誰も彼も彼女も『すき』じゃない

「ひぇっ…!?」

ウサギさんが連れていってくれたその先を見れば
人が倒れ伏していた。
息ができない。怖い。肩で息をすることしかできない。
否、それすらもできない。苦しい。助けて。頭が痛い。眩暈がする。喉から嘔吐物が出てしまいそう。
必死に堪えるために口を塞ぐ手と
その人を助けてあげたい手と
それを塞ぎたい脳がこんがらがる。
…僕はどうすれば良いの?
そう思いながら脳を拒否して伸ばす
自分の手を最後に意識が途絶えた。








じんわりと暖かい何かが僕に押し寄せる。
その感覚にぶるりと身を震わせ目を開けると、
先程まで僕が助けようとした人物が立っていた。

大丈夫ですか?

頭がどうやら活性化できていないみたいで、目の前の少女の声が重なってるように聞こえる。

大分痩せているみたいですけど…

心配する少女に僕は目を伏せて
その返答を待つ顔に答えを紡ぐ。

「仕方ないでしょ?同じ同種の人間に
嫌悪感を抱いているのだから」

だから下町に降りれない。そう少女に呟く。
したら少女は不思議そうな顔をして僕の頭を撫でる。


その生暖かい感触がするその手を僕は本能的に拒否をした。
びっくりするその彼女を置いて僕は布団に身をくるむ。
本当はもっと優しく撫でて欲しい。
けれど人間は大嫌いだ。心がざわつく。
ぎゅっと布団を強く掴み彼女に怯える。
すると手袋越しに彼女が僕の手を掴む。
それも優しく癒されるような…。

安心してください

やっとちゃんとした彼女の声が耳に聞こえた。
彼女の顔を伺うように僕が頭をあげれば
美しい女性が居た。
僕に似ている瞳と長いエメラルドグリーンをなびかせるその髪。
凄い…。その女性に見惚れれば、
女性は自己紹介をした。

そういえば自己紹介がまだでした!
私の名前は初音未来ミク、ミクの漢字は未来
っていう漢字をそのまま持ってきたみたいなの


笑顔で言う女性…ミクがとても可愛かった。
人の事を生け簀かない僕が初めて一目惚れした女性だ。
けれど年の差も中々あるし、まずミクは僕のことを生け簀かないだろう。
そう思えば軽い気持ちになった。
きっとミクは僕の事嫌いなんだ。
それでも上部だけでも笑顔を張り付けている。
そう、きっと、否、絶対に。
嗚呼、苦痛で顔が歪みそうだ。心優しいはずだから…。

何かを思ったのか、ミクが僕の頬に手を馳せる。

「…みく、さん…?」

ミクの行動がよく分からなかった。何で僕に触れる?
ミクの慈悲深いその表情さえよく分からなかった。
頭が混乱していればミクが口を開く。

そんな痛みに苦しむような表情しないでください…

…え?僕が?今、そんな表情をしてるの?
どういうことだろう、片手を顔に触れれば眉尻は下がり口角も下がっていて目が熱く、頬に何かが伝う。
服の袖で顔を拭えば黒色の服がもっと黒く染まる。
今度は手の甲で頬に伝う何かを拭えば太陽光に
無色透明で光る。頭から流れ落ちる汗ではない、
透明で染み込むもの。
…そうだ、涙だ。涙が僕の眼からこぼれ落ちる。
涙だと発覚すればボロボロと、
涙が止めどなく溢れ落ちる。
情けないと自分の心の一人が言い放ち、誰かの声かも分からない"ナニか"に独りぼっちの僕がリンチされる。
ずっと情けないと言われ続ける。声が僕の耳元で囁き続ける。
頭が痛い、まるで焼けるような…。
抑えないといけないのに…。

「ぐっ…ふぁ"……ッ!」
わわっ、大丈夫ですか?!

ミクが僕の心配をしている。
けれど、耐えれそうにはない。
ふわりと意識が遠のいていく。
最後に聞こえたのは聞くに耐えない誰かの叫び声。
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