お日柄
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少しして、石神さんが戻ってきた。
悠紀『石神さん………?』
車に乗り込んだ その表情は穏やかで…少し微笑んでいるようにも見える。
悠紀『あの…大丈夫なんですか?』
石神「少し下がります。」
悠紀『???』
石神さんは、片手を助手席のシートにかけ、後ろを見ながら車を後退させた。
幅ギリギリの曲がり道でも、木の枝にも当たらずに、スルスルと下がっていく。
しばらく下がって…
私たちの車は、ようやく農家さんの駐車スペースらしき小さな空き地に待避することができた。
少し待っていると、あのトラックがゆっくりと進んで来る。
“ どうも! ”
運転手の若い男性は片手を上げ、にこやかに挨拶すると、すんなり横を通り過ぎて行った。
重そうな音をたてる荷台に載っているのは、家具。
そして、そこに結ばれた鮮やかな紅白のリボンが、ひらひらと風になびいている。
悠紀『あっ、婚礼家具!』
あのトラックは、婚礼家具を届ける途中だったのだ。
石神「あれを戻らせてしまったら、縁起が悪いでしょう?」
悠紀『確かに!でも、よく気付きましたね?』
石神「紅白のリボンが一瞬見えましたから。」
石神さんは、何でもないような顔で言った。
でも……
悠紀『石神さん、優しいです!』
石神「えっ、私が?」
悠紀『だって、全然知らない人の婚礼家具だし、運転手さんが黙っていれば、途中で後戻りしてもわからないのに…』
普段迷信を信じない石神さんの口から、『縁起』という言葉が出てきた事にも驚いたけど…
石神「リボンを見た瞬間、家具を受け取った人たちの幸せも見た気がしました。」
石神さんの、穏やかで優しい笑顔。
石神「貴女も、きっと同じ事をしたでしょう?」
なんだか、私も幸せな気持ちで満たされてくる。
そうだよね。
石神さんは、みんなの日々の幸せを守るために、公安の仕事をしているのだから…
冷たいロボットみたいな人なんかじゃない。
車は、細く長い道を抜け…
周りの景色が一気に開けた。
悠紀『あっ、海!』
眼下に広がる海は、キラキラと輝いている。
私も、いつか石神さんと…
本日は お日柄も良く━━━
━━ 結 ━━
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