった。
そもそも女という意識が低かったために、恥ずかしくて着れなかったのだ。今のように女に近い体でもなかったし・・・でもあのセーラー服を着たとき、彼はとても嬉しそうにしてくれたな・・・・と、ティエリアは思案してから肩の力を抜いた。
今回の任務も、彼の仇をとるためと、彼の望んだ世界を実現するために自分から志願したんじゃないか。ガンダムマイスターは全員が男だと知れているから、見た目からして女の格好をするのは意味のあることかもしれない。むむむむ。
床と対話をするティエリアを見て、ティエリア以外の全員は「ちょろいな」と思った。「はい落ちた」とも。
しゅんとした猫さんよろしくおとなしくなったティエリアを見て、女性陣がとった行動は早かった。
ノリエガは笑顔でアレルヤに部屋の外に行くよう顎で指示し、(その隣でソーマが苦笑していたが)ミレイナはその間に風呂場に走った。
果てしない床との対話で気づかないティエリアの横で、最後までノリエガと戦った刹那は、頭にたんこぶを三つこさえて、部屋から叩き出された。
彼はノリエガの所業を「まるで鬼神が降臨したかと思った」と震えながら語った。
多目的室の扉にへばり付き、紙コップを手に中の様子を伺っているアレルヤと刹那をライル・ディランディことロックオン・ストラトスが発見したのは、彼がちょうどコーヒーを飲みに食堂に行こうとしていた午後四時くらいだった。
はて。とライルは首を傾げる。二人の不可解な行動にだ。今日は何かの日だったか?確か教官殿が潜入調査を行う日じゃなかったか?と。
ミッションは既におりているから、この二人の行動に眉を歪める。・・・大丈夫か?と。
近づいて、「何してんの?」と扉に張り付く二人に後ろから声を掛けると、その二人は同時に「しー!」と人差し指を口に当てた。
部屋の中は至って静かなのだが、二人の表情が真剣なことがライルに疑問を抱かせる。
自分たちの真ん中で口に手を当てて考え込んでしまったライルを横に、刹那とアレルヤは視線だけで会話をした。
『刹那、どうやって追っ払おうか。』
『先ほどのノリエガのようにやればいい。』
『もっと穏便にいけない?』
『ティエリアの至高の姿を全てもっていかれていいのか?』
『・・・・万死。』
『だろう?』
『じゃあ、さりげなくなんでもないって言って、最悪の事態だけは免れよう。刹那、携帯端末持ってる?』
『持ってない。』
『僕持ってるんだ、だから刹那は彼を食堂に連れて行って。写真は僕が死ぬほど撮るから。』
『・・・しかたない、だがそのメモリーは』
『解ってる。全部コピーしたらあげる。』
『交渉成立、だな。』
こっくり、と頷きあった二人に首を捻ったライルだったが、刹那が「ロックオン食堂に」と言いかけたところで部屋の中から叫び声が上がった。
刹那とアレルヤは再びペタッと扉に張り付く。出来上がったのなら生で見たい。はあはあしたい。
二人はこの上も無い男の性に勝てずに自分たちの脳細胞をフルに活用させてティエリアの素晴らしく綺麗な足を想像した。ゴクリ、と咽が鳴ったのは仕方が無いことだろう。
二人の行動に更なる不可解さを感じたライルだったが、心なしか刹那が嬉しそうなので「何だろう?」と思いつつも扉に耳をつけたら、いきなり扉が開いた。
両方に寄っていた刹那とアレルヤはそのまま硬い床に倒れたが、ライルも硬い床と衝突すると思ったが、何故かやわらかくて温かいものに包まれた。
顔を上げて目に入ったのは真っ赤なドレスと白い肌と豊満な胸で、ライルは「お、好み」と思った次の瞬間、自分が今どういう状態で彼女の上にいるのかを思い知った。
ライルは誰だか知らない美女を半ば押し倒した形になっていて、その左手はあろうことか彼女の豊かな右胸をむんずと掴んでいるのだ。
目を大きく開いて驚いているノリエガ。言葉もなく顔面蒼白なソーマ。刹那はライルを彼女から退かせるべく(何せ下半身はこれでもかと言うほど密着している)低姿勢のまま後ずさり、アレルヤは彼女の危ないショットを撮ろうとポケットから携帯端末を取り出した。
ミレイナは絶賛大爆笑中である。
シャッターが切られる音と、刹那が飛び上がるのと、下にいる女性がライルに平手を打つのは全くもって同時だった。
「貴様!万死に値する!」
パーン、とまるで花火が散ったような音がして、ライルは下の人物が自身の教官殿だと気づいたときには、横から加わった衝撃で彼女の上から蹴飛ばされていた。
ドゴォと蹴り倒され部屋の隅まで飛ばされたライルは、ピロリーン♪という携帯端末を握ったアレルヤがティエリアのその姿を満足げに撮影する音がチラチラした頭の隅に聞こえたのだった。
あーめん。
END.
ティエリアをふんだんに撮ったアレルヤの携帯端末はその後ティエリアによって真っ二つになったそうな。
*****
【2期#9の予告編を見て。】
ザァ―――と流れる水を見つめながら、ティエリアはふっと溜め息を吐いた。
腰まで伸びた髪の毛がうっとおしいと心底思う。
女である自分など4年前に棄ててきたのに。
――――否。
4年前に死んだのだ。愛する、彼が逝った、そのときに。
今成熟したところでどうなると言うのか。
彼が居ない今になって、一体どんな意味があると言うのだろう。
ティエリアは伸びた髪の毛をむんず、と掴む。
耳元で、あの男の声がよぎる。
『あーあ。せっかく綺麗なんだ、もっと外見に興味持とうな、ティエリア。どれ、お兄さんが切ってあげるから、そこ座りなさい。』
掴んだ髪の毛と真横にざっくりとナイフをいれる。ハラハラと落ちる自分の髪が排水口に向かって水と一緒に吸い込まれるのをティエリアは見つめた。
切った手元の髪はそのままダストボックスへ。
鏡にうつるのはいつもの自分。ガンダムマイスターである『男の』ティエリア・アーデだ。ティエリアは鏡の向こうの自分の瞳を見返した。
「そう、これでいい。」
ゆうるりと口角を上げたティエリアは、静かに瞳を閉じた。
頬を伝うのは、はたして。
END
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【#10のこうなれば面白そう、な妄想小説。】
『もういっそネーナもCBに入っちゃえばいいのに~仲良くなれると思うよ?刹那とかティエリアとかと。』で思いついたくだらないギャグ。
「なんでお前がここに居る!」
食堂に入ったティエリアは秀麗な眉をぐいっとへの字に曲げた。床に転がる酒瓶をそのままに、テーブルに座ってヘラヘラと笑うネーナ・トリニティがふらふらと手を振る。
「あによう!わたしがそれすたるベーいんぐにはいったららめらっていうろ!」
・・・完全に目を据わらせてドンッとテーブルを叩いた彼女に、ティエリアは一歩前に踏み出した。彼女がどうしてここにいるのかはわからないが、彼女の目の前に座っていじいじしている彼女なら、どうしてこうなったのかが解るはずだ。
「スメラギ・リ・ノリエガ!どうしてネーナ・トリニティがここにいるのか説明しろ!」
稀代の戦術予報士はぐっしゃーと顔を顰めると泣き出した。
「ティエたんがあたしのこといらないっていう~」
テーブルに顔を埋めてバタバタと、まるで幼児のように足をばたつかせる戦術予報士にティエリアはパニックに陥った。
「はぁ!?」
何のことだ!?僕はそこまで言っただろうか、と考えて首を振る。自分の言い方がきついのは解ってはいたつもりだが、まさかそこまで言ってはいないはずだ。いや、そんなことよりなにかフォローを入れるべきなのだろうか。ここでこの戦術予報士がいなくなられては困る。それは困る。生死に関わる。もはやロックオンの敵討ちとか、世界の戦争撲滅とかそんなことを考えられなくなる。それは困る。自分はロックオンの・・・いや、今のロックオンではなく、以前のロックオンであって、アレはロックオンではないっていうか、
「ティエたん?」
ぐるぐると思考の淵に落ちていたティエリアの後ろで声がした。青い制服、セツナ・F・セイエイだ。聞かれていただとッ何たる失態!万死に値する!
あああ・・・と挫けたティエリアをよそに、セツナはネーナを見た。
「何でお前がここにいる。」
ネーナはゆっくりと焼酎瓶を傾けてから口元を袖で拭った。なんというか・・・漢らしいな。
「あろねー。もうあたしあそこいやだからぁ。ここにくるしからいとおもってぇ。」
面倒だ、セツナはゆっくりと話すネーナにそう感想を抱いた。ティエリアは聞いているのか聞いていないのか「ティエたん」という言葉を繰り返している。
「あそこ、とは?」
「おじょうさまのところー。でも、ににーずを殺した奴もそこで働いててぇ。やあーってたれるかってーの!」
「誰だ?」
「髭面赤髪~・・・あっはシャンクスじゃん!」
ケタケタ笑うネーナに、セツナが詰め寄る。ティエリアが「赤髪、髭面?」と繰り返しながら見事な復活を遂げた。
「「おい、そのおじょーさまとは誰のことだ!!」」
二人してネーナに詰め寄ると、ネーナはにぃっこりと笑って、これ飲んだらいいよ♪とやたら度数の高い酒瓶をティエリアの口に突っ込んだ。
それを見ていたスメラギが今まで沈んでたの!?本当に!?という勢いで起き上がって「楽しそうー!」とセツナに詰め寄った挙句、落ちていた酒瓶を丸々一つ、恐怖で顔を青くしたセツナの口に無情にも突っ込んだのだった。
後にこの騒動を止めに入った二代目ロックオン・ストラトスによれば、食堂は阿鼻叫喚状態、ティエリアは「胸がどうした!そんなものはこの無重力下に於いては必要ない!必要ない!」と叫びながら机を壊し、セツナは「俺がガンダムだー」と意味不明なことを口走りながら食堂の床の上でY字バランスのまま高速で回転し、ネーナ・テリニティは「お化けよー!お化けがいるわー!」と叫んだ挙句一気飲みに突入したという。
お酒に慣れているスメラギは早々に食堂を後にしたのか、自室の布団の中で丸くなっているところをアレルヤ・ハプティズムが発見、全員にイアンから反省文の提出を言い渡されたそうである。
END
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【貴方の音をください。(水よりも、酸素よりも)】
耳元であの男の声がする。
怒鳴り声 呆れ声 笑い、声。
耳元であの男の声がする。
歌う声 冗談を言う声 私の好きな温かい声。
耳元であの男の声がする。
情熱的な囁き 柔らかなシーツを擦る音。肌から伝わる鼓動。熱く打たれるあの、
彼の全て。
見上げた顔にかかる鳶色の髪。どこまでも許容するスティールブルーの瞳。
彼だけの為にここまで生きた。
彼だけの為にここまで体を作り変えた。それなのに、
「いつまで私はあなたを待てばいいのですか。」
もう、解らない。ライルをあなたの名前で呼んでしまった。
あなたの居場所がなくなってしまった。
「私は待つと決めていたのに。」
はやくかえってきて、私に与えてほしい。
「ニール。」
貴方の音が、欲しい。
END.
*****
【貴方のそういうところが嫌いなのです。】
「貴方のことが好きなのです、と僕が言ったとしたら、貴方はどうしますか?」
出撃の後、寛いでいた談話室で紅茶を飲みながらティエリア・アーデは真剣な顔でこう呟いた。
呼吸が止まったかと思った。
「俺は、」
言いかけて、喉が焼けつくかと思った。だってそんな、考えもしなかった。言おうとした俺の言葉は、しかしティエリアにさえぎられた。―――控え目な、苦笑でもって。
「いいんです。僕が想っていたいだけだ。貴方が僕に応じる必要はない。」
ただ知ってもらいたかっただけです、とティエリアは眉を歪めて笑った。
だがそれはとても悲しいことだと俺は知っている。想いを伝えるだけで人は満足なんてできない。少なからず、その先を求めてしまうからだ。
そしてティエリアの場合は自分を殺してでも“男”であろうとする。そんなのは認められない、第一俺の意思は無視か。
「じゃあ、俺もお前に知ってもらいたい。」
何でもない事のように言って、俺は雑誌を見下ろした。
ティエリアがこちらを見ているのが空気でわかる。
「俺は、ティエリア・アーデを愛しく思っている。だが残念だなぁ、相手の気持ちが全然解らないときた。困ったもんだね、全く。」
大仰に溜息をついてみせ、パラリとページをめくった。
向いのソファから立ち上がる気配がして、口角を上げる。そして小さく空気が動いたのを感じたあとに急にかかった肩の重みに内心で笑った。
「知ってたか?俺は当の昔にお前に囚われてたってこと。」
言ったら、ティエリアの顔は驚きに歪められて、己の肩に彼の額が置かれた。
「・・・知りません、そんなこと。
―――貴方は時々すごく、意地悪で、嫌いだ。」
あぁ、大概俺も末期だ。可愛くないのに、可愛いと思うなんて!
END.
******
『何回目?』
ニール・ディランディ氏の最近の目標は、気が強くてツンデレの、でもその実寂しがり屋なティエリア・アーデさんを“れっきとした女の子”にすることである。
なぜならこのティエリア・アーデさんは人間が作り出した妄想生物『天使』のように性別が無かったかだれある。
いつ造られたか定かではないが、彼・彼女?はいつも男と女の両方のラインを少しづつ行き交い、性別を決めてしまって性分化するはずだった。(ティエリア談)
ヴェーダが存在していた時はガンダムマイスターの一人、“男”として発達していた体は、しかしヴェーダを失ってその方向性を失い、性分化が止まってしまう。
そのまま男でも良かったはずなのだが、そうは問屋が卸さなかった。ここでティエリア・アーデにとってイレギュラーが発生した。彼・彼女?は、ヴェーダに見捨てられ、ニール・ディランディ氏に助けられることになって彼自身に惹かれてしまったのだ。
―――奇しくもそれが、遅い女性化への第一歩になってしまった。
「何か、こうしてると本当俺って犯罪者だな。」
あむあむ、とティエリアが自身の男根を口に咥えて上下する様を上から見ていたロックオンは、溜息混じりにそう呟いた。
瞳にいっぱい涙を溜めたティエリアが男根を咥えながらロックオンの瞳を見上げる。
「―――僕じゃ、不満ですか?」
サラリ、と肩を滑った髪の毛に手を伸ばす。その髪の毛が先ほどティエリアが部屋に来た時よりも長くなっているのを見て満足げに口角を上げる。
「いや、大満足だ。」
目だけで笑ったティエリアは再びロックオンの男根を咥えようとしたが、ロックオンはティエリアの頭を自身から外した。
「ッ、な」
潤んだ瞳で抗議の言葉を言われそうになるが、ロックオンは口元だけで笑った。太く屹立したそれを、自身の手で強くこすりあげる。
ビチャッ、と音を立てて断続的に吐き出される白い体液がティエリアの秀麗な顔と髪に降りかかった。
「・・・あ、」
呆然としてそれを受け止めたティエリアは、ねばついたそれを中指と人差し指で拭ってペロリ、と舐めた。
「・・・美味しい?」
「貴方の匂いがする。」
「面白い見解だな。普通不味い!とかいうだろ?」
「味はたいして気にならない。」
「ソレ、俺の遺伝子の塊だ。まぁ空気に触れた時点で全部が死滅してるだろうがな。」
「・・・もったいない。死滅するなら何故口に出してくれなかったんですか。」
「様式美っての、一回やってみたかったの。しかしちと汚れたな。」
「貴方に汚されるのなら構いません。」
「本気にするぜ?」
「むしろ汚されたい。お願いです、もっとしてもいいですか?」
「だめ。今日はここまでだ。」
ロックオンが言ったとたんにティエリアは眉を寄せた。そのティエリアに苦笑して、ロックオンはティエリアの体を抱き上げて自分の膝の上に乗せる。
「もっと食べた方がいいんじゃないか?ティエリア。」
「もっと欲しい、ロックオン。」
「だ~め。口がさびしいならキスしよう。」
「・・・んんっ、」
塞がれた唇の隙間から舌が入り込んで二人は没頭してしまう。そのままロックオンはベッドにティエリアを押し倒した。
頬を唾液が伝っても終わらない口づけの最中で、ロックオンはティエリアの服を剥ぐ。
各段にやわらかくなった体に触れながらロックオンは唇をずらした。
ズクズクと打ちつけられる凶器のような体を受け入れて、ベッドの波間に揺れる。核心部分をわざとずらした求めに、いい加減ティエリアはもどかしくなってきた。
体はもう完全に女で、ふっくらとした胸をスナイパーの指が卑猥に揉むのを見つめる。
「・・・ティエリア、いいのか?濡れてきた。」
汗を滴らせながら笑う男の声に腹が立つ。お願いだからいかせて欲しいのだと腰を揺らしたら、彼の内に眠る獰猛な獣が牙を剥いた。
律動と、男の呼吸が速くなる。
ついていけなくなって、制止の声を上げるが聞き届けてもらえない。
腰を乱暴につかまれて、ひっくり返され、後ろから突かれると、深いやら気持ちいいやらでもう何が何だかわからなくなって、ただ白いシーツに爪を立てた。
白い愛液が太ももを伝ってシーツを汚す。嬌声を上げながら相手を求めると、耳元で声がする。
「どっちがいい?」
強請るのはいつも片方しかないというのに、この男は意地悪である。確証が欲しいのはこの男のいう『様式美』とやらなのか、ただ単に臆病なだけなのか。きっと後者なんだろう。
震える指で彼を求めて、そしていっぱいいっぱいの声で誘う。
「―――…出して。」
男を見た瞬間、抱き上げられて、繋がったまま口をふさがれた。空気を求めながら下から突き上げられるのはまるで殺されているみたいだと、いつも思う。
ロックオンの大きな掌がティエリアの長い髪を乱暴に掴んだ瞬間に体内でロックオンがはぜた。
「んああ!」
息もつかないまま再びシーツの海に沈められて抜かないうちに激しい律動が始まる。
ジュプジュプ、と繋がった箇所からあふれ出るロックオンの原液がもったいなくて仕方がない。
「余所見しない。俺のことを考えろ。」
言われた言葉に、ティエリアは少しだけ笑うと、その首に腕をまわした。
何回目?
セックスの回数などいちいち覚えていられない。強いて言うなら、俺が私になるまで、なんだろうな。
END.
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