仕事ばかりであまり会えないから、彼女と会えるときはうんと甘えてばかりだった。

いつもひっついていたいからちょっかいばっか出てたし、隙あればイイコトすることばっか考えてた。

彼女にとってそんな男は実は嫌なのかもしれないという俺の考えはどうやら違ったみたいだ。


「ほんとに？」
「うんっ...」
「じゃあ...なんで...」


拒否したの？という言葉は続ける前に飲み込んだ。
聞く前に考えよう、他になんの要因があるのか。
答えをなんとなく予測しておけば、答えが来た時に凹まなくて済むはず。


「あの...ね。でっ...出来ないから...」
「出来ない？」
「...うん」


彼女がこくりと頷いて下を俯いたまま「ごめんね」と呟く。

すぐに言葉の意味が理解できず、脳内で出来ないことと、彼女が何を謝ったのか解析してやっと理解をした。


「そーゆーことか！はぁ...よかった...」


緊張の糸が緩んでまた彼女をぎゅっと抱きしめる。


「拓司くんいっつもくっついてきてくれてすっごく嬉しいんだけど...いつもみたいにそれに飲まれちゃって、するぞって気分になった時、出来ないっていうのは拓司くんガッカリするかなぁ...って思って」
「ははっ、俺そんなにがっついてるように見えてたのか」
「見えるよ！いっつもくっついてるじゃん！」
「確かにがっついてるかもね。今も食べたくてしょうがないもんな」


無理やりやってやろうなんて絶対思わないけど、売り切れと言われると急に欲しくなるあの衝動と同じでちょっと残念になる。


「でも別に...拓司くんがそういう雰囲気にするために身体触ってくるのかは私にもわからないし...わざわざ今日はそういう日だから出来ないよなんて言うのも違うなぁ...って悩んでて」
「ごめん、ほとんどがそういう雰囲気にするためだわ」


「ほーら！！がっついてる！！」とこちらを向いて笑う彼女。

その顔が見れるだけで幸せ、ってこのことだ。