アネモネ 第五章
シャルル・ジ・ブリタニアがいなくなった皇帝宮の、その玉座の上でシュナイゼルは息を吐いた。自身を見上げる騎士たちは、その顔に喜色を浮かべ、微笑んでいる。
隣を見ると、ルルーシュが真剣な顔で頷いた。
「陛下からの皇帝位の譲位はなされた。私が、第99代目ブリタニア帝国皇帝になる。」
皇太子の期間をすっ飛ばしての即位だ。
これまでのブリタニア帝国では前代未聞の出来事に、見上げる騎士たちは喜色を浮かべた顔を引き締め、グッと拳を握った。
「私の皇帝即位式と、ルルーシュの立后式、エルモアの皇太子の立太子宣言と、グランストンナイツの選定が急がれるが、ルルーシュ。」
「はい陛下。」
「先にあたることはあるよね、当然。」
「即位式の前にすることは沢山あります。
1つ目はブリタニア帝国での深刻な穀物問題。
原因は分かりきっておりますが、フリューゲル公爵を始めとする裏切り者への裁判を急がせます。
そして、わが国有数の穀倉地帯であるシモーネ領への帝国民による悪感情への対処、貴族院を通して各領地に麦を配分することから始めましょう。
麦は本当に価格が高騰しているので、当分は専売業者が高値で売らぬよう、法改正をしなければいけません。
転売する者への罰則も然りです。抜け穴という抜け穴を塞ぎ、民に麦が届く仕組みを構築します。」
「まずは食料問題からだね。」
「麦は主食ですので、このまま行けば冬を越せない民が出てきます。
特にシモーネ領の民は、作るだけ麦を作らされて、自分達の口に麦が入らない程フリューゲル公爵より搾取されています。
この現状をシモーネ領以外の帝国民に知って貰わなくてはいけません。
今、世間ではシモーネ領が麦を出しそびれているから自分達は飢えていると考えている帝国民がほとんどです。
逆にシモーネ領の民は、それこそ休む間もなく血の汗が滲むほど麦を作らさせて、自分達の麦をほとんど値がつかないような金額で卸ていく他領の民に憎しみと不快感、不信感を持っています。
農耕にはもちろんお金がかかるのに、その分は借金という形で次々と貸し付けられ、増えた耕作地の分も麦を作らされて。
借金が嵩む一方なのに、麦は安く買い叩かれる。悪感情が育つのは当前です。
正しい情報をもってして、民と民がぶつかるシナリオだけは回避しなければいけません。」
「そうだね。スピードをもって対応しよう。
ルルーシュに、宰相府を暫定的に任せたい。私は、帝国裁判所に令を出して彼らの裁判を急がせる。
事実確認は貴族院に依頼し、情報の開示は民間にまかせる。
シモーネ領については、保護したクリスティーナ嬢が協力してくれるだろう。」
「ブリタニアタイムズに声をかければ、あそこは大手ですから、他の会社とも連携して正しい情報を書いてもらえます。国家の一大ニュースとして、閲覧料を無料にすれば若い世代もデバイスで読んでくれるでしょう。」
ルルーシュは頷いた。
「次はエリアです。
エリアの開放か続行かをエリアの住民に投票で選ばせます。投票はその国のエリアに住む18歳以上で、ブリタニア人は含みません。
投票の結果、続行を希望する国があればブリタニア帝国連合諸国とし、エリア続行を希望しない国は、暫定政権を認め一定期間支援します。
ブリタニアが破壊するまでは元は平和な国でしたでしょうから、元に戻せるだけの基盤を作ります。
私たちの即位式は後に回せますが、日本を含め一部エリアは悲惨な状況の所もあるので、早急な対応が必要です。
財源は帝国総督府がその国のお金を使用して統治していたのですから、吐いて捨てるほど持っていると思います。‥‥着服していなければね。」
「着服していたら、もちろん?」
「総督府の人間全員に遡って返済していただく。民のお金であって、皇族や貴族がどうにかしていいお金ではないのですから。どんな形でも返済していただくわ。」
「では、第一の課題は私たちの手足となってくれる人材の確保だ」
「その通りです。それについては、私なりに案があります。」
「どうするのかな?」
「当座急いで決めないといけないのは陛下のラウンズです。騎士団に声をかけ、篩にかけます。」
「どうやって?」
「マオに協力してもらうのです。」
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