『Muffler』/ kwkm
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その自動ドアをくぐるといつも通りの音楽と「らっしゃいませー」なんていうやる気のない挨拶。
そりゃあこんな時間に元気に挨拶しろなんていう方がおかしいかもしれない。
大学進学を機に地元を離れた。
最初は少し寂しかったけど半年も過ぎれば都会の生活にも慣れていた。
冬休みを利用しての帰省。
一人暮らしをしている家の近くにもあるコンビニと同じコンビニに入ったのはここの肉まんが好きだから。
いや、どこでも一緒やんって言う人はもう一回全部食べ比べたほうがいい。
「...しゃいませー」
温かい缶コーヒーを手に取って、さっきよりもやる気のない挨拶も気にすることなく、近くのレジに優しく置いた。
肉まん買いに行くだけだし、とスッピンにマスク姿で出てきてしまったからあまり顔を上げたくなくて下を向いたまま。
「あと肉まんひとつ」
「もっちりジューシー肉まんひとつ」
そんな正式名称があったのか。
この男の人、挨拶は雑なのに丁寧なこと。
「258円です」
はーいと返事をして、レジのお兄さんが肉まんを取りに行った隙を狙って顔をあげてお金を出す。
「300円お預かりします」
あ、お釣りを受け取らないといけない。
まぁコンビニのお兄さんにスッピン見られるくらいいいか。
この時間のバイトなんて見慣れてそうだし。
少しだけ顔を上げると胸につけられている名札が目に入った。
『川上』
その名前を見ただけで心臓がドクンと飛び跳ねて、少し視線を横に移すとすっごい無愛想な顔写真がついている。
間違いない。
「42円のお返しです、青木さん」
「...気づいてたの?」
「うん。店入ってきた瞬間から」
「最初に言ってくれたらいいじゃん」
「いやなんか、全然目が合わないから、気づかれたくないのかと」
自然に私の手を取ってお釣りを掌に乗せてから「レシートいる?」と丁寧に両手でレシートをこちらに寄せる。
「うん」
「帰ってきてたんやね」
「川上くんも...ね」
「うん。こっちきてもバイト生活。あ、青木さん、俺もうあがりだからちょっと待っててくれん?」
時計を見ると22時。
こんな時間に肉まん食べようとしてるのやばい気がしてきた。
川上くんに会えたからオールOK...な気がしてきたけど。
「なんで...?」
オールOKってことでいいじゃん。
なんでこの言葉が口から溢れてしまったのか自分でもわからない。
1年前、ううん、もっと前から片思いしていた相手に1年越しに待っててくれない?って言われてるんだよ?!
「いや、急いでるなら全然ええんやけど...あ、ごめん。お客さん。らっしゃいませー...」
別に急いでいるわけではない。
こんなの予想外すぎて、頭が真っ白なの。
こんなの、期待しちゃうから、あっさりバイバイと言った方がいいに決まってる。
「急いでへんなら待っとって。そこで肉まん食べてる間には支度済ませて出てくるわ」
そう言い残した彼の言葉に頷いてしまったから待っていることになってしまって
「お疲れさまです」と隣の人にちゃんと頭を下げてスタッフルームに入っていった彼を見送ってなんだかわからないため息をついた。
そりゃあこんな時間に元気に挨拶しろなんていう方がおかしいかもしれない。
大学進学を機に地元を離れた。
最初は少し寂しかったけど半年も過ぎれば都会の生活にも慣れていた。
冬休みを利用しての帰省。
一人暮らしをしている家の近くにもあるコンビニと同じコンビニに入ったのはここの肉まんが好きだから。
いや、どこでも一緒やんって言う人はもう一回全部食べ比べたほうがいい。
「...しゃいませー」
温かい缶コーヒーを手に取って、さっきよりもやる気のない挨拶も気にすることなく、近くのレジに優しく置いた。
肉まん買いに行くだけだし、とスッピンにマスク姿で出てきてしまったからあまり顔を上げたくなくて下を向いたまま。
「あと肉まんひとつ」
「もっちりジューシー肉まんひとつ」
そんな正式名称があったのか。
この男の人、挨拶は雑なのに丁寧なこと。
「258円です」
はーいと返事をして、レジのお兄さんが肉まんを取りに行った隙を狙って顔をあげてお金を出す。
「300円お預かりします」
あ、お釣りを受け取らないといけない。
まぁコンビニのお兄さんにスッピン見られるくらいいいか。
この時間のバイトなんて見慣れてそうだし。
少しだけ顔を上げると胸につけられている名札が目に入った。
『川上』
その名前を見ただけで心臓がドクンと飛び跳ねて、少し視線を横に移すとすっごい無愛想な顔写真がついている。
間違いない。
「42円のお返しです、青木さん」
「...気づいてたの?」
「うん。店入ってきた瞬間から」
「最初に言ってくれたらいいじゃん」
「いやなんか、全然目が合わないから、気づかれたくないのかと」
自然に私の手を取ってお釣りを掌に乗せてから「レシートいる?」と丁寧に両手でレシートをこちらに寄せる。
「うん」
「帰ってきてたんやね」
「川上くんも...ね」
「うん。こっちきてもバイト生活。あ、青木さん、俺もうあがりだからちょっと待っててくれん?」
時計を見ると22時。
こんな時間に肉まん食べようとしてるのやばい気がしてきた。
川上くんに会えたからオールOK...な気がしてきたけど。
「なんで...?」
オールOKってことでいいじゃん。
なんでこの言葉が口から溢れてしまったのか自分でもわからない。
1年前、ううん、もっと前から片思いしていた相手に1年越しに待っててくれない?って言われてるんだよ?!
「いや、急いでるなら全然ええんやけど...あ、ごめん。お客さん。らっしゃいませー...」
別に急いでいるわけではない。
こんなの予想外すぎて、頭が真っ白なの。
こんなの、期待しちゃうから、あっさりバイバイと言った方がいいに決まってる。
「急いでへんなら待っとって。そこで肉まん食べてる間には支度済ませて出てくるわ」
そう言い残した彼の言葉に頷いてしまったから待っていることになってしまって
「お疲れさまです」と隣の人にちゃんと頭を下げてスタッフルームに入っていった彼を見送ってなんだかわからないため息をついた。