白い花
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6月のある日。
悠紀「はぁ~……」
みどり「悠紀、もう53回目だよ、ため息。」
悠紀「だって、本当は今ごろ……はぁ」
みどり「54回目。気持ちは分かるけど……あんまりため息ばっかりついてると、幸せが逃げるっていうでしょ」
悠紀「うん、わかってる。石神さんの職業を考えれば仕方ないよ。延期も残念だけど、それより、石神さんのことが心配だなぁ……はぁ」
みどり「55回目……」
悠紀(石神さん、早く……無事に帰ってきて…………)
悠紀は、テーブルの結婚式場のパンフレットの上に突っ伏した。
みどり「悠紀…………」
━━━━あれは、昨年の夏だった。
私は石神さんの部屋でくつろいでいた。
石神さんは、私の隣でテレビを見ている。
“生前、親交のあった大勢の方が訪れて……”
著名人の葬儀の様子だ。
祭壇は様々な白い花で埋め尽くされている。
石神「白い花を見ると悲しくなりますね。」
悠紀「えっ?」
私は その時、ブライダル雑誌を見ていたところで、ちょうど そのページは、ブーケの特集だった。
実は真っ白な花を集めたブーケに心を惹かれていたのだけれど…
石神「特に白いユリは両親の…………」
悠紀「……………」
石神「……………!」
ふと、雑誌に目を向け固まる石神さん。
石神「いや、今のは気にしないで下さい。貴女の好きな花にすればいい。」
悠紀「でも…えっと…あ!これなんか素敵ですね!」
ちょっと気まずい空気の中、私が指差したのは、『ガーデニア』という八重咲きのクチナシだった。
石神「バラのように華やかですね」
悠紀「ちょうど式を挙げる6月に咲く花で、すごく甘い香りがするんですよ」
石神「そうですか…」
悠紀「そういえば小学生の頃、友達が教室に飾る為にクチナシの花を持ってきたことがあって。
私、立派な花と甘い香りに つい夢中になって、授業が終わる度に近寄って胸いっぱいに嗅いでたら……
お昼過ぎには花が茶色く萎れてしまったんです。」
石神「早いですね?」
悠紀「みんなに、『悠紀に全部吸い取られて枯れちゃった!』って言われました」
石神「フフッ…まさかとは思うが、悠紀らしい話ですね」
悠紀「え~!石神さんまで…ふふっ」
ところが、石神さんは年末、仕事で海外に行ってしまった。
以来、ほとんど連絡が取れない。
どうしても石神さんでないと、という案件だから。
「こちらは大丈夫ですから」と笑顔で送り出したものの…………
6月の結婚式の日が近付いても、戻るメドは立たず…
結局、式場をキャンセルすることになった。
石神さん、帰って来るよね?
きっと大丈夫だよね?
……無事に結婚できても、これからも こんな想いをするのだろう。
もちろん、覚悟はしていたつもりだ。
それでも、そばに石神さんがいない寂しさと不安に、心が潰れそうになる。
このまま結婚して大丈夫なのかな………
・
・
・
ちょっと待った!
私はガバッと顔を上げた。
みどり「ちょっと、悠紀?大丈夫?……もしかして、マリッジブルー?」
悠紀「はぁ~……」
みどり「悠紀、もう53回目だよ、ため息。」
悠紀「だって、本当は今ごろ……はぁ」
みどり「54回目。気持ちは分かるけど……あんまりため息ばっかりついてると、幸せが逃げるっていうでしょ」
悠紀「うん、わかってる。石神さんの職業を考えれば仕方ないよ。延期も残念だけど、それより、石神さんのことが心配だなぁ……はぁ」
みどり「55回目……」
悠紀(石神さん、早く……無事に帰ってきて…………)
悠紀は、テーブルの結婚式場のパンフレットの上に突っ伏した。
みどり「悠紀…………」
━━━━あれは、昨年の夏だった。
私は石神さんの部屋でくつろいでいた。
石神さんは、私の隣でテレビを見ている。
“生前、親交のあった大勢の方が訪れて……”
著名人の葬儀の様子だ。
祭壇は様々な白い花で埋め尽くされている。
石神「白い花を見ると悲しくなりますね。」
悠紀「えっ?」
私は その時、ブライダル雑誌を見ていたところで、ちょうど そのページは、ブーケの特集だった。
実は真っ白な花を集めたブーケに心を惹かれていたのだけれど…
石神「特に白いユリは両親の…………」
悠紀「……………」
石神「……………!」
ふと、雑誌に目を向け固まる石神さん。
石神「いや、今のは気にしないで下さい。貴女の好きな花にすればいい。」
悠紀「でも…えっと…あ!これなんか素敵ですね!」
ちょっと気まずい空気の中、私が指差したのは、『ガーデニア』という八重咲きのクチナシだった。
石神「バラのように華やかですね」
悠紀「ちょうど式を挙げる6月に咲く花で、すごく甘い香りがするんですよ」
石神「そうですか…」
悠紀「そういえば小学生の頃、友達が教室に飾る為にクチナシの花を持ってきたことがあって。
私、立派な花と甘い香りに つい夢中になって、授業が終わる度に近寄って胸いっぱいに嗅いでたら……
お昼過ぎには花が茶色く萎れてしまったんです。」
石神「早いですね?」
悠紀「みんなに、『悠紀に全部吸い取られて枯れちゃった!』って言われました」
石神「フフッ…まさかとは思うが、悠紀らしい話ですね」
悠紀「え~!石神さんまで…ふふっ」
ところが、石神さんは年末、仕事で海外に行ってしまった。
以来、ほとんど連絡が取れない。
どうしても石神さんでないと、という案件だから。
「こちらは大丈夫ですから」と笑顔で送り出したものの…………
6月の結婚式の日が近付いても、戻るメドは立たず…
結局、式場をキャンセルすることになった。
石神さん、帰って来るよね?
きっと大丈夫だよね?
……無事に結婚できても、これからも こんな想いをするのだろう。
もちろん、覚悟はしていたつもりだ。
それでも、そばに石神さんがいない寂しさと不安に、心が潰れそうになる。
このまま結婚して大丈夫なのかな………
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・
ちょっと待った!
私はガバッと顔を上げた。
みどり「ちょっと、悠紀?大丈夫?……もしかして、マリッジブルー?」
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