溺れる人魚
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
石神さんで、おとぎ話大捏造です。
本来の石神さんの、例の『秘密の弱点』は忘れて下さい(笑)
---------------------------
━━海辺の岩場の影に潜む、端正な顔立ちの青年。
彼は、いつも、ある女性を見ていた。
彼女は、今日も楽しそうに笑っている。
“あの眩しい笑顔が…欲しい。
あの笑顔を自分に向けてくれたら。
自分が彼女を微笑ませることができたら。
彼女と一緒にいたい。
彼女に触れたい。
こんな気持ちは、生まれて初めてだ。
だが、このままでは…。
やはり、決断すべきか。”
青年は、ザブンと海に入ると、海底をめざして深く潜った。
立派な尾びれを揺らして。
“人間は、人魚は上半身が人間で 下半身が魚の姿をした若い女ばかりだと勝手に思っている。
男の人魚は女とは違い、人間とは似ても似つかない獣の様な顔立ちで、全身に固い鱗をもつ。凶暴で、人間嫌いだ。
人間は、男の方は人魚だと思っていない。モンスターだ。
すると、俺は……?
俺は、人魚の王子として生まれたが、上半身が人間の男そっくりなせいで、王は生まれたばかりの俺を処分しようとした。
一族から見れば、俺がモンスターだ。
魔女が引き取ってくれたおかげで、今の自分が在る。
魔女の庇護のもと、無表情な老女の人魚達に育てられた俺は、退屈しのぎに あの島へ出掛け…見つけてしまった。
身悶えする程、愛しいひとを………”
━━青年は…人魚の王子は、棲み家に着くと、魔女のもとを訪ねた。
「頼みがある」
「王子、どうしたのです?改まって」
「俺を人間にしてくれ」
「何ですって!?」
「このまま ここで隠れて過ごすより、人間になって外の世界へ出たい。…頼む」
「誰よりも美しい鱗を持ちながら、それを捨てると…。わかりました。但し、条件があります」
「何だ?」
「一つは、人間になる代わり、二度と水中を自由に泳げなくなる」
「あぁ。ここに帰る気は無いから、支障はないだろう。」
「もう一つのは……、これを破ると、泳げないまま、元の姿に戻る。」
「つまり、見せ物にでもなって生き恥を晒すか、死ねということか」
「それが嫌なら、………………ない事。」
「何だと!?……………くっ、わかった。人間にしてくれ」
魔女が、怪しげな儀式をして魔法をかけると、海水は異物となり、王子の意識は遠のいた。
『どうか、約束を守り、生き抜いて…』
王子の意識が戻ったのは、ベッドの上だった。
「あっ、気がつきました?…よかった!砂浜に倒れてたから、びっくりしました」
若い女性が、パァッと花が咲いた様な笑顔で覗き込む。
「………………!!」
“あぁ、会いたかった、彼女だ!
ここは、彼女の住まいなのか。”
「何かあったら、言って下さいね。…あ、えっと、私…悠紀です。貴方は?」
「俺は……………」
王子には、魔女が付けてくれた名があったのだが……
(もう、今までの俺は、捨てよう。名前も。)
「もしかして、忘れちゃったんですか?……じゃあ、名前が無いと不便だから…秀樹さんって、呼んでいいですか?小さい頃亡くなった兄の名前ですけど。」
“兄か………まぁ、悪くない。”
王子…「秀樹」は、頷いた。
この小さな島は個人所有で、身寄りの無くなった悠紀が遺産として受け継いだものだ。
以来、悠紀は、別荘だった この家に、お手伝いの フミ他、少数の使用人と暮らしている。
王子は、記憶喪失者で行くあても無い、という事にして、「とりあえず」ここに居させてもらうことになった。
秀樹という名の、人間の男として。
1/2ページ