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…ポトッ………ポトッ………ポトッ………
キッチンの方から、規則正しい音が聞こえる。
(………ん?)
見に行くと、止めた筈の水が蛇口で次々と水滴になり、シンクを叩いていた。
すぐに、強めに締めてみたけれど。
ポトッ………ポトッ………
止まらない。
(水漏れだ……)
さっそく大家さんに電話すると、明日の夕方に直して貰える事になった。
ポトッ………ポトッ………ポトッ………
『明日まで、このままか……結構水がもったいないかも。……そうだ!』
私はキッチンを見回し、目についた鍋をシンクに置いた。
ペチッ………ペチッ………ペチッ………
鍋に当たる水滴は、ちょっと間の抜けた音を立てる。
でも、これなら水を無駄にしないで済みそうだ。
『さぁ、レポート、仕上げなくちゃ』
私は、テーブルにノートと書きかけのレポートを広げ、取り掛かった。
……が。
ペチッ………ペチッ………
(う……気が散る…)
鳴り続ける音に、私のイライラが募る。
…と、その時。
♪~♪~♪~
携帯が鳴った。
(石神さんからだ!)
「悠紀さん…今、東京に戻りました。これから会いに行っても……構いませんか?」
『はいっ!もちろんです!』
石神さんはしばらく出張していて、会えるのは2ヶ月ぶりだ。
『やった~!』
私のイライラは、一気に吹き飛んだ。
“ピンポーン”
「悠紀さん……」
『石神さん!会いたかったです♪』
「……勉強中でしたか?」
「あ、はい。あと少しなんですけど、ちょっと詰まってて…」
「それなら、協力しましょう。…ん?」
ピチャッ……ピチャッ……
石神さんは、テーブルの上の本やノートを見た後、ふとキッチンに視線を移す。
鍋の水は少し溜まり、さっきとは違う音を立てている。
『キッチンの水が止まらなくて。でも明日直してもらいますから、大丈夫です。』
「あぁ、パッキンの劣化かも知れませんね。」
石神さんは、私の隣に座り、さっそく丁寧に教えてくれる。
「まず、こちらは………」
石神さんは現役学生の私よりも よく分かっていて…
(凄いなぁ…しかも、格好いいし……)
久しぶりに見る横顔は相変わらず端正で、つい、見とれてしまう。
「顔に何か付いてますか?」
『え?あっ、いいえ!』
(いけない。集中、集中…………)
…………チャプッ
(……………ん?)
「……つまり、………………ということです。」
……チャプッ………チャプッ………
(ダメだ。今度は水の音が気になる………)
チャプッ………チャプッ………
「………ここまで、分かりましたか?」
『………………………………………』
水の音を排除しようとすると、今度は石神さんの落ち着いた低音に意識が吸い込まれそうになる。
「……悠紀さん。」
『はっ、はい?』
「少し休憩しましょうか。」
石神さんは、静かに本を閉じた。
「先程から集中できていないようですから。」
『すみません……じゃあ私、紅茶淹れますね。』
私は、少し気まずく思いながら、いそいそとキッチンへ向かった。
チャプッ………チャプッ………
鍋の水は、ちょうど紅茶2杯分ぐらい溜まっている。
(このまま沸かしちゃおう。)
シンクから鍋を取り上げようとすると、不意に、背中にふわりと暖かさを感じた。
「悠紀が集中できないのは、コレのせいか?」
チャプッ………チャプッ………
後ろから石神さんに包み込まれて聞く声は、なんだか くすぐったい。
『ごめんなさい。せっかく石神さんが……』
「それとも……」
私の言葉を遮った声は、掠れていた。
『えっ?………あの……んっ……』
私は突然身体をくるりと後ろに向けられ、石神さんと向き合ったかと思うと、唇を奪われていた。
「……やっと…会えたから……なのか?」
啄むようなキスの合間に紡ぎ出される言葉は、切なく胸に響く。
「少なくとも、俺は…」
キスを止め、呟いた石神さん。
(どんな顔をしているのだろう?)
私がキスの間閉じていた目を開けると、顔を見せまいとするように、頭を石神さんの胸に押し付けられてしまった。
トク…トク…トク…トク…
速い鼓動。
顔を上げると、再び石神さんと唇が重なる。
今度は噛みつくように激しく。
「ハッ……悠紀………答え…は?」
『ん………ふっ…………私………』
答えたくても答えられないまま、私は甘い眩暈に堕ちていく。
トプン………トプン………トプン………
━━鍋の水は、溢れそうなところまで溜まっていた。
けれど
もう その音は、二人の耳には入らない。
ーーーーーENDーーーーー
キッチンの方から、規則正しい音が聞こえる。
(………ん?)
見に行くと、止めた筈の水が蛇口で次々と水滴になり、シンクを叩いていた。
すぐに、強めに締めてみたけれど。
ポトッ………ポトッ………
止まらない。
(水漏れだ……)
さっそく大家さんに電話すると、明日の夕方に直して貰える事になった。
ポトッ………ポトッ………ポトッ………
『明日まで、このままか……結構水がもったいないかも。……そうだ!』
私はキッチンを見回し、目についた鍋をシンクに置いた。
ペチッ………ペチッ………ペチッ………
鍋に当たる水滴は、ちょっと間の抜けた音を立てる。
でも、これなら水を無駄にしないで済みそうだ。
『さぁ、レポート、仕上げなくちゃ』
私は、テーブルにノートと書きかけのレポートを広げ、取り掛かった。
……が。
ペチッ………ペチッ………
(う……気が散る…)
鳴り続ける音に、私のイライラが募る。
…と、その時。
♪~♪~♪~
携帯が鳴った。
(石神さんからだ!)
「悠紀さん…今、東京に戻りました。これから会いに行っても……構いませんか?」
『はいっ!もちろんです!』
石神さんはしばらく出張していて、会えるのは2ヶ月ぶりだ。
『やった~!』
私のイライラは、一気に吹き飛んだ。
“ピンポーン”
「悠紀さん……」
『石神さん!会いたかったです♪』
「……勉強中でしたか?」
「あ、はい。あと少しなんですけど、ちょっと詰まってて…」
「それなら、協力しましょう。…ん?」
ピチャッ……ピチャッ……
石神さんは、テーブルの上の本やノートを見た後、ふとキッチンに視線を移す。
鍋の水は少し溜まり、さっきとは違う音を立てている。
『キッチンの水が止まらなくて。でも明日直してもらいますから、大丈夫です。』
「あぁ、パッキンの劣化かも知れませんね。」
石神さんは、私の隣に座り、さっそく丁寧に教えてくれる。
「まず、こちらは………」
石神さんは現役学生の私よりも よく分かっていて…
(凄いなぁ…しかも、格好いいし……)
久しぶりに見る横顔は相変わらず端正で、つい、見とれてしまう。
「顔に何か付いてますか?」
『え?あっ、いいえ!』
(いけない。集中、集中…………)
…………チャプッ
(……………ん?)
「……つまり、………………ということです。」
……チャプッ………チャプッ………
(ダメだ。今度は水の音が気になる………)
チャプッ………チャプッ………
「………ここまで、分かりましたか?」
『………………………………………』
水の音を排除しようとすると、今度は石神さんの落ち着いた低音に意識が吸い込まれそうになる。
「……悠紀さん。」
『はっ、はい?』
「少し休憩しましょうか。」
石神さんは、静かに本を閉じた。
「先程から集中できていないようですから。」
『すみません……じゃあ私、紅茶淹れますね。』
私は、少し気まずく思いながら、いそいそとキッチンへ向かった。
チャプッ………チャプッ………
鍋の水は、ちょうど紅茶2杯分ぐらい溜まっている。
(このまま沸かしちゃおう。)
シンクから鍋を取り上げようとすると、不意に、背中にふわりと暖かさを感じた。
「悠紀が集中できないのは、コレのせいか?」
チャプッ………チャプッ………
後ろから石神さんに包み込まれて聞く声は、なんだか くすぐったい。
『ごめんなさい。せっかく石神さんが……』
「それとも……」
私の言葉を遮った声は、掠れていた。
『えっ?………あの……んっ……』
私は突然身体をくるりと後ろに向けられ、石神さんと向き合ったかと思うと、唇を奪われていた。
「……やっと…会えたから……なのか?」
啄むようなキスの合間に紡ぎ出される言葉は、切なく胸に響く。
「少なくとも、俺は…」
キスを止め、呟いた石神さん。
(どんな顔をしているのだろう?)
私がキスの間閉じていた目を開けると、顔を見せまいとするように、頭を石神さんの胸に押し付けられてしまった。
トク…トク…トク…トク…
速い鼓動。
顔を上げると、再び石神さんと唇が重なる。
今度は噛みつくように激しく。
「ハッ……悠紀………答え…は?」
『ん………ふっ…………私………』
答えたくても答えられないまま、私は甘い眩暈に堕ちていく。
トプン………トプン………トプン………
━━鍋の水は、溢れそうなところまで溜まっていた。
けれど
もう その音は、二人の耳には入らない。
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