背中と柑橘
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『ただいま戻りました…』
玄関でそう言いながら靴を脱ぐ
荷物を持ちながら廊下を抜けてリビングへ向かおうとするときだった
「おかえりなさい」
『七海さん、ただいまです』
リビングではなく、キッチンにいた七海にトワは帰宅の報告をする
「短期出張お疲れ様でした……おや、随分と甘えたですね」
『んー』
トワはキッチンに立っていた七海の背中に抱きついた
トワは七海のこの広い背中が好きだった
この広い背中に抱きつくと安心感に包まれ無事に帰ってきたと改めて実感できる
「疲れたでしょう?」
七海もこうして抱きついてくるトワを背中越しに感じて彼女が無事に自分の元に帰ってきたことを実感できるこの瞬間は何事にも変えられない大切な時間でもあった
『任務は大丈夫だったんですけど、報告するのに学校寄ったら何でか五条さんいて捕まってしまいました…』
「あぁ……それは心中お察しします」
面倒な人に捕まりどうでもいい話に付き合わされたのだろうというのは誰でも想像がつく
「…そういえば何やら良い香りですね」
七海はふと、背中のトワから香るものが気になった
『祓ったお礼に檸檬とオレンジもらったんです』
トワは七海から離れ、持っていた紙袋の中身を見せた
紙袋には綺麗な色艶の檸檬とオレンジが入っていた
「この前ももらってましたね」
『この前は大玉のスイカでしたね。あれは重かった…』
お礼にそういうものをもらえるのも彼女の人柄があってだろうな、と七海はいつも思っていた
「明日、安いワインを買ってきてサングリアでも作りましょうか」
『!作りたいです…サングリア…美味しいですよね。他のフルーツも入れますか?』
「えぇ。シナモンも買わないと切らしてますし…」
『七海さんは明日おやすみ?』
「お休みです」
『じゃあ一緒に買いに行けます?』
「もちろん」
七海がそう返事するとトワは嬉しそうにはにかんだ
「晩ご飯出来たので荷物片付けて手を洗ってきて下さい」
『はーい』
トワは七海と話して気が晴れたのかすっきりした顔でキッチンを後にした
七海の足元には檸檬とオレンジの入った紙袋が置きっぱなしになっている
よく見るとオレンジと檸檬以外の柑橘類も入っていてそれらを合わせると相当な量が入っているようにも見える(紙袋も破けないように二重になっていた)
「消費しきれるか……?」
恐らくあれもこれも沢山持っていきなさい、と言われ、言われた通りにトワは貰ってきたのだろう
その場面すら想像出来てしまい、七海の表情筋も思わず弛む
「全く…人に好かれやすい子だ……」
七海は改めてそう実感したのだった
~END~
(腐りそうなのはお風呂に入れましょうか)(冬至みたいです)(確かに)