なんて期待も、彼女の「拓司くん、暑いよぉ」という言葉に一瞬で崩された。

福良さんも言ってたけど、彼女のことになるとガラスのハートだから、そう言われたら「ごめんね」と体を離すしかできないのだ。

やっぱめんどくせぇとか思われてるのかな。

でもおとといは大丈夫だったし...
あ、でもそれは1週間ぶりに会ったからそういう気分だったのか...？


「拓司くんお腹すいてる？」


あの日メンバーと話たことを思い出しながら、聞いてみるか？でもなぁ...なんてらしくもなく脳内でモジモジしていたら、隣に座った彼女が雑誌を閉じてそう聞く。


「うん。腹減った」
「じゃあご飯作ろうかなぁ」
「ダメ。こっち来て」
「拓司くんお腹すいたんじゃっ...」


立ち上がった彼女のお腹に手を回して、ソファーに座る俺の膝の上に無理やり座らせる。


「...きゃっ...ダメっ...」


本能というのは怖いもので、彼女が乗り気じゃなさそうというのは分かっているのにTシャツの首元から手を入れて胸に触れた。

そこに触れたのと同時に彼女の体が強ばって、結構まじなトーンで拒否られてしまう。


「...ごめ」
「ううん...ごめんね。よし！ご飯作るね！」
「待ってよ。...俺こういうの直した方がいい...？」


どうしたの？と聞くのも、なんで拒否するの？と聞くのも、どちらも怖かった。

こんな聞き方したって、答えはきっと同じなんだろうけど、自分が悪いというのを分かった上で聞いてるんだよって伝わるような少しずるい聞き方をする。

オンナゴゴロはわからないことだらけだ。

だって怖いもん。こんなの聞くの初めてだから、ショックな返事だったら立ち直れないもん。

だからさ「拓司くんちょっとめんどくさいよ...」じゃなくてさ、「私は今そういう気分じゃないからもうちょっと待っててね」って優しく教えて欲しい。

ピュアでガラスのハートだから。


「ううん...」


そんな俺の弱すぎるハートの考えとは裏腹に、彼女の口から出た返事は予想外のものだった。