溺れる人魚
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
人魚の王子…人間の男になった秀樹は、愛しい人間の女悠紀と暮らし始めた。
悠紀が揃えてくれた服を身に纏い…。
陸上では どうも視力が落ちる様で、眼鏡をかけるようになった。
秀樹は、悠紀の為に紅茶を淹れたり…、彼女の髪を梳いてやったりした。
悠紀は秀樹に、自分が習っていたチェロを教えてくれたが、今では逆に、秀樹が彼女の為に弾いて聴かせたりもする。
嵐の夜には、不安がる悠紀の枕元にずっと付いていた。
こんな二人が、やがて男女として結ばれたのは、ごく自然な事だった。
秀樹は幸せだった。
こんな日々が永遠に続けば……。
しかし、秀樹は ある時から、悠紀が時々 ちらりと悲しい表情を見せることに気がついた。
“何故だろう………?”
ある日 二人はクルーザーで島の沖へ出た。
誰の邪魔も無い、二人きりの船内で、身体を重ねる。
そんな時、悠紀は、ついに「理由」を口にした。
「ねぇ、秀樹さん。どうして『愛してる』って言ってくれないの?」
「………………!!」
悠紀は、お互いに愛し合っていることは わかっていたけれど。
それでも、秀樹本人の口から聞きたかったのだ。
秀樹が悠紀の身体に溺れると、秀樹の全身は一斉に激しく疼きだし、快楽と苦痛を同時に味わう。
「約束」の存在は、忘れようがない。
『元の姿に戻りたくなければ、人間に愛を告げない事。』
だが………
悠紀の笑顔を曇らせる原因が自分であってはならない。
ずっと笑っていて欲しい。
悠紀が見合い話を断り続けている事も知っている。
やはり、悠紀は本物の人間の男と結婚すべきではないのか。
「悠紀……俺の本当の姿を見る覚悟はあるか?」
「えっ?…秀樹さん、どういう意味なの?」
秀樹は、真実を全て悠紀に告白した。
「そんな………ウソでしょう?秀樹さん」
「ずっと、言いたかった……………悠紀……」
「秀樹さん、待って!!」
「愛してる……うっ!」
「いやぁぁぁぁっ!!」
秀樹の両腕と下半身に、次々と鱗が生える。
「ぐぅっ………」
秀樹の両足はひとつになり、銀白色の鱗に覆われ……、魚の体へと変化した。
「ハッ……ハァ……この通り、俺は……哀れな…溺れる人魚だ。」
秀樹は、自嘲気味に、口元を歪める。
「秀樹さん………」
「俺の本当の名は……白蓮(ハクレン)だ。」
秀樹は、動かない魚の下半身をズルズルと引き摺り、船縁に身を寄せる。
「悠紀、幸せに…なってくれ」
そう言うと、秀樹は船縁の手すりを乗り越えようとした。
「いやっ!やめて!!」
悠紀は、秀樹の体に縋りついた。
ザッパーン!!
二人は、そのまま海へ落ちた。
「バカな…離せ、溺れるぞ!」
「いやです!!私も…ゲホッ…」
先に、ぐったりした秀樹が沈み始めた。
悠紀は、何とかして秀樹を助けたくて抱きつくが、その鉛の様な重さに、一緒に沈むしかなかった。
(秀樹さん………)
沈みながら、悠紀は朦朧とした意識の中、秀樹の唇に自分の唇を重ねた。
すると、秀樹の体は突然、白い花びらの様なものを散らし始めた。
(?……………きれい………)
そのまま、悠紀は、意識を失った。
『まさか、呪いが破られるとは……』
秀樹は、ぼんやりと目を開けた。見慣れた天井…安らぎを感じる匂い。
ここは、住み慣れた悠紀の家だ。
横を見ると、悠紀が秀樹に密着して眠っている。
二人は、狭いベッドに、並んで寝かされていた。
カチャ
部屋に入ってきたのは、お手伝いのフミだった。
「あぁ、秀樹さん、お目覚めですか。……悠紀さんはまだ…。命に別状は無いそうですが。」
「フミさん、俺たちは………?」
「こっちが聞きたいくらいですよ。貴方たち、砂浜で裸で抱き合って倒れてたんですから。」
「はぁ……。」
「船は沖に行っちゃってるし…一体、何してたんだか。…もう少し休んでて下さいね。後でお食事お持ちしますから。」
フミが部屋を出ていくと、秀樹はそっと布団の中を確かめる。
人間の足だ。鱗も無い。
「うぅん………」
悠紀が目を覚ました。
「あ、秀樹さん…。」
秀樹は、悠紀が無性にいとおしくて、彼女をギュッと抱きしめた。
そして、悠紀の耳元で、そっと囁く。
「悠紀、愛してる……」
「あっ………」
悠紀は、秀樹の腕の中で身を固くする。
「心配するな。もう大丈夫だ。」
「それじゃあ………もう……グスッ」
悠紀の両目から、一気に大粒の涙がこぼれる。
「………………」
頷く秀樹の頬にも、一筋の涙が光っていた。
『人間の女が全てを受け入れた時、呪いは破られる……白蓮王子よ…幸せにおなり………』
――――――――――――――――
おまけ
↓↓↓
石神は、ジュゴンの水槽を、ぼんやりと眺めていた。
「……さん、石神さん、どうしたんですか?」
「うん?…あぁ、水中を自由気儘に泳ぐのは、どんな気分なんだろうな?」
「ふふっ、羨ましいですか?石神さん、カナヅ…むぐっ」
「後で、お仕置きだ。」
「むんぐ~!」
――おわり――
悠紀が揃えてくれた服を身に纏い…。
陸上では どうも視力が落ちる様で、眼鏡をかけるようになった。
秀樹は、悠紀の為に紅茶を淹れたり…、彼女の髪を梳いてやったりした。
悠紀は秀樹に、自分が習っていたチェロを教えてくれたが、今では逆に、秀樹が彼女の為に弾いて聴かせたりもする。
嵐の夜には、不安がる悠紀の枕元にずっと付いていた。
こんな二人が、やがて男女として結ばれたのは、ごく自然な事だった。
秀樹は幸せだった。
こんな日々が永遠に続けば……。
しかし、秀樹は ある時から、悠紀が時々 ちらりと悲しい表情を見せることに気がついた。
“何故だろう………?”
ある日 二人はクルーザーで島の沖へ出た。
誰の邪魔も無い、二人きりの船内で、身体を重ねる。
そんな時、悠紀は、ついに「理由」を口にした。
「ねぇ、秀樹さん。どうして『愛してる』って言ってくれないの?」
「………………!!」
悠紀は、お互いに愛し合っていることは わかっていたけれど。
それでも、秀樹本人の口から聞きたかったのだ。
秀樹が悠紀の身体に溺れると、秀樹の全身は一斉に激しく疼きだし、快楽と苦痛を同時に味わう。
「約束」の存在は、忘れようがない。
『元の姿に戻りたくなければ、人間に愛を告げない事。』
だが………
悠紀の笑顔を曇らせる原因が自分であってはならない。
ずっと笑っていて欲しい。
悠紀が見合い話を断り続けている事も知っている。
やはり、悠紀は本物の人間の男と結婚すべきではないのか。
「悠紀……俺の本当の姿を見る覚悟はあるか?」
「えっ?…秀樹さん、どういう意味なの?」
秀樹は、真実を全て悠紀に告白した。
「そんな………ウソでしょう?秀樹さん」
「ずっと、言いたかった……………悠紀……」
「秀樹さん、待って!!」
「愛してる……うっ!」
「いやぁぁぁぁっ!!」
秀樹の両腕と下半身に、次々と鱗が生える。
「ぐぅっ………」
秀樹の両足はひとつになり、銀白色の鱗に覆われ……、魚の体へと変化した。
「ハッ……ハァ……この通り、俺は……哀れな…溺れる人魚だ。」
秀樹は、自嘲気味に、口元を歪める。
「秀樹さん………」
「俺の本当の名は……白蓮(ハクレン)だ。」
秀樹は、動かない魚の下半身をズルズルと引き摺り、船縁に身を寄せる。
「悠紀、幸せに…なってくれ」
そう言うと、秀樹は船縁の手すりを乗り越えようとした。
「いやっ!やめて!!」
悠紀は、秀樹の体に縋りついた。
ザッパーン!!
二人は、そのまま海へ落ちた。
「バカな…離せ、溺れるぞ!」
「いやです!!私も…ゲホッ…」
先に、ぐったりした秀樹が沈み始めた。
悠紀は、何とかして秀樹を助けたくて抱きつくが、その鉛の様な重さに、一緒に沈むしかなかった。
(秀樹さん………)
沈みながら、悠紀は朦朧とした意識の中、秀樹の唇に自分の唇を重ねた。
すると、秀樹の体は突然、白い花びらの様なものを散らし始めた。
(?……………きれい………)
そのまま、悠紀は、意識を失った。
『まさか、呪いが破られるとは……』
秀樹は、ぼんやりと目を開けた。見慣れた天井…安らぎを感じる匂い。
ここは、住み慣れた悠紀の家だ。
横を見ると、悠紀が秀樹に密着して眠っている。
二人は、狭いベッドに、並んで寝かされていた。
カチャ
部屋に入ってきたのは、お手伝いのフミだった。
「あぁ、秀樹さん、お目覚めですか。……悠紀さんはまだ…。命に別状は無いそうですが。」
「フミさん、俺たちは………?」
「こっちが聞きたいくらいですよ。貴方たち、砂浜で裸で抱き合って倒れてたんですから。」
「はぁ……。」
「船は沖に行っちゃってるし…一体、何してたんだか。…もう少し休んでて下さいね。後でお食事お持ちしますから。」
フミが部屋を出ていくと、秀樹はそっと布団の中を確かめる。
人間の足だ。鱗も無い。
「うぅん………」
悠紀が目を覚ました。
「あ、秀樹さん…。」
秀樹は、悠紀が無性にいとおしくて、彼女をギュッと抱きしめた。
そして、悠紀の耳元で、そっと囁く。
「悠紀、愛してる……」
「あっ………」
悠紀は、秀樹の腕の中で身を固くする。
「心配するな。もう大丈夫だ。」
「それじゃあ………もう……グスッ」
悠紀の両目から、一気に大粒の涙がこぼれる。
「………………」
頷く秀樹の頬にも、一筋の涙が光っていた。
『人間の女が全てを受け入れた時、呪いは破られる……白蓮王子よ…幸せにおなり………』
――――――――――――――――
おまけ
↓↓↓
石神は、ジュゴンの水槽を、ぼんやりと眺めていた。
「……さん、石神さん、どうしたんですか?」
「うん?…あぁ、水中を自由気儘に泳ぐのは、どんな気分なんだろうな?」
「ふふっ、羨ましいですか?石神さん、カナヅ…むぐっ」
「後で、お仕置きだ。」
「むんぐ~!」
――おわり――
2/2ページ