ひたすら、ひたすら、雨を願っていた。

なんで今日だけこんなに晴天なんだ？

本当に、俺の心を表現するのが上手いな。
感心するほどに。


いつも通り、朝が来て、スマホを開いてみると、メンバーから大量の連絡。


【今日は撮影するから伊沢来てよ？】
【伊沢さんに見ていただきたい資料が山積みです】
【明日フットサルやるから来いよ！】


俺の居場所は彼女の隣だけではない。

とても有難いことだ。

ごめんな、ごめんな、こんな弱いトップで。


【また連絡するわ】


全ての連絡にそう返した。

またっていつだよ、


・


そのままスマホを弄り続ける。
この小さな機械には、彼女との楽しかった日々が詰まっている。

付き合って直ぐに撮った写真。
記念日の小旅行の写真。
いつだかの寝顔の写真。

俺はいつでも最高の笑顔で笑ってて、彼女もすげぇ幸せそうで。

ずっとこうしていられると思ってたよ。


おはよう、おやすみ、大好きだよ、が溢れたトーク画面。

喧嘩しても、ごめんねを何度も言いあったトーク画面。


麗結、幸せにしてあげられなくてごめん。

全て、俺が悪かったね。

今更後悔しても遅いってわかってるんだけどさ。


君と出会ってから1年とちょっとが過ぎたね。

俺はその辺から仕事がさらに忙しくなって、君にはたくさん寂しい思いをさせていた気がする。

それでも俺の彼女でいてくれた君が、

在り来りな言葉で申し訳ないけれど、

世界で一番大好きだったよ。


こんなことになっても尚、俺の心は君を離さないんだ。

まだ、俺は君を幸せにできるんじゃないかって思ってしまうんだ。

君がほかの男と過ごす日々を想像するだけで、消えてしまいたく....


今までありがとうね


・


「あーあ。晴れてんなぁ」


決意を固めた俺の心そのものだ。

もう何も考えなくていい。

全く寝てないのに今日はいつもと違ってとても気分がいい。

すっかりもやもやが晴れていた。


土砂降りなら良かったのにな。

きっとみんな傘で上が見えないでしょ。


何日ぶりかに窓を開けるとカーテンがぶわっと揺れる。

いい風だ。

俺に白い羽根が生えていたら良かったのにな。

そしたらこの風に乗ってどこまでも空を旅できただろうに。

もうそんなことを考えるのもやめにしよう。



「麗結、本当に大好きだよ」

「さよなら」



幸せになれよ、は声にならなかった。


スマホを先に投げ捨てて、その後を追うようにベランダの柵を越えた。