グラスモーニング
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それは寒い朝の話
『(さむい…)』
部屋の空気の冷たさで目が覚めた
冬の足音が近づいてきている部屋はひんやりとしている
そろそろ備え付けの暖房器具もタイマー機能を活用しなくてはいけない季節になってきたようだ
トワはこっそりと起きて暖房のスイッチを入れて来ようと思った
隣りでぐっすりと寝ている人を起こさないように
『(眼鏡…)』
サイドテーブルに置いた眼鏡を取ろうと手を伸ばし、指先に触れたそれを手に取りかける
『……あれ?』
しかし眼鏡をかけたのに視界はクリアにはならなかった
相変わらずもやもやとしている視界に疑問を抱く
『(間違えた…)』
どうやら間違えて隣りで寝ている人のものをかけたらしい
しまった、と思いトワは上半身を少し乗り出して自分の眼鏡を取ろうとした
「…どうかしました?」
『わ!七海さんごめんなさい…起こしちゃいました?』
起こさないようにと思っていたが眼鏡を探して動いているうちに起こしてしまったようだ
「何やら動いていたようなので…」
『寒いから暖房入れようと思って眼鏡探してたら、間違えて七海さんのかけちゃいました』
トワは七海の伊達眼鏡をかけながら言った
『ごめんなさい、疲れているのにこんなことで騒いで起こしちゃって……』
七海は昨日まで少し長めの出張に出ていたのだ
今日はゆっくり寝てもらうと思っていたのに起こしてしまった
『……七海さん?』
じっと自分を見つめる七海にトワは首を傾げる
「良い眺めだなと思っただけです」
『?あ、』
少しはだけたパジャマからは昨晩七海が付けた痕がくっきりと残っていて、そんな彼女が自分の伊達眼鏡をかけている
朝から良いものが見れたなと七海は思う
『だ、暖房のスイッチ入れてきます…』
トワは顔を真っ赤にしてはだけ たパジャマを直しながら寝室の暖房をつけて部屋を出た
どうやらリビングも付けに行ったようだ
こういうところは寒い地方出身でしっかりしているな、と七海は思う
しかし、余程照れていたのか結局七海の伊達眼鏡をかけたまま部屋を出ていったようでそのギャップがまた愛おしい
見えないからかトワはゆっくりと戻ってきた
「トワ」
『わ、』
七海はゆっくりと戻ってきたトワの手を引っ張りもう一度布団へと引きずり込んだ
「寒いんですから早く戻って下さいよ」
『ひゃい……』
トワは七海の胸元に擦り寄る
「足、冷たいですね」
『冷え性治らないんです、わ、あ』
「この方が暖かいでしょう?」
七海は自分の足で器用にトワの冷たい足を引き寄せた
『七海さん冷たくないですか?』
「これは私の特権ですので、気にしないで下さい」
『………!』
「足以外は湯たんぽみたいですね」
七海は顔を赤くさせているトワをからかうようにそう言った
『もう、誰のせいだと…』
赤くなった顔を隠すようにトワは身体を捩るが足は七海の方に挟まっていてそうはいかなかった
「素直にこっち向いたらどうです」
七海はトワがかけたままにしていた伊達眼鏡を取って、もう一度ベッドサイドに置いてトワを自分の方へもう一度引き寄せた
「折角休みが重なったんですからゆっくりしましょう」
『七海さんも二度寝します…?』
「今日くらいは」
七海はゆっくりとトワの髪に指を滑らせた
目元は心做しか微睡んでいるようにも見える
『じゃあわたしも…』
「たまにはこういう日もいいですね」
七海はトワの額に優しく口付けをしてから目を閉じた
~END~
(たまにはのんびりとした朝を)