「あーあ！負けちゃったなぁー！」


なんて清々しい位の棒読みで言いながら隣を歩くのは私のハイスペックな彼氏。

それに対してど平凡な彼女は全然納得がいかないまま少し不機嫌な顔をして歩く。


「ねぇ！ごめんね？アイス食べたかったの！」


結果、さっきの試合の最後に発表されるWINNERってところに現れたのは私が操っていたピンクのお姫様だった。

何が納得いかないって。
ゲームが始まった瞬間、彼は私の後ろに回ってぎゅっとハグをしたと思ったら、お腹に回された手には一応コントローラーを持っていたんだど全然本気じゃなかった。

肩に顎を乗っけてたから耳元で「麗結ちゃん！今チャンスだよ！」とかめちゃめちゃでかい声で言うからちょっとうるさかったし。


「手加減なしって言ったのに」
「手加減なんてしてないじゃん。俺が麗結ちゃんの誘惑に勝てなかったから負け。抱きつきたくなったの」
「なんか違う...」


とかなんとか言いながらも彼の家を出てコンビニで2人がお気に入りのアイスを買った。

彼が当たり前のように買ったものを持ってくれて、反対の手は私の手を握っている。


「ありがとう」
「へ？なにが？あ、これ持ってあげてること？当たり前じゃん」
「ちがーうよ！勝たせてくれて」
「あぁ、俺もアイス食べたかったからね？」


絶対違う。
私が負けず嫌いなの知ってて勝たせてくれたんだと思うし、私がアイス食べたいと言ったからアイスが食べたいと言ってくれてるんだと思う。


「俺はこれからも多分ずっと麗結ちゃんを甘やかしちゃいそうだなぁ」
「ほーら！手加減じゃん！」
「手加減でもなんでもいいじゃん。俺には勿体ないくらい可愛い麗結ちゃんが大切なんだから」


「溶けちゃうから早く帰ろ！」と袋を掲げた彼に飛びつくと「うわぁ！びっくりしたなぁ」なんて照れた顔で笑った。