結局拓朗の家から学校に行った次の日。
髪はボサボサだし、ワイシャツは昨日と同じものでちょっと気持ち悪かった。


｢おーい、麗結寝るなって！｣
｢ん...あ、先生...？｣
｢今は数学の時間！｣


名前を呼ぶ声がしたから、伏せていた頭を上げると福良先生が教科書でぽんっと優しく私の頭を叩いた。

昨日はほとんど寝てなくて、気づいたら寝てたみたい。

数学の先生でもあり、担任でもある先生は少し心配そうに眉を下げて私の隣にしゃがんだ。


｢大丈夫？｣
｢え...？｣
｢熱は無いね｣


あまりにも自然に額に手を当ててそう言うから、少しびっくりした。

福良先生は友達みたいに仲良しで、でも大人で、先生で。

初めて勉強を頑張ろうかなって思わせてくれた恩人。


｢でも心配だからこれ終わったら保健室行こうね｣


それだけ言い残して、｢はいはい！もう解き終わったよね？！｣って教卓の方へ戻って行った。

確かに私は授業で寝たりすることはないし、それが心配させてしまった原因なのはうなずける。

別に体調が悪いわけじゃなかったから申し訳なくなった。


｢大丈夫？｣
｢あの！全然大丈夫ですから！体調悪い訳じゃなくて！眠かっただけで！｣
｢ほんとに？なんか元気ないように見えたんだけどなぁ｣
｢いやいやいや...｣


拓朗に愛されすぎて疲れてるんじゃないですか？

なんて幸せな疲れですね。

拓司も元気そうだし、元気をなくすようなことなんてないもん。

...拓朗が｢死ぬから｣って言ったその時の目が、ちょっと怖かったこと以外は。


｢ん、そっか。またなんかあったら相談しろよ？お前はいい子だからな！｣
｢えっ？！｣


今度は頭に手が伸びて、ぽんぽんと撫でられた。


｢ほら、早く行かないと次遅れるよ？｣
｢先生が引き止めたんでしょ！｣
｢あれ？そっか笑｣


先生がそう言ってくれたからまだ大丈夫って心は軽くなった。