『花火から逃げて』/ kwkm
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まだ花火大会は終わっていないから、恐る恐る近づいた家には誰もいなかった。
今まで貯めてきた金と、着替えを数着リュックサックに詰め込んで家を出て、斜め前の麗結の家にも寄ると無理やり服を詰めさせた。
不安そうな顔をした彼女は「ダメだよ...こんなの...」と呟いたけど俺が無視をして「行くよ」と言ったらそれきり何も言わなくなっていた。
自転車に跨ると、いつものように彼女が後ろに乗って腹に腕を回す。
もうこれも出来なくなるって言うのか?
そんなのいい訳ないやん。
そんなの...耐えられないやん....
「どこいくの?きっとすぐに見つかっちゃうよ...怒られるよ...」
「...どうすっかなぁ...」
俺がひたすら自転車を漕いで向かったのは、花火を見ていた地元の田舎から少し離れた街中。
駅前だから人がたくさんいるし、花火大会が終わればこの駅に人が溢れかえるはずだ。
人を隠すなら人の中。
それが一番賢いと思ったから。
さっきまで背中に小さく聞こえていたもう花火の音は聞こえなくなっていた。
「...なぁ、どうしてなん?」
ここまで来たら母親達はすぐには見つけられないだろっていうところまで来て、小さな公園を見つけたから自転車を降りて休憩。
本当に逃げ切れるなんて思っていない。
警察なんかに捜索願いを出されたら1発で見つかるのは分かっている。
でも、でも、少しでも時間が欲しかった。
子どもな俺には、こうすることしか時間を作る方法がないと思ったんだ。
「お父さんの仕事で。最初は私とお母さんはこっち残るって言ってたんだけどね。やっぱり事情が変わって」
「なんで今更言うんや...もっと...言うタイミングあったやろ...」
「何度も言おうと思ったの!...でもいざとなると言えなくて...だから今日がラストチャンスだなぁってずっと思ってて、お母さん達と一緒にいたらちゃんと拓朗とお別れできないと思ったから...」
「わがまま言ってごめんなさい」と彼女が深く頭を下げる。
「お別れ」という彼女の口から出たその言葉が現実として重く突き刺さっていた。
ジメジメと暑い外の空気に、重すぎるふたりの雰囲気は少しだけ合っていた。
今まで貯めてきた金と、着替えを数着リュックサックに詰め込んで家を出て、斜め前の麗結の家にも寄ると無理やり服を詰めさせた。
不安そうな顔をした彼女は「ダメだよ...こんなの...」と呟いたけど俺が無視をして「行くよ」と言ったらそれきり何も言わなくなっていた。
自転車に跨ると、いつものように彼女が後ろに乗って腹に腕を回す。
もうこれも出来なくなるって言うのか?
そんなのいい訳ないやん。
そんなの...耐えられないやん....
「どこいくの?きっとすぐに見つかっちゃうよ...怒られるよ...」
「...どうすっかなぁ...」
俺がひたすら自転車を漕いで向かったのは、花火を見ていた地元の田舎から少し離れた街中。
駅前だから人がたくさんいるし、花火大会が終わればこの駅に人が溢れかえるはずだ。
人を隠すなら人の中。
それが一番賢いと思ったから。
さっきまで背中に小さく聞こえていたもう花火の音は聞こえなくなっていた。
「...なぁ、どうしてなん?」
ここまで来たら母親達はすぐには見つけられないだろっていうところまで来て、小さな公園を見つけたから自転車を降りて休憩。
本当に逃げ切れるなんて思っていない。
警察なんかに捜索願いを出されたら1発で見つかるのは分かっている。
でも、でも、少しでも時間が欲しかった。
子どもな俺には、こうすることしか時間を作る方法がないと思ったんだ。
「お父さんの仕事で。最初は私とお母さんはこっち残るって言ってたんだけどね。やっぱり事情が変わって」
「なんで今更言うんや...もっと...言うタイミングあったやろ...」
「何度も言おうと思ったの!...でもいざとなると言えなくて...だから今日がラストチャンスだなぁってずっと思ってて、お母さん達と一緒にいたらちゃんと拓朗とお別れできないと思ったから...」
「わがまま言ってごめんなさい」と彼女が深く頭を下げる。
「お別れ」という彼女の口から出たその言葉が現実として重く突き刺さっていた。
ジメジメと暑い外の空気に、重すぎるふたりの雰囲気は少しだけ合っていた。