「戻ってこねぇなぁ」って伊沢の声でさらに焦る。

麗結ちゃんが具合悪そうにしていたのを伊沢に気づかれて少し悔しかったけど、今となってはそんなことはどうでもいい。




「え？！麗結さん？！」
「ちょっと！なんでそんなでかい声で言うの！」
「ごめんごめん」


麗結ちゃんが気になり始めたのは山本が麗結ちゃんを紹介しに来た日。
一目惚れって本当にあるんだって心から思うほどの一目惚れ。

仕事も性格も真面目で、仕事のことをよく僕に相談してくれるようになってさらに気になる存在になっていた。

酔った勢いで伊沢にその話をしてしまったときには、もう気になる存在ではなく好きな人だった。


「今日も仲良しだなぁー」
「いやぁ、あついねぇー」


次の日オフィスに行くと須貝さんやら河村のウザイ視線が気になって、伊沢に問い詰めたら「僕たちも協力しますって！」とか言いながらウインクされたからさらにウザかった。


まあそんなこんなで僕は小さな恋心を抱きながら、全く行きたくもない地獄のような暑さの外撮影も麗結ちゃんとなら参加したいと思うわけで。

日傘をしっかり持って麗結ちゃんの隣に並んで、暑いかなって思って傘を思いっきり傾けてあげたらじーっと見上げられてガン見された。

あれ？変なことしたかな？って思いながらも上目遣いっぽい感じが可愛すぎてちょっと体温が上がった。



「え？戻ってこねぇの？！俺見てくるわ」って須貝さんが入口の方に歩き出したのを「待って！」と勢いで止めていた。

日傘を持っていたけど「これ持ってて！」って伊沢に無理やり押し付けて暑くて嫌だとか言ってたのに思いっきり走った。

運動は苦手じゃないけど、まさか身体が勝手に動くなんて思ってなくて自分でびっくり。


麗結ちゃんが向かった方へひたすら走ると、自販機の前に小さくうずくまっている人の姿が見えた。


「麗結ちゃんっ...？！」


はぁはぁと息を整えながら、彼女の身体を揺らしてみるけど返事はなくてとりあえず横に散らばっている彼女が買ったであろうペットボトルを首にあててみる。


「福良さん！」


あとから走ってきた伊沢と須貝さんを見て「ちょっと手伝って！」と手を振った。