ほら、よく聞くじゃない。

「付き合ってみたらイメージと違った」ってやつ。

しかもそれはよく、悪い方に使われがちだったりする。

付き合った瞬間冷たくなった、とか。

付き合ってもほかの女の子と遊ぶような人だと思わなかった、とか。

付き合う前に、付き合ってからを想像していたのと全く違ったなぁってやつ。


私もまさに今その状況に陥っている。


「付き合ってみたらイメージと全然違う」現象に。


....逆の意味で。



・



「おはようございます」


秋だから少し落ち着いた色にしてみました、なんて言ってたけど結構明るめな茶色の髪をなびかせて

今日も彼はやってきた。


「麗結さん、昨日のこの記事なんですが、ここの表現がちょっと伝わりにくいかなと思いましたので2つほど別案を持ってきました。お願いします」


このオフィスでは少し浮いているその派手な見た目とは裏腹に、彼の仕事ぶりはとても真面目で正確で丁寧。


編集長と同じ分だけクイズを追い続けているだけある。

勉強もできるしね。

人は見た目じゃない、を私に実演で教えてくれたのは川上さんだったかもしれない。



・



「好きです、麗結さんのこと」


ある日、そんな川上さんから告白を受けたのだ。

正直驚いた。

彼と私が話すのはオフィスだけで、その中でも記事のチェックとかが話すことの主な内容でそんなに仲良いと言えるような関係ではなかったから。


「...私？」
「はい。あ、ちゃんと伊沢さんには確認したので安心してください。社内恋愛ありらしいです」
「仕事早...」


こんなところでも真面目な彼の態度に吹き出して笑うと「なんで笑うんすか」って少し恥ずかしそうな川上さん。

川上さんのことは全然よく知らない。

でも、知りたいと思ってしまった。

知りたいと、思っていた。


「これって告白...ですよね？」
「告白です」
「付き合う...ってことだよね？」
「麗結さんがよければ、ですけど」


誤魔化すようにマグカップに口をつけて目を伏せる。


「私でよければ...？」
「疑問形？...よかった。断られたら気まずいなぁって思ってたんですよ」


あ、笑った...
めっちゃいい顔で笑ってる...

もちろん何度も見たことあるんだよ。

動画の撮影の時とか、他の方とお話してる時に。

すごくクールそうに見えてよく笑うし、誰よりも何よりもイベント事や楽しいことが大好きだから。


でも、私にだけその笑顔が向けられてると思ったら
すっごく嬉しかった。