キャンディ / kwkm
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「そろそろ行こか」
そう言いながら立ち上がる時、拓朗のスイッチは入る。店に入る時は離れ離れだった手が繋がれるのはこの時。私の好きな拓朗が見られるのもこの時。
「拓朗?」
「ん?どしたん?結構美味しかったね」
「うん...拓朗あんまり楽しくないのかなって思ったから...」
「俺あんまり感情を表に出すのが得意じゃなくて。ごめんな」
「ううん...それが聞けただけで十分」
繋がれている手をぎゅっと握る。私は愛されていると思った。
それと同時くらいに「いい?」と、拓朗が外側の手で指さすのはいつもの大人が出入りする場所。私は求められていると思った。こんなに大好きな人に。
この行為をする時、私は幸せだった。
拓朗は「可愛い」「好き」「大好き」「愛している」とたくさん囁いてくれるし、一生懸命私を愛してくれる。
必死に私の上で踊る姿も、私の中で果てる時も、全部全部愛おしかった。心の中で何度も離れたくないと願った。
「ねぇ」
「ん?」
「私たち...付き合ってるんだよね?」
ベットのふちに腰掛ける彼の背中にそう問いかけると、おもむろに立ち上がって自分のカバンから何かを取り出して戻ってきた。
「口開けて」と言いながら唇を撫でるから、言う通りにするとすっと口の中に何かを入れられる。固くて甘い。舌の上を転がるのはキャンディ。
「舐めてて、これ吸うから」
「えっ...吸う...んだ...ね」
「うん。たまにね。...ごめんね」
そのごめんねの意味はよく分からなかった。
でも多分、タバコを吸うことを隠していたからか嫌な煙が出るからだ。
そうだと思っている、そういうことにしている。
手のひらサイズの箱から1本それを取り出して火をつける。それの放つ独特の匂いが好きではなかったけれどキャンディがそれをかき消してくれていた。
それはまるで拓朗との関係をうまーく濁して甘い甘いところだけ見ている私のようだった。
「答えてくれないの?」
少ししつこかったかな。
拓朗が怒ったらどうしよう、嫌われたくて言ったわけじゃないんだよ。
「んっ...」
そんな言い訳は必要なかったみたいで、その日も言いたいことは拓朗のキスによって塞がれる。
甘いいちご味に重なった拓朗の唇は少しだけ苦かった。
「麗結は俺から離れないでしょ」
「そっ...そうだけど...」
「麗結は俺の事好きやろ?」
「...うん...」
「可愛いね」
頭に乗せられた大きな手。
「もう何も言うな」とでも言いたげなその手は少し力が入っていた。
私は悟ったのだ。
恋をしているのは自分だけ。
拓朗に同じ感情はない。
ただ、狡い拓朗に、踊らされていたのだと。
・
「麗結はどこ行きたいん?」
「あ、あの映画見たい!」
「あれ怖そうやん」
「拓朗ビビりだもんね」
「ビビりじゃないわ。行くか」
「あ、強がってる」
2人でデートなのに手を繋がないことに、慣れた。
外から見たら完全に恋人同士なのに全くそんなことはない2人の関係に、慣れた。
ご飯の割り勘に、ホテル代の割り勘に、慣れた。
「飴食べる?」
「うん、ちょうだい」
「あーん」
拓朗の声に口をうっすら開けると、すっと重なったのは唇。驚いて閉じた目を開けると舌がゆっくり侵入してきて私の舌に絡まる。
「ちょっ...と!」
「なんか欲しそうな口やったから。えろいなぁって思って」
「それは飴が欲しくって...」
「俺のキスの方がええやろ」
彼はわかっている。わかってるの。
それでも私が欲しいときに欲しいものはくれない。
今日ならくれるかな。
もっとして、って彼の手に自分の手を重ねてみたけれど一瞬で振り払われた。
繰り返し続けてもう、1年。
でも多分、私はこれでいいんだ。
そうだと思っている、そういうことにしている。
口の中のキャンディは、今日も甘かった。
そう言いながら立ち上がる時、拓朗のスイッチは入る。店に入る時は離れ離れだった手が繋がれるのはこの時。私の好きな拓朗が見られるのもこの時。
「拓朗?」
「ん?どしたん?結構美味しかったね」
「うん...拓朗あんまり楽しくないのかなって思ったから...」
「俺あんまり感情を表に出すのが得意じゃなくて。ごめんな」
「ううん...それが聞けただけで十分」
繋がれている手をぎゅっと握る。私は愛されていると思った。
それと同時くらいに「いい?」と、拓朗が外側の手で指さすのはいつもの大人が出入りする場所。私は求められていると思った。こんなに大好きな人に。
この行為をする時、私は幸せだった。
拓朗は「可愛い」「好き」「大好き」「愛している」とたくさん囁いてくれるし、一生懸命私を愛してくれる。
必死に私の上で踊る姿も、私の中で果てる時も、全部全部愛おしかった。心の中で何度も離れたくないと願った。
「ねぇ」
「ん?」
「私たち...付き合ってるんだよね?」
ベットのふちに腰掛ける彼の背中にそう問いかけると、おもむろに立ち上がって自分のカバンから何かを取り出して戻ってきた。
「口開けて」と言いながら唇を撫でるから、言う通りにするとすっと口の中に何かを入れられる。固くて甘い。舌の上を転がるのはキャンディ。
「舐めてて、これ吸うから」
「えっ...吸う...んだ...ね」
「うん。たまにね。...ごめんね」
そのごめんねの意味はよく分からなかった。
でも多分、タバコを吸うことを隠していたからか嫌な煙が出るからだ。
そうだと思っている、そういうことにしている。
手のひらサイズの箱から1本それを取り出して火をつける。それの放つ独特の匂いが好きではなかったけれどキャンディがそれをかき消してくれていた。
それはまるで拓朗との関係をうまーく濁して甘い甘いところだけ見ている私のようだった。
「答えてくれないの?」
少ししつこかったかな。
拓朗が怒ったらどうしよう、嫌われたくて言ったわけじゃないんだよ。
「んっ...」
そんな言い訳は必要なかったみたいで、その日も言いたいことは拓朗のキスによって塞がれる。
甘いいちご味に重なった拓朗の唇は少しだけ苦かった。
「麗結は俺から離れないでしょ」
「そっ...そうだけど...」
「麗結は俺の事好きやろ?」
「...うん...」
「可愛いね」
頭に乗せられた大きな手。
「もう何も言うな」とでも言いたげなその手は少し力が入っていた。
私は悟ったのだ。
恋をしているのは自分だけ。
拓朗に同じ感情はない。
ただ、狡い拓朗に、踊らされていたのだと。
・
「麗結はどこ行きたいん?」
「あ、あの映画見たい!」
「あれ怖そうやん」
「拓朗ビビりだもんね」
「ビビりじゃないわ。行くか」
「あ、強がってる」
2人でデートなのに手を繋がないことに、慣れた。
外から見たら完全に恋人同士なのに全くそんなことはない2人の関係に、慣れた。
ご飯の割り勘に、ホテル代の割り勘に、慣れた。
「飴食べる?」
「うん、ちょうだい」
「あーん」
拓朗の声に口をうっすら開けると、すっと重なったのは唇。驚いて閉じた目を開けると舌がゆっくり侵入してきて私の舌に絡まる。
「ちょっ...と!」
「なんか欲しそうな口やったから。えろいなぁって思って」
「それは飴が欲しくって...」
「俺のキスの方がええやろ」
彼はわかっている。わかってるの。
それでも私が欲しいときに欲しいものはくれない。
今日ならくれるかな。
もっとして、って彼の手に自分の手を重ねてみたけれど一瞬で振り払われた。
繰り返し続けてもう、1年。
でも多分、私はこれでいいんだ。
そうだと思っている、そういうことにしている。
口の中のキャンディは、今日も甘かった。