『いつか、』/ sg
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少しずつ。
本当に少しずつ君のことを好きになっている自分がいた。
真面目な姿勢も可愛らしい笑顔も。
全部俺のものにできたらどれだけいいだろう。
「おつかれさまーっす!!」
まだ正月休みまであと1週間残ってるのにそんなこと忘れて忘年会兼クリスマスパーティーは始まった。
指定された会場に行くと麗結さんの姿がなくて、心底ガッカリした自分に気づく。
本当に申し訳ないけど彼女のためだけにここに来たのに...
「よし!飲め飲め!志賀くんは?」
「...俺生で」
「こっちも生!」
「あの...!」
あっちに行ったりこっちに行ったり忙しそうな伊沢さんを引き止めたのはいいけど「麗結さんは来ないですか?」なんて聞くわけにもいかず言葉に詰まる。
何してんだろ、ほんとに。
この会がきっかけでちょっと違う意味で仲良くなれたらなんて変な期待してるからこうなるんだ。
「あ、ちょっと遅れてくるって」
「え...?」
「伊沢ー!」
「はいよ!そっちも行く!」
バレてたのか。
お礼も言えないまま伊沢さんは別のテーブルに向かっていった。
来るんだ...
そう思っただけで胸がいっぱいになる。
あのオフィス以外で会うのは初めてで、別に全く必要ないのに緊張してる。
美味しそうな料理が目の前に並んでも、食欲がわかなくて周りの人達に譲っていたら心配されてしまった。
「遅くなりました...!」
ドクッと心臓がはねた。
ちょっと飲みすぎたお酒のせいじゃない。
少し息を切らした彼女が席を見渡して俺と目が会った瞬間にニコッと笑ったから。
「麗結ちゃん!お疲れ!」
「遅くなってすみません...」
「いやいやもう始めてるので...山森さんのところ座ったらいいよ!おい!麗結ちゃんの席を開けろ!」
伊沢さんたちのグループとなにやら話してるのを賑やかな店内の音に遮られないようにかなり集中して盗み聞き。
そうか、そうだよね。
こんなところに来たって運良く俺の隣になんて来るわけないし。
俺以外に仲良い人なんて山ほどいるわけで。
仕事の延長なこの会で、私情持ち込みまくりな人間なんて俺だけだ。
「ここめっちゃ詰めたら入れるからこっちおいで!」
「いやいや!狭くなっちゃいますから!」
「いいのいいのー!」
「それに私そんなにお酒飲めないので皆さんの邪魔になっちゃう...」
「そうなの?どこか空いてるとこ...あ!志賀さんそこ空いてる?」
「えっ...あっ...!空いてます!ここ!!ここ!!」
急に話を振られて驚きながらも勇気をだして手招きをすると麗結さんが「志賀さんのお隣行きますね」とこっちに向かってきてくれた。
「失礼します」
「お疲れ様です、麗結さん」
「はぁ...!疲れたー!教授に呼び止められちゃって!」
「大変だったね」
「私も1杯だけ飲も!」
過去最高に彼女が近い。
胸がいっぱいで苦しいがさらに加速する。
「これ美味しいよ!」と揚げ物をこちらに寄せてくれたり、「飲みもの頼まないの?」と初めて会う他の奴らにも気を使ったりやっぱり天使。
彼女に夢中になりすぎちゃうから、気をまぎらわせためにいつも以上に飲んだ。
*
飲みすぎたせいで滅多にないのに気分が悪くなって外の空気を吸いに店の外に出た。
粉雪が舞っていて空気は冷たい。
手にふわりと乗ったそれが俺の体温でじわっと溶けた。
キラキラな街と相まって綺麗だ。
「志賀さん大丈夫?」
心を落ちつけて席に戻るともう解散する雰囲気で、急いで準備をしていると山森さんに肩を叩かれた。
「大丈夫大丈夫。山森さんもめっちゃ飲んだでしょ?」
少し無理をして平然を装って彼女の肩にポンっと手をのせる。
不思議だ。
麗結さん以外の女性とはこんなに簡単に話せるのに。
こんなに簡単に触れられるのに。
「わぁ...雪だ!」
さっきまで大人な姿で周りに気を使っていた君が店の外に出た瞬間子どもみたいにはしゃいでる姿を見て「そうだね」としか返せない。
君の肩にのった雪を「払ってあげる」なんて言いながら落としてあげることも出来ない。
きっとほかの女性ならできるのに。
「さみぃー!早く帰るぞ!」
伊沢さんの「解散!」の合図にみんながバラバラと離れていく。
ちらっと彼女を見る。
何故か彼女も俺の方をちらっと見て「ん?」と首を傾げてる。
「帰ろうか」
初めて勇気をだして言った言葉がこれか。
俺にとっては精一杯だったんだけど、一緒にとかもないし帰る方向逆だったら終わりじゃん。
「志賀さんどっちですか?」
「俺は...」
「私はこっちです」
彼女が指さしたのは俺が帰る方向とは真逆。
よかった...先に答えなくて。
「俺もそっちだから一緒に」
手持ち無沙汰な両手はコートのポケットに入れて彼女の1歩後ろを歩いた。
本当に少しずつ君のことを好きになっている自分がいた。
真面目な姿勢も可愛らしい笑顔も。
全部俺のものにできたらどれだけいいだろう。
「おつかれさまーっす!!」
まだ正月休みまであと1週間残ってるのにそんなこと忘れて忘年会兼クリスマスパーティーは始まった。
指定された会場に行くと麗結さんの姿がなくて、心底ガッカリした自分に気づく。
本当に申し訳ないけど彼女のためだけにここに来たのに...
「よし!飲め飲め!志賀くんは?」
「...俺生で」
「こっちも生!」
「あの...!」
あっちに行ったりこっちに行ったり忙しそうな伊沢さんを引き止めたのはいいけど「麗結さんは来ないですか?」なんて聞くわけにもいかず言葉に詰まる。
何してんだろ、ほんとに。
この会がきっかけでちょっと違う意味で仲良くなれたらなんて変な期待してるからこうなるんだ。
「あ、ちょっと遅れてくるって」
「え...?」
「伊沢ー!」
「はいよ!そっちも行く!」
バレてたのか。
お礼も言えないまま伊沢さんは別のテーブルに向かっていった。
来るんだ...
そう思っただけで胸がいっぱいになる。
あのオフィス以外で会うのは初めてで、別に全く必要ないのに緊張してる。
美味しそうな料理が目の前に並んでも、食欲がわかなくて周りの人達に譲っていたら心配されてしまった。
「遅くなりました...!」
ドクッと心臓がはねた。
ちょっと飲みすぎたお酒のせいじゃない。
少し息を切らした彼女が席を見渡して俺と目が会った瞬間にニコッと笑ったから。
「麗結ちゃん!お疲れ!」
「遅くなってすみません...」
「いやいやもう始めてるので...山森さんのところ座ったらいいよ!おい!麗結ちゃんの席を開けろ!」
伊沢さんたちのグループとなにやら話してるのを賑やかな店内の音に遮られないようにかなり集中して盗み聞き。
そうか、そうだよね。
こんなところに来たって運良く俺の隣になんて来るわけないし。
俺以外に仲良い人なんて山ほどいるわけで。
仕事の延長なこの会で、私情持ち込みまくりな人間なんて俺だけだ。
「ここめっちゃ詰めたら入れるからこっちおいで!」
「いやいや!狭くなっちゃいますから!」
「いいのいいのー!」
「それに私そんなにお酒飲めないので皆さんの邪魔になっちゃう...」
「そうなの?どこか空いてるとこ...あ!志賀さんそこ空いてる?」
「えっ...あっ...!空いてます!ここ!!ここ!!」
急に話を振られて驚きながらも勇気をだして手招きをすると麗結さんが「志賀さんのお隣行きますね」とこっちに向かってきてくれた。
「失礼します」
「お疲れ様です、麗結さん」
「はぁ...!疲れたー!教授に呼び止められちゃって!」
「大変だったね」
「私も1杯だけ飲も!」
過去最高に彼女が近い。
胸がいっぱいで苦しいがさらに加速する。
「これ美味しいよ!」と揚げ物をこちらに寄せてくれたり、「飲みもの頼まないの?」と初めて会う他の奴らにも気を使ったりやっぱり天使。
彼女に夢中になりすぎちゃうから、気をまぎらわせためにいつも以上に飲んだ。
*
飲みすぎたせいで滅多にないのに気分が悪くなって外の空気を吸いに店の外に出た。
粉雪が舞っていて空気は冷たい。
手にふわりと乗ったそれが俺の体温でじわっと溶けた。
キラキラな街と相まって綺麗だ。
「志賀さん大丈夫?」
心を落ちつけて席に戻るともう解散する雰囲気で、急いで準備をしていると山森さんに肩を叩かれた。
「大丈夫大丈夫。山森さんもめっちゃ飲んだでしょ?」
少し無理をして平然を装って彼女の肩にポンっと手をのせる。
不思議だ。
麗結さん以外の女性とはこんなに簡単に話せるのに。
こんなに簡単に触れられるのに。
「わぁ...雪だ!」
さっきまで大人な姿で周りに気を使っていた君が店の外に出た瞬間子どもみたいにはしゃいでる姿を見て「そうだね」としか返せない。
君の肩にのった雪を「払ってあげる」なんて言いながら落としてあげることも出来ない。
きっとほかの女性ならできるのに。
「さみぃー!早く帰るぞ!」
伊沢さんの「解散!」の合図にみんながバラバラと離れていく。
ちらっと彼女を見る。
何故か彼女も俺の方をちらっと見て「ん?」と首を傾げてる。
「帰ろうか」
初めて勇気をだして言った言葉がこれか。
俺にとっては精一杯だったんだけど、一緒にとかもないし帰る方向逆だったら終わりじゃん。
「志賀さんどっちですか?」
「俺は...」
「私はこっちです」
彼女が指さしたのは俺が帰る方向とは真逆。
よかった...先に答えなくて。
「俺もそっちだから一緒に」
手持ち無沙汰な両手はコートのポケットに入れて彼女の1歩後ろを歩いた。