『雪の日』/ mzkm
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冬休みがあけると、テスト期間が始まり颯と会えない日々が続いた。
ほぼ1ヶ月。
あんなに毎日来ていた連絡も2日に1回あればいい方になり、医学生の大変さを思い知らされた。
春からずーっと颯は私に愛を伝え続けてくれていたけれど、私は結局今の今まで好きの一言も言えないまま。
ちょっとずつ恋人らしくなっていく自分たちを嬉しく思いながら、これはきっと恋だと、これはきっと颯のことが心から好きだと気づいた。
1ヶ月会えない日々が続いて初めて私は颯にちゃんと心から好きだと言えると思った。
そして颯のテストが終わるという日。
この街では珍しい雪の日だった。
寒いから気をつけてね、というLINEを送った。
ちゃんと読んだのか、読んでいないのか。
返信は、終わったらすぐ会いに行くからねだった。
ちゃんと温かい格好してるの...?なんて心配と私と同じように私と会うことを楽しみにしてくれてたんだって嬉しくなって胸が苦しかった。
今日こそ、今日こそ、颯に好きだと言おうと思っていた。
思っていた。
その日、珍しく雪の日だった。
颯から今から行くねという連絡を受けて、私の心はウキウキだった。
その日、何時間待っても颯は来なかった。
電話をしても繋がることはなく、LINEをしても既読がつくことはなかった。
その日、颯が死んだ。
その知らせを受けたのはその日の夜。
初めて聞いた颯のお母さんの声は震えていた。
即死だったそうだ。
普通だったら見るも耐えないだろうけれど私はすぐに颯に駆け寄って身体に触れた。
今日は寒かったから冷たいんだ。
私があたためてあげる。
ずっとずっと颯が抱きしめてくれていたから、今度は私がぎゅってしてあげる。
颯じゃない、これは颯なんかじゃない。
不思議と涙は出なかった。
家に帰って初めて涙が出た。
何度好きと泣き叫んでもその声が本人に届くことはないのに...
降り続けていた雪のせいで道路の状態が最悪だった。
颯の目の前で横断歩道を渡っていた親子がスリップした車にはねられたそうだ。
それを見た颯は1番に駆け寄って....駆け寄って....信号が変わったことにも気づかず声をかけ続けていたみたい。
そのまま後続の車が....もういいか。
もう颯に会えないということは変わらないんだから。
・
・
30歳になった私には
ずっとずっと後悔していることがある。
颯に好きだと言ってあげられなかったことだ。
今でも雪の日が怖い。
心臓がぐっとえぐり取られそうな感覚になる。
ちゃんとマフラーをつけて暖かいコートを羽織って。
颯を忘れられず友人の結婚ラッシュをとっくに迎えているのに今日も1人ぼっちな私はあの日、颯が立っていた場所に立っていた。
どんな気持ちだったの?
あと少しで私に会えることを楽しみにしていてくれたの?
テストはどうだった?
多分大丈夫だったよね?
なんでこんな私のことを好きでいてくれたの?
目を閉じて聞いてみても答えはない。
「颯...好きだよ...」
あの日、言ってあげられなかった言葉を呟いてみる。
ごめんね、ちゃんと言ってあげられなくて。
届けたかった言葉が
真っ白な息となって空にのびていった。
颯に届くだろうか。
ほぼ1ヶ月。
あんなに毎日来ていた連絡も2日に1回あればいい方になり、医学生の大変さを思い知らされた。
春からずーっと颯は私に愛を伝え続けてくれていたけれど、私は結局今の今まで好きの一言も言えないまま。
ちょっとずつ恋人らしくなっていく自分たちを嬉しく思いながら、これはきっと恋だと、これはきっと颯のことが心から好きだと気づいた。
1ヶ月会えない日々が続いて初めて私は颯にちゃんと心から好きだと言えると思った。
そして颯のテストが終わるという日。
この街では珍しい雪の日だった。
寒いから気をつけてね、というLINEを送った。
ちゃんと読んだのか、読んでいないのか。
返信は、終わったらすぐ会いに行くからねだった。
ちゃんと温かい格好してるの...?なんて心配と私と同じように私と会うことを楽しみにしてくれてたんだって嬉しくなって胸が苦しかった。
今日こそ、今日こそ、颯に好きだと言おうと思っていた。
思っていた。
その日、珍しく雪の日だった。
颯から今から行くねという連絡を受けて、私の心はウキウキだった。
その日、何時間待っても颯は来なかった。
電話をしても繋がることはなく、LINEをしても既読がつくことはなかった。
その日、颯が死んだ。
その知らせを受けたのはその日の夜。
初めて聞いた颯のお母さんの声は震えていた。
即死だったそうだ。
普通だったら見るも耐えないだろうけれど私はすぐに颯に駆け寄って身体に触れた。
今日は寒かったから冷たいんだ。
私があたためてあげる。
ずっとずっと颯が抱きしめてくれていたから、今度は私がぎゅってしてあげる。
颯じゃない、これは颯なんかじゃない。
不思議と涙は出なかった。
家に帰って初めて涙が出た。
何度好きと泣き叫んでもその声が本人に届くことはないのに...
降り続けていた雪のせいで道路の状態が最悪だった。
颯の目の前で横断歩道を渡っていた親子がスリップした車にはねられたそうだ。
それを見た颯は1番に駆け寄って....駆け寄って....信号が変わったことにも気づかず声をかけ続けていたみたい。
そのまま後続の車が....もういいか。
もう颯に会えないということは変わらないんだから。
・
・
30歳になった私には
ずっとずっと後悔していることがある。
颯に好きだと言ってあげられなかったことだ。
今でも雪の日が怖い。
心臓がぐっとえぐり取られそうな感覚になる。
ちゃんとマフラーをつけて暖かいコートを羽織って。
颯を忘れられず友人の結婚ラッシュをとっくに迎えているのに今日も1人ぼっちな私はあの日、颯が立っていた場所に立っていた。
どんな気持ちだったの?
あと少しで私に会えることを楽しみにしていてくれたの?
テストはどうだった?
多分大丈夫だったよね?
なんでこんな私のことを好きでいてくれたの?
目を閉じて聞いてみても答えはない。
「颯...好きだよ...」
あの日、言ってあげられなかった言葉を呟いてみる。
ごめんね、ちゃんと言ってあげられなくて。
届けたかった言葉が
真っ白な息となって空にのびていった。
颯に届くだろうか。