謎の結婚報告ラッシュ。

テレビも芸能人のめでたい結婚のニュースばかり。

全女性の夢、というと語弊があるかもしれないけれど、結婚は私にとって人生最大といっても過言ではないほどの夢である。

大学を卒業して1年したくらいで1度目の友人結婚ラッシュ。

そして30歳を目前に控えた今が2度目の友人結婚ラッシュ。



「今日もう3人目だよ」



LINEの画面を見て
はぁ、と自分でも何か分からないため息をひとつ。

それを見た拓司くんがん？と首をかしげながら「またおめでたい話？」とこっちを見たからこくりと頷く。


「ははっ、麗結ちゃんの友達凄いなぁ」
「拓司くんのお友達は？」
「んー...俺の友達は今日という日にあまりこだわらないからね。タイミングってやつがあるじゃん」
「そうだねぇ...」


11月22日。
いい夫婦の日、と言われる今日この日に入籍するカップルは少なくない。

芸能人も、友達も、みんな幸せそうだ。


ちらっと彼を見る。


もうすぐお昼という時間に起きて来て、寝癖でぴょこっとはねた髪なんか全く気にせずスマホをいじりながらサラダをむしゃむしゃ食べている。


「お、このカップルも結婚か。覚えとこ」
「まーたクイズの勉強してる」
「知識として蓄えておかないとね」
「ご飯食べながらやることじゃないでしょ」
「同時進行で出来ることは一緒にやった方が効率いいじゃん」
「効率とかそういう問題じゃないでしょ」


お行儀悪いし。
私と話してるのにそこまでして情報収集したい理由が分からないし。

彼と男女のお付き合いを始めた2年前からずっとずっと疑問に思っていたけど彼はなんで私と付き合っているんだろう。

ただ彼女という存在が欲しいだけ？
ただ寂しい夜に抱き合う女が欲しいだけ？
ただご飯を作らせたいだけ？
ただの遊び...？


彼から私たちの「結婚」なんていうワードは1度も聞いたことないし、そういう雰囲気だって微塵も感じない。

もちろん仕事が忙しいし、あれやこれやとやりたいことを見つけて必死だからそれどころじゃないのは隣にいて1番わかってるんだけど。


「結婚かぁ...みんな大人だなぁ。ね？」
「そ...そうだね...」
「麗結ちゃんも結婚したいとか思ってたりする？」


心臓がドクッと音を立てる。
なんて答えるのが正解なんだろう。

私は結婚をしたい。
もちろん拓司くんと。

でも、拓司くんが全くその気がなかったとしたら？

拓司くんと結婚すること、どちらを取るんだろう。

そんなこと考えたこともなかった。