ep.28 ふたりの場所。/ izw
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バレンタインにいい思い出がない。
その先入観から、大切な拓司くんのことを信じることが出来なかった。
バレンタインだもんな、嫌なことが起こる日だからな、しょうがないよね。
なんて思って強がった自分がいた。
その結果、大好きだった彼を苦しめてしまっていた。
「別れてないよ」
ずるいかもしれないけれど、それは事実。
だって私たち始まったけど終わってない。
拓司くんは待っていてくれた、こんな私の事を。
「ごめんなさい、勝手なことして」
「ほんとそれ、マジでウザかったわ」
「ごめん」
「知ってる?俺が今何してるか」
「知るわけないじゃん、4年振りだよ?」
「俺麗結と会えない間にしゃちょさんになつてんだよ?」
「...社長?!」
今日拓司くんと会えたことよりもビックリしたかもしれない。そういうことにしとく。
私もそうだけど彼も変わっている。
物知りで自分をしっかりもってる彼だもん、社長にもなるよ。
もしかしたらこんなこと言っててもパートナーだっているかもしれない。
「彼女は?いないの?」
「麗結はいないの?彼氏」
「いるよ、って言ったらどうすんの」
「戦う」
「何で戦うの?」
「学力かな」
「それは中々勝てる人いないかもね」
「いんの?」
「いないよ」
「うん、俺も」
「ずるいなぁ、いつも絶対自分からは教えてくれないもんね」
そんなに長く居たつもりはないけれど、気づいたら外が真っ暗になっていた。
お互い明日も仕事なはずだし、早く帰らなきゃかな。
拓司くんはどうなんだろ、肝心な今の話はあまりできてないや。
「さて、帰りますか」
「そうだね、明日も仕事だし」
「まあ俺はこの後も空いてるけど」
「社長さん仕事戻らなくていいの?」
「うちフレックスタイム制だから」
「社長さんにも適応されてるのね」
「俺は適応されてなくても勝手にやるけどさ」
「まあ私も空いてるけどね」
「じゃ行くか。聞きたいことなんも聞けてねぇし」
「さっきひとつでいいって言ってなかった?」
それは流石に嘘だろ、と笑いながらカバンから財布を取り出す。
私も慌てて財布を探す。 拓司くんはめんどくさいからという理由で割り勘が嫌いだから。
いつもいつも私がご馳走になってた、あの時も。
「ゴチになりまーす」
「え?」
拓司くんの財布から出てきたポップなデザインが賑やかな2つ折りのカードが手渡された。
中は見なくても分かる、だってこれ、私が書いたやつだ。
「有効期限書いてなかったから今日使うわ、もしかしたら4年後のバレンタインとか決まってるかもしれねぇし」
“カフェのコーヒー1杯だけ奢ってあげる券”
確かに書いた。他にも書きたいことはたくさんあったんだけど、いつも拓司くんが払ってくれるのが申し訳なくて。それにありがとうも上手く言えてなかったから。
「1杯だけってどんだけケチなのよ私」
「1杯だけでいいけどちゃんとその下のやつもやらせてくれるんだよね?」
“好きなだけハグしていいよ”
の文字がその下にめちゃめちゃ小さく書いてある。これはさすがに覚えていない。顔がどんどや熱くなるのがわかる。
「無理」
「え、じゃあこれ今度にする」
「コーヒーは奢るよ」
「コーヒー奢んなくていいからこっちくれ」
「それは文字が小さいから無効」
「おい!それは俺のせいじゃねぇじゃん!」
ぶぅーと口を尖らせた彼はカフェのお兄さんに「こういう奴なんすよ」とあたかも自分のものかのように私を雑に紹介する。
それがすごく嬉しくて、今度は目頭が熱くなる。
「またぜひおふたりでいらしてください」
「もちろん。ここは俺らふたりの場所なので」
「勝手にね」
バレンタインにひとついい思い出ができた、そう思った。
その先入観から、大切な拓司くんのことを信じることが出来なかった。
バレンタインだもんな、嫌なことが起こる日だからな、しょうがないよね。
なんて思って強がった自分がいた。
その結果、大好きだった彼を苦しめてしまっていた。
「別れてないよ」
ずるいかもしれないけれど、それは事実。
だって私たち始まったけど終わってない。
拓司くんは待っていてくれた、こんな私の事を。
「ごめんなさい、勝手なことして」
「ほんとそれ、マジでウザかったわ」
「ごめん」
「知ってる?俺が今何してるか」
「知るわけないじゃん、4年振りだよ?」
「俺麗結と会えない間にしゃちょさんになつてんだよ?」
「...社長?!」
今日拓司くんと会えたことよりもビックリしたかもしれない。そういうことにしとく。
私もそうだけど彼も変わっている。
物知りで自分をしっかりもってる彼だもん、社長にもなるよ。
もしかしたらこんなこと言っててもパートナーだっているかもしれない。
「彼女は?いないの?」
「麗結はいないの?彼氏」
「いるよ、って言ったらどうすんの」
「戦う」
「何で戦うの?」
「学力かな」
「それは中々勝てる人いないかもね」
「いんの?」
「いないよ」
「うん、俺も」
「ずるいなぁ、いつも絶対自分からは教えてくれないもんね」
そんなに長く居たつもりはないけれど、気づいたら外が真っ暗になっていた。
お互い明日も仕事なはずだし、早く帰らなきゃかな。
拓司くんはどうなんだろ、肝心な今の話はあまりできてないや。
「さて、帰りますか」
「そうだね、明日も仕事だし」
「まあ俺はこの後も空いてるけど」
「社長さん仕事戻らなくていいの?」
「うちフレックスタイム制だから」
「社長さんにも適応されてるのね」
「俺は適応されてなくても勝手にやるけどさ」
「まあ私も空いてるけどね」
「じゃ行くか。聞きたいことなんも聞けてねぇし」
「さっきひとつでいいって言ってなかった?」
それは流石に嘘だろ、と笑いながらカバンから財布を取り出す。
私も慌てて財布を探す。 拓司くんはめんどくさいからという理由で割り勘が嫌いだから。
いつもいつも私がご馳走になってた、あの時も。
「ゴチになりまーす」
「え?」
拓司くんの財布から出てきたポップなデザインが賑やかな2つ折りのカードが手渡された。
中は見なくても分かる、だってこれ、私が書いたやつだ。
「有効期限書いてなかったから今日使うわ、もしかしたら4年後のバレンタインとか決まってるかもしれねぇし」
“カフェのコーヒー1杯だけ奢ってあげる券”
確かに書いた。他にも書きたいことはたくさんあったんだけど、いつも拓司くんが払ってくれるのが申し訳なくて。それにありがとうも上手く言えてなかったから。
「1杯だけってどんだけケチなのよ私」
「1杯だけでいいけどちゃんとその下のやつもやらせてくれるんだよね?」
“好きなだけハグしていいよ”
の文字がその下にめちゃめちゃ小さく書いてある。これはさすがに覚えていない。顔がどんどや熱くなるのがわかる。
「無理」
「え、じゃあこれ今度にする」
「コーヒーは奢るよ」
「コーヒー奢んなくていいからこっちくれ」
「それは文字が小さいから無効」
「おい!それは俺のせいじゃねぇじゃん!」
ぶぅーと口を尖らせた彼はカフェのお兄さんに「こういう奴なんすよ」とあたかも自分のものかのように私を雑に紹介する。
それがすごく嬉しくて、今度は目頭が熱くなる。
「またぜひおふたりでいらしてください」
「もちろん。ここは俺らふたりの場所なので」
「勝手にね」
バレンタインにひとついい思い出ができた、そう思った。