そこは、科学的に。

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主人公

事の発端は、「家族」であり親友でもある、裕介からの電話だった。




裕介「秀樹、悠紀さんとは うまくいってるか?」



石神「もちろん。」



裕介「ところで、あれから 悠紀さんの料理の手伝いはしてるのか?」



石神「いや……」



裕介「今時、男も ちょっとした物は作れないとなぁ。幾ら何でもアレはひどいぞ」



石神「はぁ………」



確かに、悠紀の前で、野菜すら まともに切れなかったのは失態だ。



裕介「また今度、悠紀さんと三人で作って食べような。その時までには頼むよ~、秀樹。」



石神「あ、あぁ………」



石神は、歯切れの悪い返事しかできない自分に腹が立った。





……やってみるか。





書店に立ち寄った石神は、『初心者もOK♪ 超男らしい料理!!』という本を手に取った。


そして、その本の中の写真を見て、思わず目を見開く。



(これなら……!)








ある日、石神は、夕食を共にしようと、悠紀を自宅マンションに呼んだ。



悠紀は夕食を作るつもりでいたのだが…。「材料は買わなくていい」という石神からのメールに首をかしげる。




先に立ち寄った官邸では……



悠紀「あれ?石神さんは?」



後藤「一緒じゃなかったのか?」


黒澤「石神さんなら、今日は随分早めに上がりましたよ。まだ会ってないんですか?」



悠紀「はい……」



悠紀は、???という感じで、石神のマンションに向かった。











玄関のドアを開けると。
漂ってきたのはスパイシーなカレーの香り。



悠紀「いい匂い…って、まさか、石神さんがカレー作ったんですか!?」



石神「えぇ、その、まさかです。」




心なしか、石神の顔は誇らしげだ。




悠紀(初めての、石神さんの手料理!!)



ドキドキしながらキッチンに入ると…。



悠紀「えっ、圧力鍋で作ったんですか!?」



料理の初心者が いきなり圧力鍋使用!?



悠紀は、既に圧力が抜けた鍋の蓋を開けた。





悠紀「………………!!」





石神「どうしました?」

悠紀「い、いえ、別に……」





あの…

具が……

具が………








で・か・い!!







人参は、おそらく1本を5等分位にぶつ切りしたのだろう。

じゃがいもに至っては、そこそこの大きさの物が、大胆にも半分に切っただけ。



悠紀(石神さん、材料切るの苦手みたいだったからなぁ…)




見た目は かなりのインパクトだったが。



悠紀「わぁ…、美味しいです♪」



石神「そうですか?……なら、良かったです」



少し照れた様に微笑む石神。




悠紀(石神さんって、何だかんだ言っても、できちゃう所が凄いなぁ…)






石神「料理は、科学実験の様なものですね」



悠紀「えっ?」



石神「時間が無くても、材料を細かく刻めなくても、圧力鍋なら、空気や液体が逃げないように密封して加熱し、大気圧以上の圧力を加えて、封入した液体の沸点を高めることで、食材を通常より高い温度と圧力で調理するから…野菜類は細胞壁が早く破壊され、肉類ならタンパク質や繊維が早く分解されて………」




悠紀「う……難しい…」




石神「でも、貴女が買ってきた圧力鍋ですよ。原理ぐらいはわかってたんじゃないですか?」



悠紀「いえ、そこまでは……」








「「ごちそうさまでした。」」



悠紀は、食器を片付けた後、何気なく冷蔵庫を覗いた。



悠紀「何かデザートはあるのかな…あれ?」



冷蔵庫の真ん中にあったのは、大きくぶつ切りされた肉。


そういえば、カレーに肉が入ってなかった…。


「解剖学的には…」なんて考えながら切ったのだろうか。




悠紀(石神さん、本当は かなりテンパってたんだ…。これは見なかったことにしよう。)






悠紀は、リビングに戻り、ソファの石神の隣に座る。




悠紀「石神さん、忙しいのに いつの間に料理の練習したんですか?すごく美味しかったです!」




石神「本当に、美味しかった…ですか?」


悠紀「はい、ホントに!」




石神「料理というのは…食べる人のことを思いながら作ると楽しい。けれど、いざ 出来上がると、果たして口に合うのか、美味しいと言って喜んでくれるのか、不安で……」



珍しく、石神の方が悠紀に凭れかかる。



悠紀(さっきの難しい話はやっぱり……)




悠紀「石神さん、今度は一緒に作りましょう!きっと、もっと楽しいから。」



石神「そうですね。…では、デザートを」


悠紀「え?冷蔵庫には…あ、いえ……」



石神「今日はアイスクリームを買ってきました。でも、その前に……」



悠紀「えっ、あの………////」



悠紀は、石神に軽々と抱き上げられる。



石神「ご褒美、下さい。」




悠紀「……石神さん、頑張ったんですよね、すごく………/////」




石神の、「ご褒美」という言葉の甘美な響き。

悠紀は、うっとりと潤んだ瞳を閉じ、石神に しがみついたのだった。






ーーーーーーーーーーーーENDーーーーーーーーーーー






元ネタは、3日ほど前にリアル旦那(←元シェフ)が作ってくれたカレー。


私は確かに、カレーやシチューは具が大きいのが好きと言ったけど。

マジ でか過ぎ……(-o-;)



※この お話は、2012年7月に旧ブログでUPしたものです。
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