『いつか、』/ sg
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
12月ももう終盤にさしかかっていた。
夜になるといつもの街が光の街に変わる季節。
彼女もいないし、いつも通りの時間が流れる俺の日常はこんなときも退屈だ。
オフィスの扉を開けると、何やら廊下の先のリビングルームが騒がしい。
この時間からこの賑やかさは珍しいなと恐る恐る扉を開ける。
部屋の奥にちょこんと座ってる彼女の姿が視界に入ってはっとしていたところに「お!志賀くん」と伊沢さんがホワイトボードのマーカーを握りしめたままこちらに向かってきて遮られた。
「おはようございます。賑やかですね」
「明後日忘年会兼クリスマスパーティーやろうぜって話しててさ」
「ほぉ」
こういうのはあまり好きではない。
大勢でいるのも元から得意じゃないし。
1人で、もしくは少数でのんびりする飲みは好きなんだけどね。
去年までも
誘われてもなにかと理由をつけて断ってきた。
「志賀くんは今年も用事かな?」
「うっわ、すっごい嫌味な言い方」
「ははっ、冗談冗談。まあ自由参加だからさ」
ホワイトボードの前に戻って言った伊沢さんの背中を見ながらみんな楽しそうだな、と少し寂しくなりながらも今年も不参加でいいやと空いている席に荷物を下ろす。
「おはようございます」
「志賀さん、おはようございます」
空いてる席なんて言って、あえて彼女が座っている近くを選んでるんだからもうこれは気になる存在なんて言葉では言い表せない存在だ。
「なんかすごく盛り上がってますね」
「明後日っていってるのに今お店決めてるんですよ?」
「へぇ...あ、麗結さんも参加されるんですね」
ホワイトボードにメモ書きされてる参加メンバーの欄に彼女の名前を見つけて少しだけ心が揺らぐ。
女の子は麗結さんだけだ。
ただでさえ女性の少ない会社だからしょうがないんだけど。
「山森さん来てくれますよね...?ひとりじゃさすがに不安です」
「あー...来るんじゃない?彼女は」
「志賀さんは...?」
彼女の大きな瞳が完全に俺を捉えている。
賑やかな部屋の音が全く聞こえなくなるくらい彼女だけの世界に落ちてしまいそうだ。
「俺あんまりこういうの得意じゃなくてね」
「私もあんまり...」
「なのに参加するの?」
「ほら、1年目だし皆さんと仲良くなりたいじゃないですか」
「志賀さんとは仲良くなれましたけど」と続いた言葉にニヤけそうになるのを隠すために「へぇ...偉いな」ってホワイトボードを見つめ直す。
あんな男だらけの飲み会に彼女1人だったらどうする?
何も無いのは分かってるけど。
「じゃあ、予約するんで明日までにここに名前書いたり消したりしといて。あとここにいないやつも呼んでおいてー」
「解散!」と伊沢さんが力強くペンをホワイトボードの粉受けに戻すと話は終わったようだ。
「今日は志賀さんにお仕事教えていただけるんですね」
「なんか久しぶりですね」
「志賀さんお忙しいから」
「他の人に教えて貰ってたでしょ?」
「結構成長しましたよ!私が書いたやつ見てください」
嬉しそうにカバンの中を漁ってる彼女を見つめる。
今日は長い髪をまとめていて、彼女が動く度にポニーテールが揺れた。
麗結さんがここに来て半年くらい。
美術系だということで俺が教育係になった。
女性だと聞いた時は不安もあったけど、美術館の話とかをしていくうちにすぐに打ち解けた。
そして、少し違う感情が生まれ始めたのは最近のこと。
意識してしまったらダメだということは分かっていたのだけれど...
「どうですか?!」
「うん...読みやすい」
「褒められちゃった!言わせたけど笑」
「いやいや、言わされてないです」
頭の中は何故か参加する気の無いはずの忘年会兼クリスマスパーティーのことばかり。
横目でホワイトボードを見る。
誰も書いたり消したりしてないし、あんなに盛り上がってたのにみんな切り替えが早いな。
「志賀さんも来てくださいね」
「ん?」
「あれ」
視線で気づかれてしまったのか、彼女がホワイトボードを小さく指さす。
ここに参加したら、俺の退屈な日常は壊れてくれるだろうか。
というより、麗結さんともっともっと近づけるだろうか。
「そんなに言うなら...」
しょうがないな、という素振りを見せながらも気持ちはノリノリだった。
*
「あれ?志賀くんめずらっし。参加するなんて」
何となく恥ずかしくてめちゃめちゃ小さく名前を書いた。
講義があるらしく彼女は先に帰ってしまっていたから、行くよとちゃんと返事はできなかった。
後ろから参加者欄を見た伊沢さんがニヤニヤしてる。
「たまにはいいですよね」
「麗結ちゃんか」
「なっ...違いますよ」
「ふーん」
ポンっと背中を叩かれて「なんですか!」とやり返すと「まあ頑張れ」とだけ言い残して伊沢さんは鼻歌を歌いながら部屋を出ていった。
夜になるといつもの街が光の街に変わる季節。
彼女もいないし、いつも通りの時間が流れる俺の日常はこんなときも退屈だ。
オフィスの扉を開けると、何やら廊下の先のリビングルームが騒がしい。
この時間からこの賑やかさは珍しいなと恐る恐る扉を開ける。
部屋の奥にちょこんと座ってる彼女の姿が視界に入ってはっとしていたところに「お!志賀くん」と伊沢さんがホワイトボードのマーカーを握りしめたままこちらに向かってきて遮られた。
「おはようございます。賑やかですね」
「明後日忘年会兼クリスマスパーティーやろうぜって話しててさ」
「ほぉ」
こういうのはあまり好きではない。
大勢でいるのも元から得意じゃないし。
1人で、もしくは少数でのんびりする飲みは好きなんだけどね。
去年までも
誘われてもなにかと理由をつけて断ってきた。
「志賀くんは今年も用事かな?」
「うっわ、すっごい嫌味な言い方」
「ははっ、冗談冗談。まあ自由参加だからさ」
ホワイトボードの前に戻って言った伊沢さんの背中を見ながらみんな楽しそうだな、と少し寂しくなりながらも今年も不参加でいいやと空いている席に荷物を下ろす。
「おはようございます」
「志賀さん、おはようございます」
空いてる席なんて言って、あえて彼女が座っている近くを選んでるんだからもうこれは気になる存在なんて言葉では言い表せない存在だ。
「なんかすごく盛り上がってますね」
「明後日っていってるのに今お店決めてるんですよ?」
「へぇ...あ、麗結さんも参加されるんですね」
ホワイトボードにメモ書きされてる参加メンバーの欄に彼女の名前を見つけて少しだけ心が揺らぐ。
女の子は麗結さんだけだ。
ただでさえ女性の少ない会社だからしょうがないんだけど。
「山森さん来てくれますよね...?ひとりじゃさすがに不安です」
「あー...来るんじゃない?彼女は」
「志賀さんは...?」
彼女の大きな瞳が完全に俺を捉えている。
賑やかな部屋の音が全く聞こえなくなるくらい彼女だけの世界に落ちてしまいそうだ。
「俺あんまりこういうの得意じゃなくてね」
「私もあんまり...」
「なのに参加するの?」
「ほら、1年目だし皆さんと仲良くなりたいじゃないですか」
「志賀さんとは仲良くなれましたけど」と続いた言葉にニヤけそうになるのを隠すために「へぇ...偉いな」ってホワイトボードを見つめ直す。
あんな男だらけの飲み会に彼女1人だったらどうする?
何も無いのは分かってるけど。
「じゃあ、予約するんで明日までにここに名前書いたり消したりしといて。あとここにいないやつも呼んでおいてー」
「解散!」と伊沢さんが力強くペンをホワイトボードの粉受けに戻すと話は終わったようだ。
「今日は志賀さんにお仕事教えていただけるんですね」
「なんか久しぶりですね」
「志賀さんお忙しいから」
「他の人に教えて貰ってたでしょ?」
「結構成長しましたよ!私が書いたやつ見てください」
嬉しそうにカバンの中を漁ってる彼女を見つめる。
今日は長い髪をまとめていて、彼女が動く度にポニーテールが揺れた。
麗結さんがここに来て半年くらい。
美術系だということで俺が教育係になった。
女性だと聞いた時は不安もあったけど、美術館の話とかをしていくうちにすぐに打ち解けた。
そして、少し違う感情が生まれ始めたのは最近のこと。
意識してしまったらダメだということは分かっていたのだけれど...
「どうですか?!」
「うん...読みやすい」
「褒められちゃった!言わせたけど笑」
「いやいや、言わされてないです」
頭の中は何故か参加する気の無いはずの忘年会兼クリスマスパーティーのことばかり。
横目でホワイトボードを見る。
誰も書いたり消したりしてないし、あんなに盛り上がってたのにみんな切り替えが早いな。
「志賀さんも来てくださいね」
「ん?」
「あれ」
視線で気づかれてしまったのか、彼女がホワイトボードを小さく指さす。
ここに参加したら、俺の退屈な日常は壊れてくれるだろうか。
というより、麗結さんともっともっと近づけるだろうか。
「そんなに言うなら...」
しょうがないな、という素振りを見せながらも気持ちはノリノリだった。
*
「あれ?志賀くんめずらっし。参加するなんて」
何となく恥ずかしくてめちゃめちゃ小さく名前を書いた。
講義があるらしく彼女は先に帰ってしまっていたから、行くよとちゃんと返事はできなかった。
後ろから参加者欄を見た伊沢さんがニヤニヤしてる。
「たまにはいいですよね」
「麗結ちゃんか」
「なっ...違いますよ」
「ふーん」
ポンっと背中を叩かれて「なんですか!」とやり返すと「まあ頑張れ」とだけ言い残して伊沢さんは鼻歌を歌いながら部屋を出ていった。