「おーい、なんで今日はそんな遠くに座ってんの？」


いつものソファーで作業をする伊沢さんが、少し離れたダイニングテーブルでぼーっとしていた私を見る。

初めてできた彼氏だもん。
初めて付き合えた好きな人だもん。
伊沢さんにキス...して欲しいし...

いやいや、欲張らない！
まずはハグ...して欲しいし...！！


「あー！ムリ無理無理！！心臓もたない！」


足をバタバタさせて悶えていると「ねえ、どうしたの？今日変だよ？」って気づいたら私のすぐ後ろに大好きな彼。


「あっ、いやっ！そうじゃなくて」
「なんか悩み事？俺知識だけはあるから解決できることは手伝うよ！」
「んー...そうじゃなくてですね」
「そうじゃなくてですね？」
「伊沢さんじゃないと解決できないんですけど伊沢さんに言うのはちょっとっていうか...なんていうか...」
「ん？俺に出来ることならなんでも言ってよ。...一応彼氏なんだし」


少し照れくさそうに目をそらすと、「改まると恥ずかしいな」って笑う。

私の彼氏今日も最高に尊い。


「伊沢さんは...私の事...すっ...好きなんですよね？」
「ははっ、なんでそんなこと聞くの？好きだよ」


その「好きだよ」があまりの破壊力すぎていつもここでハートを撃ち抜かれて終わってしまうのだ。


「じゃあ...はっ...はっ...」
「は？」


こんな大きなキラキラした目でじーっと見られたら耐えられない。

イスを思いっきり引いて、立ち上がると両腕を大きく広げる。

ハグしてのポーズなんだけど、肝心なそれは言葉にならなくて、伊沢さんも目の前で同じように両腕を広げて私の真似っ子をしてる。


「ハッ..ノイの塔って結構頭使いますよねぇ！！」
「...ハノイの塔？あれは流れさえ分かれば簡単だよ？今度やってみようか」


うんうんと頷きながら「このポーズ何？麗結さんがやってると可愛いね」なんて結局何も進展しないまま。

あーもう！！
この付き合いを進展させる方法を教えてください...！！